1972年に起きたアメリカ史上最大の政治スキャンダルと言われる「ウォーターゲート事件」。
この事件により最終的にニクソン大統領は辞任することになってしまいます。
大統領が任期中に辞任するという前代未聞の事件「ウォーターゲート事件」とは一体どんな出来事だったのか?
ここではFBI側・新聞記者側・そして本人のニクソン側から「ウォーターゲート事件」を描いた3本の映画を紹介します。
ウォーターゲート事件
ニクソン大統領が再選をかけて民主党のジョージ・マクガヴァンと争っていた1972年、アメリカ大統領選挙の年に起きたウォーターゲート事件。
1972年6月17日、民主党本部があるウォーターゲートビルに5人の男が侵入し逮捕されます。
捜査の結果捕まった5人は元CIAや元FBIの職員だったり、大統領再選委員会の警備担当であることが判明します。
最初は単なる窃盗事件だと思われていましたが、彼らが民主党本部に盗聴器を仕掛けようとしていたことも明らかになります。
独自取材を続けたワシントンポスト紙の記事などにより、ウォーターゲート事件に政府が関係していたことが暴かれます。
しかも大統領再選委員会の資金が流用されていました。
ホワイトハウスは「政府は関係していない」と否定しますが、やがて多くの政府関係者がこの事件に関与していたことが明らかになり、また隠蔽工作も発覚します。
最終的にニクソン大統領は、任期途中で大統領を辞任することになったのです。
ウォーターゲート事件を知るための3の映画
新聞社側
「ウォーターゲート事件」を取材し続けた新聞記者を描いた映画『大統領の陰謀』。
この作品では単なる窃盗事件ではないと思ったワシントン・ポストの記者ボブ・ウッドワードとカール・バーンスタインが、事件の真相に迫っていくその取材の過程が描かれています。
行き詰まりながらも少しずつ事件の真相に近づくウッドワードとバーンスタインでしたが、あまりにも真実に近づきすぎたために、政府からの圧力を受けるようになってしまいます。
それでも彼らは危険を顧みず、当時の政府の腐敗を暴いたのです。
そんな彼らの情報源となっていたのが、ディープ・スロートというニックネームの男でした。
ウッドワードはこの人物から情報をもらったことで、真実に近づくことができました。
FBI側
「ウォーターゲート事件」を操作したFBI側を描いた作品が『ザ・シークレットマン』。
当時FBIの副長官だったマーク・フェルトの物語で、彼がこの事件とどのように戦ったが描かれています。
FBIは独立組織ですが、「ウォーターゲート事件」の捜査については政府から邪魔が入ります。
それでもマーク・フェルトは事件の背後にある闇を暴くために抵抗しなが捜査を続けましたが、捜査は打ち切りとなり、司法長官は「政府関係者は関与していない」と発表しました。
諦めきれないマーク・フェルトがとった行動は、情報をメディアにリークすることでした。
このマーク・フェルトこそが、ワシントン・ポストに情報を伝えたディープ・スロートだったのです。
政府側
アメリカ第37代大統領リチャード・ニクソンの伝記映画『ニクソン』。
政治家ニクソンの人生を描いた物語ですが、この作品の中でも「ウォーターゲート事件」について描かれています。
映画は「ウォーターゲート事件」が発覚したところから始まります。
事件を聞いたニクソン大統領がどう対処するか側近と話していますが、この会話を聞いている限り元CIAのハワード・ハントの事件への関与が判明したことが、ニクソンにとっては1番のミスだったように思えます。
『大統領の陰謀』ではこのハワード・ハントとからウッドワード達は取材を進めていますし、『ザ・シークレットマン』でもFBIはこのハントと繋がりのある人物を捜査していました。
事件発覚後、それでもニクソンは2期目の大統領選に勝利しますが、その後どんどん窮地に立たされていく彼の姿を見ることができます。
『大統領の陰謀』と『ザ・シークレットマン』では描かれていない、政府が関与していたことが裁判で明かされる様子や、ニクソンが官邸での会話を盗聴していたテープの存在なども描かれています。
それぞれの映画の繋がり
『大統領の陰謀』と『ザ・シークレットマン』
犯人は元CIA
『大統領の陰謀』の中では正体の分からなかったディープ・スロートですが、『ザ・シークレットマン』ではそのディープ・スロート側から「ウォーターゲート事件」が描かれています。
『大統領の陰謀』でハントが元CIAであることを突き止めたウッドワードは、「FBIは彼も侵入事件の関係者だと見ている」と上司に伝え記事にします。
『ザ・シークレットマン』では「盗聴事件 犯人は元CIA」というウッドワードとバーンスタインが取材した記事が映っていて、この記事の内容をリークしたのはマーク・フェルトになっていました。
民主党妨害工作
『大統領の陰謀』の中盤、バーンスタインが「シプリーという男の情報をもらって彼に電話した」と興奮しながら話すシーンがあります。
この後彼らは選挙の秘密資金が民主党妨害工作に使われていたことを知るわけですが、『ザ・シークレットマン』でもシプリーという男の名前が出てきます。
FBIの捜査が打ち切られることになったフェルトが「シプリーに話を聞け」と電話するシーンがあります。
『大統領の陰謀』ではバーンスタインがシプリーの情報を得ていましたが、『ザ・シークレットマン』では電話の相手は明かされていませんが、フェルトがウッドワードに伝えたと連想させるシーンになっていました。
駐車場
『大統領の陰謀』でウッドワードとディープ・スロートが合うのは駐車場でしたが、『ザ・シークレットマン』でも2人が駐車場で会うシーンがあります。
特にフェルトが「手帳を出せ」と言って事件の真相全てをウッドワードに語るシーンは、どちらの作品でも描かれていました。
『大統領の陰謀』と『ニクソン』
『大統領の陰謀』ではウッドワードとバーンスタインは、ディープ・スロートから得た情報などを元に「ウォーターゲート事件」について記事にします。
『ニクソン』ではその記事を書いた新聞記者のことを「何者だ?」と気にするニクソン大統領の姿を見ることができます。
「2人が秘密資金について暴こうとしているが、成果はなし」とニクソンに報告する会話が続きます。
そのシーンではニクソンがワシントン・ポストに対して「テレビ免許の取り消し」を行おうとしていることも描かれていました。
ウッドワードとバーンスタインが「ウォーターゲート事件」の記事を書くことで、ワシントン・ポストは政府からかなり圧力を受けていることが分かるシーンでもありました。
『ニクソン』と『ザ・シークレットマン』
『ニクソン』では「ウォーターゲート事件」について「FBIに捜査させるな」と指示を出すニクソンの姿があります。
さらにニクソンは顧問弁護士のジョン・ディーンに「事件の情報を仕入れろ」と伝えています。
そのジョン・ディーンがFBIの長官代理の元にきていることが『ザ・シークレットマン』では描かれています。
『ニクソン』と合わせてみることで、ディーンが大統領の指示でFBIに来たことが分かります。
またFBIの長官代理のパトリック・グレイはディーンに捜査資料を渡していましたが、このことも2つの作品で語られていました。
おまけ
ウォーターゲート事件は有名な事件なのでいろんな映画の中で出てきていますが、フィクションとして描かれている映画を紹介します。
1つ目は映画『フォレスト・ガンプ/一期一会』。
ニクソン大統領に紹介されウォーターゲートホテルに泊まったガンプは、夜中目の前のビルに懐中電灯を持った人物に気が付き警備係に電話するというシーンがあります。
ガンプは「懐中電灯の光で眠れないから、電気屋を呼んだ方がいい」という報告の電話をしていましたが、これが結果ウォーターゲートに侵入した犯人を捕まえるきっかけになったというジョークになっていました。
もう1つは映画『ウォッチメン』。
映画『ウォッチメン』の中でヒーローの1人コメディアンが「アメリカで働くのはウォーターゲート依頼だ」と言います。
このセリフからコメディアンがウォーターゲート事件に絡んでいたことが分かります。
さらに『ウォッチメン』の世界では1985年もニクソンはアメリカの大統領を務めていますので、ウォーターゲートは事件とはならず、盗聴が成功した世界になっていました。
まとめ
アメリカだけでなく世界を驚かせたウォーターゲート事件を描いた3本の作品『大統領の陰謀』『ザ・シークレットマン』『ニクソン』。
それぞれの角度からウォーターゲート事件を見ることができるので、3本の作品を見ると立体的にウォーターゲート事件を捉えることができます。
1つ1つの作品は登場人物も多く1回見ただけでは分からないシーンもありますが、3本合わせてみることで、事件に関与した人物のことや時系列が見えてきます。
ウォーターゲート事件について知りたい方、またウォーターゲート事件のことを勉強している方は、ぜひ3本合わせてみることをお勧めします。