大統領選挙の最有力候補だったゲイリー・ハート。誰もが彼の当選を確実に感じていた時。たった1つの報道が彼の人生を狂わせてしまいます。たった3週間で天と地を味わった男。マスコミがどこまでプライパシーに介入するのか?その是非を問う作品です。
『フロントランナー』作品情報
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タイトル | フロントランナー(The Front Runner) |
監督 | ジェイソン・ライトマン |
公開 | 2019年2月1日 |
製作国 | アメリカ |
時間 | 1時間53分 |
Rotten Tomatoes
あらすじ
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史上最年少の46歳で民主党の大統領候補になった若きカリスマ政治家ゲイリー・ハート。
ジョン・F・ケネディの再来と言われた彼は1988年の大統領選予備選で最有力候補《フロントランナー》に一気に躍り出る。
しかし、たった3週間後、マイアミ・ヘラルド紙の記者が掴んだ“ある疑惑”が一斉に報じられ、急展開を迎える……。
勝利を目前に一瞬にして崩れ去る輝ける未来。
その時、ハートは? 家族は? 選挙スタッフは? スクープを求めるジャーナリストは?
そして、国民はどんな決断をしたのか?
(出典:http://www.frontrunner-movie.jp)
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ゲイリー・ハート
1975年にコロラド州の共和党の上院議員を破り、民主党の上院議員となったゲイリー・ハート。
彼の政治家としての人生はこの時から始まりました。
1984年には半導体のチップ保護法を打ち出したことで政界に名前を広めました。
この頃には民主党の若手議員は「アタリ民主党党員」呼ばれていたことは『フロントランナー』でも描かれていました。
アタリとは1972年に創業されたビデオゲーム会社でアーケードマシーンなどの販売で急速に成長した企業でした。
半導体チップと当時急成長中のビデオ会社を結びつけて、「アタリ民主党党員」と皮肉的な呼び方をしていました。
その後、ゲイリーは1984年の大統領選挙戦で民主党の大統領指名を得ようとしますが、世間的には無名だったゲイリーは前副大統領のウォルター・モンデールに敗れ撤退を表明しました。
『フロントランナー』ではこの先のゲイリー・ハートの人生が描かれています。
その後1988年に再度民主党の大統領指名を求めて予備選に出馬したゲイリー・ハート。
4年前とは違い、彼はフロントランナー (最有力候補)として選挙戦をスタートさせました。
多くの人が民主党の大統領候補になるのはゲイリー・ハートだと思っていましたが、映画で描かれているようにたった3週間で彼の人生は大きく変わってしまいます。
その人生を変えたのは彼の不倫でそれを暴いたマスコミにより、彼は予備選から撤退することになってしまったのでした。
ゲイリーvsマスコミ
私生活を一切明かさず、政治論争だけで選挙戦を戦っていたゲイリ・ハート。
彼は奥さんと別居していましたが、それについての話をすることも拒みます。
さらには奥さんとのツーショットでさえも掲載されることを嫌がっていたゲイリー。
彼はプライベートではなく、自分の政治家としての手腕で戦っていました。
それは選挙参謀のビルも理解していて、「率直に政治を語れる天才」と評価していました。
政治についての手腕とそのイケメンのルックスから選挙戦において圧倒的なリードを保っていたゲイリーでしたが、ワシントンポスト紙の記者に聞かれた「別居理由」に激怒してしまいます。
そしてその時に「尾行したければ尾行しろ。退屈するだけだ。」と言ってしまいその言葉が後に自分の首を締めることになってしまったのです。
妻との別居理由も含め、ゲイリーの欠点は「女好き」ということでした。
そしてその欠点がマイアミに行った時に出てしまいます。
しかも相手の女性の友達に密告されてしまい、マイアミ・ヘラルド紙の記者に不倫を暴かれてしまいました。
そこからゲイリーとマスコミの戦いが始まります。
ゲイリーは不倫に関しては一切話そうとしませんが、マスコミの質問は私生活ばかりです。
頑なにプライベートを話そうとしないゲイリーに態度は選挙陣営のムードさえも悪くし、参謀のビルは辞めてしまいました。
それでも世論は64%が私生活の報道は行き過ぎという判断で、まだまだゲイリーの支持率は高かったのです。
しかしマスコミは追撃をやめません。
次第にそれはゲイリーだけでなく、彼の妻や娘にも及ぶようになってしまいました。
結局、ゲイリーは選挙戦から撤退することを決めます。
これ以上家族を晒しものにするわけにはいかないと考えたゲイリーは、自ら選挙戦を終えたのでした。
ワシントン・ポスト紙
私生活を語らないゲイリーに対して奥さんとの別居問題を聞いたのはワシントンポスト紙のパーカーでした。
彼はゲイリーを尊敬していましたが、ワシントンポスト紙では彼の女性問題をどう扱うか早くから検討されていました。
そしてそれを検討していたのが、ワシントンポストの主幹のベン・ブラッドリーです。
彼は『ペンタゴン・ペーパーズ/最高機密文書』で描かれたいたように、ニクソン政権が権力を誇示する中、ペンタゴン・ペーパーズを新聞に掲載した人物です。
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また『大統領の陰謀』で知られるように、ニクソンのウォーターゲート盗聴事件を新聞に掲載することを認めた人物です。
『フロントランナー』の中には、『大統領の陰謀』でウォーターゲート盗聴事件を取材し続けたことで知られるボブ・ウッドワードも登場していました。
彼はゲイリーが奥さんに家を追い出された時に同居していまたようです。
最初は地味にマイアミ・ヘラルド紙のスクープを記事にすることを決めたベン・ブラッドリーでしたが、最後には今回の不倫以外のゲイリーの女性問題を掲載することを決めます。
抵抗するパーカーに対して「記事にしなかったら非難を浴びる」と新聞紙の現状を説明し、彼にゲイリーのゴシップを書かせたのでした。
最後にゲイリーに「不倫をしたことありますか?」と質問したパーカー。
この質問に答えを出せなかったのがゲイリーのすべてだったのかもしれません。
その後、パーカーは他の女性との写真をゲイリー陣営に持っていっていました。
ゲイリーがプライベートを隠そうとすればするほどマスコミは彼の生活を追いかけ、過去を暴露してしまうのです。
そしてそれが1人の政治家の人生を180度変えることになってしまったのでした。
まとめ
実在する人物ゲイリー・ハートの3週間を描いた映画『フロントランナー』。
たった3週間ですが、人生が激動してしまったゲイリー。
もちろん不倫をしたゲイリーが悪いのですが、どこまでそれをマスコミは追いかけるのかという今でも続く問題提起をしている映画でした。
当時の世論は64%がマスコミのやりすぎだという事でした。
しかしその世論を無視してでも取材を続けるマスコミ。
しかも矛先は家族にも向けられてしまっていました。
30年まえの出来事ですが、これは現代にも通じる問題です。
マスコミはどこまでプライベートに介入するのか?
そして市民はそれを求めているのか?求めていいのか?
かなり深いテーマの映画になっていました。