映画『大統領の陰謀』で描かれるウォオーターゲート事件の実態


ニクソン大統領を辞任まで追い込んだ「ウォーターゲート事件」。この事件の実態を政府の圧力に負けずに記事にし続けたワシントン・ポストの2人の記者。彼らが実態を暴く過程を映画の流れに沿って見ながら、ウォオーターゲート事件を調べてみたいと思います。

『大統領の陰謀』作品情報


大統領の陰謀 [Blu-ray]

タイトル 大統領の陰謀(All the President’s Men
監督 アラン・J・パクラ
公開 1976年8月7日
製作国 アメリカ
時間 2時間18分

Rotten Tomatoes

あらすじ

1972年6月、ワシントンD.C.のウォーターゲートビルにある民主党本部に不審な5人組が侵入し、逮捕される。

ワシントン・ポスト紙の新米記者ウッドワードは裁判を取材し、当初は単なる窃盗目的と思われた犯人たちの裏に何か大きな存在をかぎとる。

先輩記者のバーンスタインと組んで事件の調査にあたることになったウッドワードは、情報提供者ディープ・スロートの助言や編集主幹ブラッドリーの後ろ盾を得て徐々に真相に迫るが……。

(出典:https://eiga.com/movie/19063/)

アカデミー賞受賞
助演男優賞:ジェイソン・ロバーズ
脚色賞
録音賞
美術賞

ウォーターゲート事件

アメリカ合衆国で任期中の現職大統領が辞任に追い込まれるまでに発展することになるウォーターゲート事件。

1972年、アメリカは大統領選挙の真っ只中でした。
そんな時民主党の本部であるウォオーターゲートビルに不審者が侵入し、5人の男性が逮捕されます。

最初は窃盗だと思われていた事件ですが、彼らの弁護士が大物弁護士だったり犯人の中に元CIA職員がいたことで単なる窃盗事件ではないことが明るみになりました。

当時ニクソン政権はこの事件に関わっていないと多くの国民が思っていましたが、ワシントン・ポストの若い記者2人はこの事件を追い続けました。
その過程が『大統領の陰謀』で描かれています。

記者たちはニクソン大統領の最高補佐官や元司法長官などがこの事件に関わっていると記事にしますが、圧力によりもみ消されようとしていました。

映画ではここまでしか描かれていませんが、裁判が始まるとウォオーターゲートビルに侵入した犯人の1人がマッコードが自分を主犯格にしようとしている動きに気がつき、裁判官に全てを話します。
それは事件に大統領再選委員会が関わっているという内容でした。

これをきっかけにウォーターゲート事件は大きく動き出します。
そしてニクソン政権ががウォーターゲート事件に関与していたことが明らかになっていきました。

「ニクソン大統領はもみ消しを知っていた」という発言も出る中、捜査の中で大統領の録音テープも出てきます。

これにより世論や野党は大統領弾劾に動き始めます。

さらに大統領がテープの提出を拒み、司法長官や司法副長官を解任しようとしたことで一気に大統領の反発が強くなります。

そして最終的にニクソン大統領は辞任に追い込まれてしまったのでした。

この一連の事件を「ウォーターゲート事件」と呼びますが、『大統領の陰謀』では記者2人が、少しずつ事実に近づいていく調査の過程を描いています。

映画の中のセリフにも出てきますが、アメリカ国民のほとんどが忘れかけていたウォーターゲートへの不法侵入事件。
それを諦めずに取材し真実を暴こうとした記者の戦いが、『大統領の陰謀』です。

2人の記者の取材過程

ワシントン・ポストの記者2人が「ウォーターゲート侵入事件」の裏にある出来事を暴いていくのを描いた『大統領の陰謀』。

その過程は複雑で1回見ただけでは理解が難しいかもしれません。
ここでは2人の取材の軌跡を辿ってみたいと思います。

①不法侵入事件

1972年6月17日、5人の男が民主党本部のウォーターゲートビルに侵入し逮捕されていまします。

ワシントン・ポストの記者ボブ・ウッドワードは、事件の取材のために裁判所に向かいます。
単なる不法侵入事件だと思っていましたが犯人の1人が元CIAの警備顧問だったり、犯人たちが連絡していないのに弁護士がいたことで、ウッドワードはこの事件の裏に何かあることをさとります。

さらに同じく記者であるカール・バーンスタインが、他の4人の犯人もCIAの関係者だったことを暴きます。
しかも彼らは装備も豊富でお金も持っていました。

ここから2人はこの事件を担当することになり、2人の大変な取材が始まっていきました。

②手帳の名前

ウッドワードは、犯人の持ち物に住所録が2冊あったこという情報を得ます。
1つの手帳には「H・H」「W・H」というイニシャルが書かれていて、もう1つの手帳には「ハワード・ハント」「W・ハウス」と書いてありました。

ウッドワードはハワード・ハントを調べ始めると、彼がチャールズ・コルソンの元にいたことが分かります。
コルソンはニクソンの特別顧問で相談役でした
さらにハントはCIAにも在籍していました。

一方、バーンスタインはコルソンの事務所で働いていた女性に近づき、ハントの仕事を聴き出します。
ハントがケネディ上院議員のことを調べていたことを知りました。
ニクソンの強敵であったケネディ上院議員。
彼のことを官邸図書館や国会図書館で調べていたことを知り、2人は国会図書館に向かいます。

官邸図書館にはバーンスタインが電話した時、一度はあると認めた貸出表でしたが間違いだったと言われてしまいます。

だから2人は国家図書館に向かい貸し出し表を調べますが、結局何も見つからなかったのでした。

③金を追え

行き詰まってしまった2人でしたが、ウッドワードの情報源である「ディープ・スロート」はウッドワードに「金を追え」という情報を与えます。

その頃、ワシントン・ポストのライバルでもあるNYタイムズが「共和党の一部組織がウォオーターゲートに関係」という記事を書きました。
そこに侵入犯人から再選委員会に電話が15回もあったと書かれていたのでした。

バーンスタインは情報源から犯人の1人であるバーガーの電話記録はマイアミの検事に押収されたことを聞き出します。
マイアミの検事の元に出向いたバーンスタインは、そこで2万5千ドルのお金がバーガー渡った小切手を見つけます。

送り主はケネス・H・ダールバーグという人物でした。

彼に電話したウッドワード。
その電話で彼は再選委員会本部の財務委員長であるスタンズにダールバーグがお金を渡したことが分かりました。

2人は選挙資金のお金がウォーターゲートの犯人に渡っていたことを突き止めたのです。

④再選委員会の職員名簿

同僚の元恋人から再選委員会の名簿を手に入れ2人は、名簿に乗っている人たちに会いにいきますが、皆同じような態度で何も教えてくれませんでした。

何もつかめない中、スタンズとスローンの簿記係をしていた女性から情報を得ることに成功します。
スローンは再選委員会の経理の主任でした。
スローンは奥さんからのお願いもあり、辞職していました。

女性からお金を支払っていた人たちのイニシャルを聞き出したバーンスタイン。
再選委員会は行っていた買収の資金は5人が管理していたことを突き止めたのです。

さらに2人はスローンに会いに行きます。
そこで5人のうち、3人がミッチェル、マグルーダー、スタンズという確証を得ます。

2人は司法長官時代からジョン・ミッチェルが秘密資金を運用していたことを暴き記事にします。
さらにミッチェルが再選委員会の委員長になり、独断で資金を運用していたことを書いたのでした。

⑤政府の圧力

4人目がカームバックだということにも確信を持っていた2人は、5人目を見つけようとします。

そんな時新たな情報を手にしました。
それはウォーターゲート侵入前から民主党への妨害工作が行われていたということでした。

ニクソン妨害工作の主任であったセグレティに会いに行ったバーンスタイン。
彼はニクソン大統領の秘書であるチェーピンと同級生で、彼から仕事を持ちかけられていました。

さらにチェーピンを雇ったのがホールドマンだという情報をウッドワードが得ます。

大統領の最高補佐官で政界の第二の実力者であるホールドマン。
彼のことを記事にするのはとても危険でしたが、2人はホールドマンもに秘密資金に関与していたことを記事にしました。

すると大陪審でスローンはホールドマンのことを話さ図、ホールドマンは無関係だということになってしまいました。
これにより政府はワシントン・ポストへの圧力を強めるようになります。

しかしホールドマンが関与していたことは事実だったのです。
ディープ・スロートから事実を聞き出したウッドワード。
バーンスタインもスローンは大陪審でホールドマンのことを話すつもりだったが、聞かれなかったという事実を突き止めます。

2人は命の危険に晒されながらも、この事実を記事にし政府と戦い続けたのでした。

結局ニクソンは再選してしまいますが、この後事件の実態が表に出ることになったのです。

学びポイント

『大統領の陰謀』では命を狙われながらも、ウォーターゲート事件の実態を取材し続けた2人の記者の取材魂が描かれていました。

彼らが取材する過程を追っていくと、ウォオーターゲート事件にニクソン再選委員会が深く関わっていたことを知ることができます。

登場する人物も多く背後関係がわからないと理解するのに時間がかかってしまいますが、きちんと理解できるとこの事件の裏で動いていた再選委員会の実態が分かってくるでしょう。

難しい事件ですが、アメリカの歴史で知っておかないといけない事件なのは確かです。

『大統領の陰謀』を通して、この事件の一部に触れることができるはずです。


大統領の陰謀〔新版〕 (ハヤカワ・ノンフィクション文庫)