カトリック信者でないとあまり知ることのないカトリックの伝統。映画『2人のローマ教皇』を見るとローマ教皇の選出など意外と知らない事実を知ることができます。さらに近年世間を賑わせた事件で苦悩するローマ教皇の姿なども描かれていて、映画を通してカトリックに触れることができる作品になっていました。
『2人のローマ教皇』作品情報
タイトル | 2人のローマ教皇(The Two Popes) |
監督 | フェルナンド・メイレレス |
公開 | 2019年12月20日 |
製作国 | イギリス/アメリカ/イタリア/アルゼンチン |
時間 | 2時間5分 |
Rotten Tomatoes
あらすじ
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カトリック教会における歴史的転換点をまたぐ2人のローマ教皇、ベネディクト16世とフランシスコ。
保守派と進歩派の壁をこえた友情を、実話に基づき描き出す。
(出典:https://www.netflix.com/title/80174451)
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カトリック教会
ローマ教皇を中心とするカトリック教会はバチカンに本部があります。
カトリック教会のトップはローマ教皇でその下に枢機卿がいます。
枢機卿は教皇を助けながら教会の任務を全うする仕事です。
教皇に任命され枢機卿になりますが、全世界で120人までと人数が決められています。
さらに『2人のローマ教皇』の中では定年は75歳だと描かれていました。
枢機卿の重要な任務の1つに次の教皇を決めるコンクラーベというものがあります。
バチカンに全枢機卿が集まり投票によって時期教皇を決めるのです。
『2人のローマ教皇』では2005年の第264代ローマ教皇のヨハネ・パウロ2世が亡くなったところから始まります。
時期教皇を決めるためにバチカンでコンクラーベが行われたのでした。
枢機卿たちは枢機卿の中から教皇にふさわしいと思う人物に投票し、2/3以上の票を得た人物が時期教皇になります。
コンクラーベで教皇が決まるとバチカン宮殿の窓から白い煙が上がることになっています。
基本的に教皇は終身制で、なくなるまでその職務を全うします。
映画の中でも描かれているように過去に自ら辞任したのは、1249年にケレスティヌス5世が退位してから近年では誰も辞任していません。
しかし第265代ローマ教皇ベネディクト16世は2013年に自らの意思で教皇を辞任しました。
2人のローマ教皇
ベネディクト16世
2005年に第265代ローマ教皇になったベネディクト16世。
彼はそれまでのカトリック教会の流れを引き継ぐ保守的な考えを持った教皇でした。
カトリックの教義を重んじるため、同性愛・離婚・避妊・中絶を反対しています。
さらに結婚している司祭を認めませんでした。
そんな保守的な教皇でしたが、映画の中で「ナチ野郎」と呼ばれているシーンが何度も出てきます。
それはベネディクト16世がドイツ出身というだけでなく、第二次世界大戦中に少年だった彼がヒトラーユーゲントに加入していたことに関係していたのです。
しかもこの頃神父の性的虐待が明るみになり、世界的に大問題となっていました。
しかし教皇は神父の聖職を奪うことなく、他の教会に転属させただけだったのです。
この事が多くの人から非難させる出来事となり、信者の数が減少していました。
さらにカトリック教会のマネーロンダリング問題も明るみに出ます。
ベネディクト16世の元執事が逮捕されるなど、こちらも大きな問題となりました。
ローマ教皇庁の資金が不正に送金された疑いで口座を凍結されイタリア警察から捜査されてしまったのです。
しかもベネディクト16世に宛てた教会内の不正を暴く内部告発の文書が流出するなどスキャンダルが続きました。
『2人のローマ教皇』の中で直接的には描かれていませんが、ベネディクト16世が退位を決めたのにはこれらのスキャンダルが関係しているとも考えられています。
フランシスコ
自ら退位したベネディクト16世に変わり第266代ローマ教皇になったのがフランシスコです。
彼はベネディクト16世とは反対の教会内を改革する考えを持った人物でした。
さらにフランシスコはアルゼンチン出身であり、初めてのアメリカ大陸の教皇でもあります。
フランシスコはカトリック教会に新しい風をもたらす教皇として期待された人物でもあったのです。
実際に教皇に就任してから多くの地に足を運び、貧しい人に寄り添うことを説き格差社会に言及しています。
さらに人種や民族や宗教の対立などについても警鐘を鳴らしています。
今までローマ教皇が政治的な考えを多く語らなかったのとは異なり、フランシスコは様々な場所で政治的発言も行っています。
それは常に世界の平和を願っての発言になっていました。
学びポイント
カトリック教徒でないと知らないカトリック教会の歴史と伝統。
『2人のローマ教皇』ではそんな歴史と伝統に触れる事ができました。
ローマ教皇の生活や苦悩などを見る事ができ、違う国の出来事だと思っていた事をみじかに感じる事ができる作品になっていました。
また世界中を揺るがした事件にも触れていて、カトリック教会で何が起きていたのかを知る事ができます。
そして何よりも現ローマ教皇のフランシスコに興味が湧いてしまいます。
今後ローマ教皇がどんな言動を行うのか関心を持って見ていきたいと思います。