映画『フォーリング・ダウン』感想と解説 誰がキレてもおかしくない日常

会社をクビになり離婚して家族と離れてしまった男が、渋滞という些細ないことで世の中からドロップアウトする事を決めてしまいました。暴力的で怖い男ですがその姿は、誰もが持っている心の中を映し出しているのかもしれません。

目次

『フォーリング・ダウン』作品情報

タイトル フォーリング・ダウン(Falling Down)
監督 ジョエル・シュマッカー
公開 1993年7月31日
製作国 アメリカ
時間 1時間53分

Rotten Tomatoes

『フォーリング・ダウン』あらすじ


フォーリング・ダウン [Blu-ray]

(引用:MIHOシネマ

不満が爆発した男

出典:IMDb

会社をクビになりさらには離婚したことで娘に会えなくなった苛立ちを抱えている男D・フェンス。
彼は日々の日常に怒りを感じていましたが、それを抑えながら生活していました。

しかしある日渋滞にはまり、閉じ込められて車の中の暑さなに耐えキレなくなってしまいまし。
そしてついに彼は車を置いてその場から立ち去ってしまいました。
目的は「家に帰る」。
それは世の中からドロップアウトすることでもあったのです。

怒りをコントロールできなくなってしまったD・フェンスは、常日頃感じていた怒りを一気に爆発させていきます。

彼は別に無差別に人を襲っているわけではなきのです。
理不尽に感じ納得いかないことに対して、怒りをぶつけたのです。

自分は真面目に働いてきたのに、国に見捨てられてしまいました。
さらには家族にも捨てられ、生きている意味を失ってしまったのです。
そんな彼は物価の高さ、お金持ちの道楽、税金の無駄遣い、極端な差別など世の中のおかしなことに対して憤りを感じ、それを抑えることができなくなってしまったのでした。

確かに彼は犯罪者であり、暴力的で恐怖を感じる男です。
しかし彼に共感することはできなくても、きっと彼を理解することはできるでしょう。

1993年の映画『フォーリング・ダウン』。
2019年に起きている事件と同じです。
誰がD・フェンスになってもおかしくない世の中なのです。

 

D・フェンスが象徴するもの

出典:IMDb

日常への不満が爆発してしまいキレてしまった男D・フェンス。
彼は1990年ごろのアメリカ社会を象徴していました。

『フォーリング・ダウン』の脚本が出来上がった時、大手映画会社はこの映画を製作することになかなかOKを出しませんでした。
それはあまりにもリアルに描きすぎていたからでした。

1990年ごろのロサンゼルスには軍事工場がたくさんあり、そこで多くの人たちが働いていました。
しかし冷戦が終わると軍事工場は閉鎖され、働いていた人たちは皆クビになってしまいます。
それはまさしく映画の主人公D・フェンスだったのです。

国のために働いてきた男が突然国に裏切られ見捨てられてしまったのです。
そこから彼の人生の歯車は狂い始めます。
仕事と家族を失ったD・フェンスは、社会からはじき出された疎外感を感じるようになったのです。
当時、D・フェンスと同じような気持ちを抱いた人はたくさんいたはずです。

そしてこれは現代にも置き換えることができるのです。
日本でも格差社会が広がり、お金持ちの人ばかりが生活しやすい世の中になりつつあります。
弱者切り捨て」が起こりつつある現代。
社会に疎外感を感じている人は多いはずです。

D・フェンスのように生活にいろんなことに不満を感じている人はたくさんいます。
みんなが何か不満を抱えながら生活しているので、ギスギスした世の中になってしまいました。
D・フェンスのように誰がキレてもおかしくないのです。
そしてまたそんな事件が多発するようになってしまいました。

D・フェンスは特別な人ではなくて、日々みんなが抱えている怒りの象徴でもあったのです。

D・フェンスを見て恐怖を感じたかもしれませんが、それと同時に「彼が怒るのも分かる」と思った人もいるはずです。

彼の行動そのものよりも、今の社会に彼のように怒りや不満を心に抱いている人がたくさんいるということが怖いと感じる映画が『フォーリング・ダウン』です。

まとめ

社会から脱落してしまった男が、自分の人生を取り戻すために選んだ道は暴力的な方法でした。

取り返しのつかないことをしてしまった彼には、残された道は1つしかありません。

その覚悟を持ちながらキレ続けた主人公。

ここまで人を追い詰めてしまう社会。

それは映画の中だけのことではなく、現実に起こってしまっていることなのです。

 

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