映画『イット・フォローズ』 映画の中に散りばめられている「IT」のヒント

恋人とHしたことで何かに追いかけられることになってしまった少女。感染した人にしか見えない謎の「IT」の正体を巡って、色んな論争が巻き起こしたのが映画『イット・フォローズ』です。「IT」とは一体なんなのか?そのヒントは映画自体にたくさん散りばめられていました。

目次

『イット・フォローズ』作品情報


イット・フォローズ [Blu-ray]

タイトル イット・フォローズ (It Follows)
監督 デヴィッド・ロバート・ミッチェル
公開 2016年1月8日
製作国 アメリカ
時間 1時間40分

Rotten Tomatoes

あらすじ

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19歳のジェイは、新しい彼氏ヒューとデートし、そのままセックスに興じる。

ところが、ことが終わるやヒューに薬を嗅がされ気絶してしまう。

足を拘束された状態でようやく意識を取り戻したジェイに対し、ヒューはにわかには信じがたい告白を始める。

曰く、ジェイはある呪いに感染したという。

それによって、感染者にしか見えない何かが、ゆっくりと、しかし確実に迫ってくる。

そして最後には必ず殺される。

それを回避したければ、誰かとセックスして移す以外に方法はない、というのだった。

以来、ヒューの言葉通り、他人には見えないそれは、様々な人の姿をして自分に向かって歩いてくるようになる。

いつ、どこからやって来るかも分からないそれに常に怯え、必死で逃げまどうジェイだったが

(出典:https://www.allcinema.net/cinema/354702

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「IT」の謎?

主人公のジェイが恋人のヒューとHしてしまったことで何かに感染してしまいました。
彼女は一体何に感染したのか?
その正体は分かりませんが、「IT」にはルールがありました。

[box class=”green_box” title=””]・「IT」に追いかけられている人とHをすると、移される
・移されると「IT」に追いかけられる
・誰かとHをすると追いかけられない
・移した人が死ぬとまた追いかけられる
・「IT」は歩いてやってくるが頭が良い
・移しても「IT」が見える[/box]

ジェイもまたこのルールに沿って、「IT」に追いかけられるようになってしまったのです。

映画に登場人物も「IT」の正体がわからず、もちろん見ている私たちにもその答えは分かりません。

正体不明の「IT」について映画の冒頭では、宇宙人なのかもしれないと思わせる描写が描かれていました。
ジェイの妹や友達が見ていた映画。
それは『Killers from Space』でした。


宇宙からの暗殺者 [DVD]

またポールがジェイの家に泊まった時に見ていたのは『Voyage to the Planet Prehistoric Women』という映画でした。


金星怪獣の襲撃 新・原始惑星への旅 [DVD]

どちらの映画も宇宙人による地球への侵略の物語で、地球人は宇宙人によって苦しめられます。

そんな映画を2本さりげなく登場させることで、「IT」は宇宙人かもしれないと匂わせているようにも感じました。

「IT」は大人になると見える?

物語の中でSF映画が登場していましたが、「IT」の正体は宇宙人ではありません。
では「IT」はなんでしょうか?

ジェイは「IT」を移すためにグレッグと関係を持ちます。
このことでジェイは「IT」から追いかけられなくなりました。
一方、グレッグはどうかというと彼のところには「IT」はやってきていないようです。

「3日たっても何もない」とグレッグは言っていました。
なぜグレッグには見えないのか?
それは彼は「IT」を怖がらない子供のような心の持ち主だったからだと思います。

そもそも「IT」はセックスすることで移されます。
セックスは子供から大人への変わる事の1つでもあります。
そのことからもIT」は大人になる事と関係しているよう思いました

ラストで「IT」と戦うためにジェイたちが向かったプール。
そこはデトロイトの中心にありました。
ここに向かう途中ヤラは「昔、親から8マイル通りを超えるのを禁じられてた あそこは郊外と都市の境界線だったから」と言っていました。

デトロイトの街は8マイルロードによって貧困層と富裕層が分けられ、都市部は貧困層によって廃墟になっています。
子供の頃ヤラはその8マイルを超えてはいけないと言われていたのです。

その禁止されていた8マイルの中に入りジェイ達4人は「IT」と戦おうとします
これもまた彼らが子供から大人になっていく過程の1つを描いているようにも感じるシーンです。

大人になると「IT」に追いかけられる。
グレッグは子供だったため「IT」に追いかけられるために時間がかかったということではないかなと思いました。

「白痴」に隠された答え

大人になると見えるもの「IT」。
では具体的に「IT」は何を指しているのでしょうか?
それはヤラの読んでいた小説『白痴』に示されていました。

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白痴() (新潮文庫)[/col2] [col2]
白痴() (新潮文庫)[/col2] [/colwrap]

彼女は何度もこの本について話しています。

[box class=”pink_box” title=””]・家の外でカードゲームをしている時に読んだ本の一文。
「家の下敷きになる寸前など窮地に陥ると、人は目を閉じて最後の瞬間を待ちたがるものだ」

・ラストシーンで入院中のヤラが口にした内容。
「拷問には苦痛と傷が伴う
最悪の苦痛は傷そのものではない
最悪の苦痛は後1時間、あと10分、あと30秒で
そして今この瞬間に魂が肉体を離れ人でなくなると知ること
この世の最悪はそれが避け難いと知ることだ」

[/box]

これらの文章は、「人は死を考えている」そして「死を待つことは苦痛でり、また死は避けることができないもの」ということを言っています。

つまりIT」=「死」であるということが、「白痴」の文章から伝えられていたのです。

「IT」を恐れない「愛」

ヤラは映画の冒頭で『白痴』を説明するときに、「主人公がポールみたい」と言っていました。

ある女性に一目惚れした無垢な主人公の男性をヤラはポールに似ていると思っています。
それはポールもまたジェイに片思いをしていたからです。

そのポールはジェイを助けようと必死になります。
「自分に移して」というほどポールは彼女のことを愛していました。

ポールの愛になかなか気がつかないジェイでしたが、彼の献身的な態度に次第にポールを好きになっていきます。

今までジェイが体の関係を持った人たちは深い愛はなかったのですが、ジェイはポールの愛に気がつきついに二人は結ばれました。
それはジェイの夢見ていた「大人になること」でした。

そしてラストでは二人は手をつなぎながら歩いていきます。
それもまたジェイが夢見た大人です。

大人になった彼らの後ろには「IT」(死)が迫ってきていますが、愛し合った二人は自由を求めてこのまま歩き続けていくのです

「死ぬ」ことから逃げることはできないけど「愛」が死の恐怖を忘れさせてくれる、そんなラストになっているように感じました。

まとめ

ジェイを追いかける「IT」は何なのか?
その謎が話題となり、低予算映画ながら大ヒットしたホラー映画『イット・フォローズ』。

「IT」の答えはドストエフスキーの「白痴」に隠されていて、「死」と「愛」描くとても深い内容の映画になっていました。

初めて見ると「IT」の答えがわからず謎の映画に感じますが、ヤラの発言に注目しながら見直すとその謎も解けていくはずです。

「大人になること」「死」「愛」という壮大なテーマの映画が『イット・フォローズ』なのです。

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