堅実に生きようとする高校生と自分のやりたいことを進める美術学生。2人はやがて恋に落ち幸せな時間を過ごし始めます。しかし育ってきた環境の違う2人は大人になるとすれ違い始めた。「自分のやりたいことをやれ」と勧められるアデルですが、彼女はなかなか殻から出ることができません。それはやがて寂しさになり、彼女は愛する人を裏切ってしまったのです。
『アデル、ブルーは熱い色』作品情報
アデル、ブルーは熱い色 スペシャル・エディション [Blu-ray]
タイトル | アデル、ブルーは熱い色(La vie d’Adele : Chapitres 1 et 2) |
監督 | アブデラティフ・ケシシュ |
公開 | 2014年4月5日 |
製作国 | フランス |
時間 | 3時間 |
Rotten Tomatoes
あらすじ
(引用:MIHOシネマ)
一目惚れと悲劇
高校生のアデルは文系を選択し、彼女は文学について学んでいます。
そんなアデルがある日授業で勉強していたのは、『マリアンヌの生涯』。
この授業で先生は、「誰かと偶然に出会い視線を交わすとき、どんな感情が生まれてくるか?」と生徒に質問します。
さらに先生は、マリアンヌにとって一目惚れは定められた運命だったと言います。
そして運命は一目惚れという形を取ることもあると説明しました。
このマリアンヌのように、アデルはある日、青い髪の女性に恋をします。
交差点で女性と肩を組む青い髪の女性を見かけたアデル。
その瞬間なぜかアデルは彼女のことが気になり始める。
そして彼女とすれ違う瞬間、アデルはその女性を振り返り視線を送ります。
すると女性もアデルの方を振り返り、彼女と視線を合わせたのです。
この瞬間アデルは青い髪の女性(エマ)に恋をしました。
それはマリアンヌが一目惚れした時と同じで、アデルもエマに一目惚れしたのです。
まさにアデルとエマが恋に落ちた瞬間。
それは偶然ではなく、アデルとエマの定められた運命だったのです。
またある日、アデルは『アンティゴネ』について学びます。
アンティゴネ (光文社古典新訳文庫)
この授業でアデルは「悲劇とは必然であり逃れることのできないもの」と教えられます。
そしてそれは人間の本質そのものに関わるものだと学びました。
この時、アデルはまだこの先自分に起きることをもちろん知りませんが、やがて彼女にも悲劇が迫ろうとしていました。
そしてそれは彼女の本質がもたらしたことだったのです。
「実存は本質に先立つ」
アデルはエマと出会い彼女に惹かれ始めます。
学校にやってきたエマと一緒に公園に向かうアデル。
エマはそこで会えるの似顔絵を描いてくれました。
この時エマはアデルにサルトルの「実存主義とは何か」は必読と勧めます。
「実存は本質に先立つ」とアデルに説明するエマ。
それは「人間は生まれ存在し、自らの行動で決定される」ということでした。
そして「行動には責任がある」とエマは言います。
アデルは「哲学は分からない」とエマに伝えたことで、アデルはエマから哲学を教わるようになりました。
エマはサルトルの実存主義をそのまま生きているような女性。
自分の描きたい絵を描き、女性を愛していることも隠していません。
一方両親はから「堅実に生きなさい」と言われているアデル。
彼女は自分のやりたい事や自由に生きることよりも、将来生活ができることを望んでいました。
全くタイプの違うアデルとエマ。
だからこそアデルは、エマに惹かれたのかもしれません。
しかし、彼女は自分の本質を決める行動を起こすことができませんでした。
エマはアデルに「文章を書いたら」と勧めますが、アデルは飛び出すことができずに堅実に生きることを選びます。
アデルは自分が女性と暮らしていることも周囲に伝えることができませんでした。
それがやがて2人の間にすれ違いを生んでしまいました。
エマは自分らしく生き続けていましたが、アデルはそんなエマに嫉妬し寂しさを感じてしまったのです。
そして彼女はエマを裏切ってしまいます。
エマに追い出され彼女の存在の大切さにアデルは気が付きましたが、エマはアデルを許しません。
なぜなら「行動には責任がある」からです。
アデルの行動にはアデルの責任があるのです。
だからエマは彼女を許せず、アデルと同じように彼女のことを愛していましたがエマを追い出してしまったのでした。
アデルはエマのように生きることができなかったのです。
しかしエマと別れ、エマがすでに自分と違う世界で暮らしていることを知ったアデルは、一本道をひたすら歩き始めました。
エマと過ごしてきた時間がエマを思い続けた時間が、アデルを大人に成長させたのでした。
まとめ
アデルとエマの激しい愛を描いた作品『アデル、ブルーは熱い色』。
女性の恋愛で注目された作品でしたが、そこには愛を書いた「文学」や人間の存在を問う「哲学」が描かれていました。
「自分の存在とは?」
そんな深いテーマを描いた作品が『アデル、ブルーは熱い色』なのです。