映画『ダラス・バイヤーズクラブ』1980年代半ばのHIVに関する認識と実態

自身がHIVに感染してしまったことから、薬を求めて戦うことになった実在の人物ロン・ウッドルーフを描いた映画『ダラス・バイヤーズクラブ』。この作品を見ることで1985年当時のHIVに対する世間の認識や、また薬に関わる実態を知ることができます。

目次

『ダラス・バイヤーズクラブ』作品情報


ダラス・バイヤーズクラブ(字幕版)

タイトル ダラス・バイヤーズクラブズ(Dallas Buyers Club)
監督 ジャン=マルク・ヴァレ
公開 2014年2月22日
製作国 アメリカ
時間 1時間57分

[box class=”red_box” title=”アカデミー賞受賞”]・主演男優賞:マシュー・マコノヒー
・助演男優賞:ジャレッド・レト
・メイク ヘアスタイリング賞[/box]

1980年代のHIVの認識

映画『ダラス・バイヤーズクラブ』の主人公ロンは、自分がHIVに感染していることを1985年に知りました。

「まさか自分がHIVに感染するなんて」と自暴自棄になるロンですが、なぜなら当時エイズは男性の同性愛者がかかる病気だと偏見を持たれていたからです。

テキサスに住みカウボーイであることを誇りに思う彼らは、同性愛に対する強い偏見を持っていました。

しかしHIVに感染するのは同性愛者だけでなく、ドラッグの注射針や避妊なしの性交渉などでも感染してしまいます。

ロンは自分がHIVに感染し色々調べるうちにHIVに関する真実を知ります。

さらに当時はHIVは触れるだけでうつるとも思われていて、これもまたHIV感染者に対する差別を産んでいました。

映画の中でもロンがHIVに感染していると知ると、友人たちはロンに近寄らずロンは仕事もクビになってしまいます。

これが1985年当時のHIVに対する世間の認識とまたHIV感染者が置かれていた状況だったのです。

製薬会社とFDA

世界で初めての抗HIV薬とされるAZTですが、元々は抗がん剤として使用されていたAZTには強い副作用があり、慎重に臨床試験が進められるはずでした。

映画の冒頭でも認可までには8年か〜12年かかるとなっていました。

しかし製薬会社はFDA:Food and Drug Administration(アメリカ食品医薬品局)に近づきAZTの承認に動きます。

ロンも最初はAZTを求めていましたが、メキシコで初めてこの薬の危険性を知りました。

他の国ではAZT以外の治療薬があることを知りますが、それはアメリカでは未承認の薬です。

そのためロンはこっそりアメリカ国内に薬を持ち込んだのでした。

なぜFDAは他の治療薬を認めないのか。
そこには製薬会社との密約があったと考えられます。

劇中でロンも「製薬会社がFDAに賄賂を送った」と口にしていました。

また製薬会社はAZTを年間1万ドルという高価格で売ることで莫大な利益を得ることができます。

HIVの治療薬をめぐって裏で製薬会社とFDAの癒着が起こっていました。

そしてそれはHIV感染者を苦しめ、多くの人が命を失ってしまうことにつながっていました。

高額のAZTと手にできず治療してもらえない患者、AZTの副作用に苦しむ患者。

患者にとってはたとえそれが違法であってもロンは希望の光でした。

自分がHIVに感染したことで初めて実態を知ったロンは、自分と同じ仲間を助けるためにFDAや製薬会社と戦い続けたのです。

まとめ

HIVに感染してしまったことで、エイズ患者たちが抱える実態を知ったロンの戦いを描く『ダラス・バイヤーズクラブ』。

ロンの行動は多くのHIV感染者を救うことになりましたが、それは同時に政府との戦いでもありました。

『ダラス・バイヤーズクラブ』は戦いつづけた1人の男の物語であると同時に、1980年代の半ばのHIVに対する差別や偏見、また当時の製薬会社やFDAの実態を知ることができる作品でもありました。

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