ありふれた日常の恋愛を撮り続ける今泉力哉監督。最新作は片思いを中心にした『mellow メロウ』です。誰もは一度は経験したことある片思い。心の中で大切に育てられた想いは「花」と同じなのかもしれません。ここではみんなの片思いと花とのつながりを見ていきたいと思います。
『mellow メロウ』作品情報
タイトル | mellow メロウ |
監督 | 今泉力哉 |
公開 | 2020年1月17日 |
製作国 | 日本 |
時間 | 1時間46分 |
あらすじ
[aside type=”normal”]独身・彼女なしで「恋人は花」と言うほどに花が好きな夏目誠一が営む、おしゃれな花屋と、女性店主の木帆が切り盛りしているが、父親から代替わりして今では廃業寸前のラーメン屋。
対照的な2つの店を舞台に、さまざまな人たちの不器用な片思いを描く。
(出典:https://eiga.com/movie/91809/)
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片思いとお花
主人公の夏目誠一は「mellow」という花屋を経営しています。
そんな彼の周りにいる人の片思いを描いたのが、映画『mellow メロウ』です。
それぞれの片思いに夏目の作るお花は関係していました。
高校の先輩に憧れる陽子ちゃんは、夏目の作った花束を持って先輩の宏美に告白します。
陽子ちゃんの中で大切に育てられた宏美への想い。
それは夏目が大切に作った花束とともに宏美の元に届けられました。
宏美は陽子ちゃんを振ってしまいますが、陽子ちゃんからもらった花を家できちんと育てます。
花を大切にするように宏美は陽子ちゃんの想いも大切にします。
「ありがとう。でもごめんね。」
恋人ではないけど2人の距離は近づいていました。
そんな宏美が好きなのは夏目。
夏目が花を扱っている姿が大好きです。
それは夏目が人の想いを大切にしているからかもしれません。
私は『mellow メロウ』では、「花」は「想い」を可視化したものとして描かれているのではないかと思いました。
ラーメン屋を辞めることにした木帆が、最後の日にみんなに配ったバラの花。
それもお客様への感謝の想いでした。
バラの花を受け取った人たちはみんな嬉しそうな顔をしています。
優しい想いを感じたらみんな嬉しくなるのです。
夏目の姪のさほが夏目が花屋になったことを不思議がっていましたが、夏目は花が大好きで花を通してつながる人の想いを大切にしているから花屋になったのかもしれません。
誰かに花を渡す時、嫌な気持ちで渡す人はいません。
花をもらって嫌な気持ちになる人もいません。
花は人の心を暖かくするもの。
だから夏目は花が好きで花屋になったんだと感じました。
伝えることの大切さ
花を渡すこと=相手に想いを伝えること
そう考えるとさほのお母さんが花をもらうのも渡すのも苦手だと言ったのも理解できます。
人に想いを伝えるのは恥ずかしくて苦手だし、想いを伝えられるのも苦手という人もいるからです。
でも『mellow メロウ』に登場した人たちはみんな自分の思いを相手に伝えます。
相手を想う気持ちをストレートに伝えるのでした。
それは相手を想いながらも自分のためなのかもしれません。
冒頭で喧嘩していたカップルも、青木夫婦の奥さんが夏目に想いを伝えたのも相手のためではなく自分のためでした。
それでも想いを伝えることが自分自身と向き合うことでもあるのです。
それは父から娘への思いも同じです。
海外に行きたいと知っていたのに自分の思いを伝えなかった父親、海外に行きたいことを伝えなかった娘。
伝えなかったことですれ違った親子は、想いを伝えることで初めて相手のことを理解できたのです。
父親はもうこの世にはいませんでしたが、それでも父は娘を想い自分の気持ちを手紙に託しました。
そして娘は夏目への想いを手紙にしたのです。
面と向かって相手に想いを伝えることが少なくなってきた時代だからこそ、伝えることの大切さ・想いを受け取ることの大切さを感じる作品になっていました。
まとめ
花を通して想いを伝えることを描いていた『mellow メロウ』。
今泉監督の作品の特徴はラストの先を自分自身で考えさせることだと想います。
夏目と木帆はあの後どうなったのか?
夏目は花を持って木帆の元に向かいました。
どんな答えになるかは分かりませんが、夏目も自分の想いを木帆に伝えたはずです。
そして夏目の想いと花を受け取った木帆は、その想いと花を大切に育てていくはずです。
誰かにお花を渡したくなるそんな映画でした。