短編映画『兄弟愛 / Brotherhood』で知るチュニジアとシリアの関係


チュニジア系アメリカ人の女性監督が作った短編映画『兄弟愛 / Brotherhood』。チュニジアからシリアに行ってしまった息子がある日突然家に戻ってきます。その日から始まる父親との関係と兄弟との関係。この映画を通して普段ニュースでを知ることのできないチュニジアの現状を知ることができます。

『兄弟愛 / Brotherhood』作品情報

タイトル Brotherhood
監督
Meryam Joobeur
公開 2018年9月7日
製作国 カナダ/チュニジア/カタール/スウェーデン
時間 25分

あらすじ

羊飼いの父は妻と2人の息子とチュニジアの田舎町で暮らす。

ある日、長男がミステリアスな新妻を連れて長い旅から帰郷した。

それからの3日間、父と長男の間に走る緊張はついに頂点に達する。

(出典:https://sst-online.jp/theater/6657/)

チュニジア

北アフリカにあるチュニジア。
アルジェリアとリビアに接していて、さらには地中海に面しているイスラム教の国です。
イスラム教の中でもほとんどがスンニ派です。

『 Brotherhood』に登場する家族はチュニジアで羊を買って生計をたてていました。

チュニジアでは2010年〜2011年にかけてジャスミン革命と呼ばれる革命が起きます。
反政府デモが国中で起こり、当時の大統領で独裁者でもあったベンアリ大統領と追放しました。

民主化を求めてチュニジアを始めアラブ諸国で起こった革命はアラブの春と呼ばれています。
その革命はシリアにも広がり、シリアは内戦状態となってしまったのです。

そんな中、シリアにイスラム過激派が誕生します。

チュニジアの中でもシリアに渡る男性がたくさん現れ社会問題となりました。
映画の中でもニュースで「聖戦のためにシリアに渡る国民がいます」とチュニジアの状態が説明されていました。
政府はそれに対して不法出国の資金を押収するなど対策を行っていました。

『 Brotherhood』の中の家族の長男マレクもシリアに渡った1人です。
1年近く姿を消していた彼が突然帰ってきたことで、家族の中には様々な思いが生まれたのでした。

兄弟

タイトルの『 Brotherhood』は兄弟愛という意味ですが、この映画の中では2つの兄弟愛が描かれています。

1つはマレクの弟達に対する愛。
マレクは正義を掲げシリアに渡りましたが、きっとシリアで見た現状は自分の思い描いていたものと違ったのでしょう。
組織から逃げ出しチュニジアへ戻ってきたのです。

そして弟に伝えた言葉「シリアへは行くな」。
この言葉だけでマレクが見てきた世界は想像と違ったことが分かります。
そして自分と同じ経験を愛する弟達にさせたくないと考え、弟に伝えたのが「シリアへ行くな」だったのです。

もう1つの兄弟愛はマレクがシリアに行くきっかけとなった兄弟愛。
シリアで戦う仲間・兄弟への愛でした。
マレクは父親に「シリアの兄弟を助けたかった」とシリアへ行った理由を話します。

チュニジアで起こった革命のようにシリアで戦っている兄弟を助けようと純粋な気持ちでシリアに渡ったマレク。
しかしその思いはシリアで見たことによって崩れました。

マレクは純粋な気持ちでシリアに渡りました。
だからこそ自分の思いと現実の違いを感じシリアから逃げ、またその時にシリアの女性を助けたのです。

父親がそんなマレクな純粋な思いに気づきますが、それは遅すぎました。
ラストの父親の悲痛な叫び声が、チュニジアで起きている厳しい現実の訴えのように聞こえました。

まとめ

日本で暮らしているとニュースで見ることはあっても、実際のチュニジアの状況を知ることはなかなかありません。

『 Brotherhood』ではチュニジアの現状が描かれていて、今どんなことが起きているのかを知ることができました。

チュニジア系の監督だからこそ、市民の視点で描けた作品になっていました。

25分間の緊迫した雰囲気は今のチュニジアの情勢なのかもしれません。