映画『ヘアスプレー』(2007年)で見る1960年代前半のアメリカ

1962年のボルチモアを舞台にしたミュージカル映画『ヘアスプレー』。歌とダンスが大好きな太った女の子が、周りの目を気にせず自分を信じて進む1960年代。彼女の信念は当時のボルチモアで起こっていた差別をも変えてしまうのです。『ヘアスプレー』を通して1962年のアメリカを見てみたいと思います。

目次

『ヘアスプレー』作品情報


ヘアスプレー [Blu-ray]

タイトル ヘアスプレー(Hairspray)
監督 アダム・シャンクマン
公開 2007年10月20日
製作国 アメリカ
時間 1時間57分

Rotten Tomatoes

あらすじ

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1962年、米メリーランド州ボルチモア。

ダンスとオシャレに夢中な16歳の女子高生トレーシーは、ヘアスプレー企業が手掛ける人気テレビ番組“コーニー・コリンズ・ショー”に出演し、憧れのリンクと踊ることを夢見ていた。

そしてある日、彼女は母エドナの反対を押し切り、番組のオーディションに参加する。

しかし、その太めな体型から、番組の中心メンバーであるアンバーと彼女の母で番組も仕切っているベルマに追い払われてしまう。

ところが一転、番組ホストの目に留まり、レギュラー・メンバーに抜擢されたトレーシーは一躍注目の存在に。

だが、そんな彼女の成功が面白くないベルマとアンバー母娘は様々なトラブルを仕掛け、ある時ついに大事件が発生する…。

(出典:https://www.allcinema.net/cinema/328271)

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ボルチモア

『ヘアスプレー』は1962年のボルチモアが舞台です。
メリーランド州の最大の都市がボルチモアです。

1962年のボルチモアはまだまだ人種差別が多い都市でした。
メリーランド州は元々は南部の奴隷州の1つでした。

南北戦争のときは、北軍に参加した市民と南部連合軍に参加した市民とで分裂します。
州自体は北軍に参加したという背景があり、複雑な歴史があるのがこのメリーランド州だったのです。

映画の冒頭で配られる新聞は「ボルチモア 大学 黒人学生を拒否」という記事が乗っていました。
公民権運動が広がり黒人への差別を撤廃する風潮の中、ボルチモアではまだまだ根深い差別が残っていました。

ジム・クロウ法

南北戦争で北軍が勝ったことで奴隷制度は廃止されたはずでしたが、奴隷制度は無くなっても人種差別は残っていて、その中でジム・クロウ法を制定する州が増えていきました。

ジム・クロウ法とは白人とそれ以外の人種を隔離する法律です。
白人専用のバスを作り、レストランを作り、学校も分けた州もありました。

『ヘアスプレー』の中では同じ学校に白人と黒人が通っていましたが、クラスが分けられていました。
トレイシーのクラスは白人だけのクラスでした。
逆に居残りのクラスには黒人ばかりしかいませんでした。

『ヘアスプレー』のメインとなる『コーニー・コリンズ・ショー』も白人の学生が踊るのがメインで黒人の学生が踊るのは月1回しかありませんでした。
白人と黒人が一緒に踊ることも許されていない時代。

黒人と白人が恋愛をするなんてご法度だったのです。
黒人を好きになったペニーの母親はそれを知って気絶するほどでした。
ペニーの母親は敬虔なキリスト教信者です。
敬虔なキリスト教の信者の中には、白人至上主義の考えを持った人た多かったのです。
当時は教会も白人と黒人で分けられていたほどですから、ペニーの行動を見て母親はショックを受けたのでした。

ジム・クロウ法は1964年に廃止されるまで続いていた州があったのです。

R&B


映画「ヘアスプレー」オリジナル・サウンドトラック

『ヘアスプレー』の中で、月1回行われた「ブラック・デー」。
その日にテレビに流れる音楽はR&Bでした。

黒人の音楽と言われるR&B。
公民権運動が広まる中黒人のルーツとしされた音楽でしたが、流行に敏感な若者達の中で流行り始めます。

「ブラック・デー」以外の日に番組で黒人音楽をかけ時は、「娘に黒人の音楽を聞かせるの」と非難されていました。
プロデューサーのベルマは「デトロイト・サウンド?犯罪都市の音楽よ」なんてことも言っていました。

デトロイト・サウンドとは、デトロイト発祥のレコード会社のモータウンの音楽のことを指しています
モータウンは黒人が設立したレコード会社で、ソウルミュージックやブラックミュージックを次々とヒットさせました。

黒人の誇りであったR&Bは、次第に白人達の間でも広がりやがってロックを生み出すことになっていくのです。

学びポイント

1962年を舞台にした『ヘアスプレー』。
当時の黒人に対する差別を知ることができますが、それと同時に時代が変わり始めた1960年代前半を感じることができます。

変わりつつある時代、時代の変化の波を描いたのが『ヘアスプレー』でもありました。

実際にこの後、ジム・クロウ法は廃止されキング牧師によるセルマの行進が起こり公民権運動は広がっていきました。

当時の黒人に対する差別を学ぶと同時に、それに立ち向かった人達の勇気ある行動も知ることができる映画でもあります。

 

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