映画『三十九夜』で描かれるヒッチコックのマクガフィン

偶然出会った女性諜報員が殺されてしまい、彼女の代わりに国家機密を守ろうとする主人公のハネイ。彼が必死で守ろうとして国家機密とは。そして女性が残した「39階段」とは?ヒッチコック監督によって普及したマクガフィンを通して『三十九夜』を詳しくみていきます。

目次

『三十九夜』作品情報


三十九夜 [DVD]

タイトル 三十九夜(The 39 Steps)
監督 アルフレッド・ヒッチコック
公開 1936年3月5日
製作国 イギリス
時間 1時間26分

Rotten Tomatoes

あらすじ

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カナダから帰国したばかりの外交官ハネイは寄席で記憶術師・Mr.メモリーのショーを見て、謎の女に救いを求められ自室へ連れ帰るが、彼女は何者かによって殺され、彼は逃亡を余儀なくされる。

真犯人(分かっているのは左手の小指が無いことだけ)追及にわずかな手がかりだけを頼りにスコットランドへ列車で向かう彼は、車内検閲の急場を同席した女(キャロル)へのキスで逃れようとするが……。

(出典:http://www.allcinema.net/prog/show_c.php?num_c=9264)

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マクガフィン

[voice icon=”https://movielife45.com/wp-content/uploads/2019/10/o0276042011380678431-e1571069366787.jpg” name=”YOKO” type=”l”]映画界においてヒッチコックが普及させたと言われているマクガフィン。マクガフィンとは何を意味するのでしょうか?[/voice]

マクガフィンとは:泥棒が狙う宝石やスパイが狙う重要書類など
と説明されています。

これは元々スパイ小説などで描かれました。
泥棒やスパイが狙うものですが、それはなんでもよくてそれ自体には大した意味が無いのです。

これを映画に取り入れたのがヒッチコックです。
映画の物語を進める役割を果たすのがマクガフィンですが、「それ自体はなんでもいい」とヒッチコックは言っていました。
無意味なものの方がよくて、マクガフィンに意味を持たせると話がそれてしまったりわかりにくくなってしまいます。

映画を見ているときにマクガフィンに夢中になりすぎると、監督の描きたかった本当の物語を見失ってしまうこともあります。
映画ではマクガフィンの正体が最後まで明かされない作品もあります。
それにこだわってしまうと、映画の本筋からそれてしまうのです。

ヒッチコック作品の特徴はこのマクガフィンです。
ヒッチコックは多くの作品でこのマクガフィンを使用していました。

ヒッチコックの描くサスペンスの大切なものではありますが、どの作品もそれ自体には意味がありません。
ヒッチコックはマクガフィンを使いながら、そこから始まるサスペンスを撮り続けた監督なのです。

『三十九夜』の中のマクガフィン

39階段

諜報員という女性が残した謎の言葉「39階段」。
これがまず『三十九夜』のマクガフィンになります。

女性は「39階段を知ってる?」とハイネに聞きますが、その意味をハイネに教えないまま女性は殺されてしまいました。

ハイネは「39階段」を求めて、女性の残したスコットランドの地図を手がかりに逃亡したのです。

国家機密

「39階段」と同じくもう1つ『三十九夜』の中で描かれるマクガフィンが国家機密です。

女性諜報員が守るとした国家機密であり、女性を殺した男が国家から持ち出そうとした国家機密です。

『三十九夜』のサスペンス

ヒッチコックは『三十九夜』の中で「39階段」や「国家機密」をマクガフィンとして物語をスタートさせました。

しかしそれらはマクガフィンなので、大した意味のないものです。
この作品でヒッチコックが描きたかったのは、殺人犯にされてしまった男の逃亡劇と途中で出会う女性とのロマンスです。

警察と犯人の部下に追われるハイネ。
追っ手が迫ってくるスリルや、捕まった彼がどうなるのかなどの緊張感を観客に伝えたかったのです。

さらにハイネが途中で出会った女性。
ハイネを犯人と思っている女性と無実を訴えるハイネの関係を、サスペンスの中にロマンスとしてプラスしています。

ちなみに最後にヒッチコックはマクガフィンの答えを観客に教えてくれています。
「39階段」はスパイ組織の名前で、「国家機密」は航空機のエンジンが無音になる公式でした。

それがなぜ国家機密だったのかは分かりませんが答えがわかると、本当にどうでもいい国家機密だなと思いました。
さらにヒッチコックは小指がない男もマクガフィンだとしています。
「彼がなぜ小指がないのか?」「彼は何者なのか?」「スパイ組織の正体は?」などなぞが残りますが、それを示すことは映画の中には必要ないことだったのです。

まとめ

今回は『三十九夜』を通してヒッチコックの映画の特徴の1つであるマクガフィンについて調べてみました。

この手法は多くの作品で多用されていますが、ヒッチコックはマクガフィンには軽く触れるだけです。
それ以上マクガフィンを詳しく描いてしまうと、観客がマクガフィンにとらわれてしまい描きたい本当のことを見失ってしまうからです。

「マクガフィン」について理解したので、ヒッチコックの他の作品を見直すと今までと違った視点で作品を見ることができるかもしれません。


三十九階段 (創元推理文庫 121-1)

 

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