映画『ブレードランナー』こだわり抜いた近未来2019年の世界


世界が衰退した近未来を描いた映画『ブレードランナー』は、その後のSF作品で描かれる世界を変えてしまうほど多大な影響を及ぼした作品でした。リドリー・スコット監督がこだわった暗くて憂鬱な世界は、現実社会から続くサイバーパンクな近未来だったのです。

『ブレードランナー』作品情報


ディレクターズカット ブレードランナー 最終版(字幕版)

タイトルブレードランナー(Blade Runner
監督リドリー・スコット
公開1982年7月3日
製作国アメリカ/イギリス
時間1時間57分

あらすじ

(引用:MIHOシネマ

近未来2019年

映画『ブレードランナー』の舞台は西暦2019年。

そこには映画が製作された1982年から続く、リアルな世界が描かれていました。

酸性雨の降り続く暗くて陰気な世界ですが、それこそがリドリー・スコット監督が作りたかった世界でした。

それと同時に監督は自身が手がけた『エイリアン』ともつながる世界を作ろうと考えていました。


エイリアン/ディレクターズ・カット (字幕版)

『エイリアン』でノストロモ号に乗らなかった、地球に残された人々とつながる社会を『ブレードランナー』の中で描きました。

『エイリアン』は西暦2122年が舞台ですが、そこにつながる2019年が『ブレードランナー』の世界なのです。

そんな監督の想いが伝わったのかどうかは分かりませんが、『ブレードランナー』でハリソン・フォード演じるデッカードが暮らす家のエレベーターのシーンは、『エイリアン』へのオマージュだと美術スタッフは語っていました。

監督が細部までこだわって作り上げた『ブレードランナー』の世界は、それまでのSF作品が描く未来世界とは大きく違っていました。

様々なものが入り乱れる無国籍な街並みで特に目立つのは、漢字や芸者などアジア的なイメージです。

その世界はその後のSF作品に大きな影響を与えていて、『ブレードランナー』はSF作品が描く未来の分岐点となった作品でもあったのです。

ちなみに監督のこだわりが強すぎて予算が足りなくなったのため、『ブレードランナー』の中には他の映画のセットや小道具などがたくさん使われています。

その1つが警察署のシーンで、警察署の外観のてっぺんの部分は『未知との遭遇』のUFOの内部を改造したものが使われています。


未知との遭遇 ファイナル・カット版 (字幕版)

『ブレードランナー』の世界観

サイバーパンクな2019年の世界を描くことにこだわりを見せたリドリー・スコット監督ですが、それは建物だけでなく小道具などの細かい部分まで及んでいます。

地球に残された貧しい人々の混沌とする世界を、衣装や小物などで見せようとしています。

レプリカントのテスト「フォークト=カンプフ」や写真を分析する「エスパーマシン」など未来的なものを見せながらも、どこか衰退した雑多的な感じがします。

その雑多的な感じは遺伝設計技術者のセバスチャンの家の中でも描かれています。

監督はたくさんの人形に囲まれて暮らすセバスチャンの家を、映画『大いなる遺産』(1946年)に登場するミス・ハヴィシャムの家をイメージしています。


大いなる遺産 [DVD]

たくさんの人形が置かれている家を作ることで、ミス・ハヴィシャムと同じようにセバスチャンがガラクタに埋もれて生活している様子を描きました。

レイチェル

『ブレードランナー』のメインキャラクターであるレプリカントは、それぞれ個性が強くとても印象に残ります。

その中でも他のレプリカント達と違う存在がレイチェルで、彼女はタイレルによって作られた特別なアンドロイドでした。

そのレイチェルを演じたのはショーン・ヤングですが、当時彼女は新人の女優でした。

リドリー・スコット監督は40年代をイメージする衣装を身につけた彼女を見た時、映画『ギルダ』でギルダを演じたリタ・ヘイワースを想像しました。

映画『ギルダ』は1940年代〜1950年代に作られた犯罪映画フィルム・ノワールを代表する作品で、監督は『ブレードランナー』をフィルム・ノワール的作品にしたいと考えていました。


ギルダ (字幕版)

また監督にとってリタ・ヘイワースはアイドル的存在だったこともあり、『ブレードランナー』におけるレイチェルは『ギルダ』へのオマージュでもありました。

それと同時にレイチェルは監督のイメージするフィルム・ノーワルにとって重要な存在だったのです。

ユニコーン

1984年に公開された『ブレードランナー』ですが、この作品には様々なバージョンがあります。

最初の試写会のバージョン、その後のアメリカ公開バージョン、公開10周年のディクターズ・カット版、公開25周年のファイナルカット版など。

その中でファイナルカット版にはデッカードの夢の中に登場するユニコーンのシーンがあります。

監督は最初からこのシーンを入れたかったのですが、意味が分からないとカットされたシーンでした。

しかし監督にとってユニコーンのシーンは「デッカードはレプリカントなのか」と観客に疑問を持たせる大切なシーンで、ファイナルカット版でやっとユニコーンのシーンが追加されます。

監督にとって重要なこのシーンは、ジャン・コクトー監督の『美女と野獣』の影響を受けています。


美女と野獣(字幕版)

野獣が美女に取り憑き美女を救うために英雄が森から現れるという夢の構想だったそうで、監督は英雄のイメージをユニコーンにしました。

このユニコーンがラストシーンで、ガフのユニコーンの折り紙へと繋がるのです。

>>>映画『美女と野獣』についてはこちら

まとめ

今でもカルト映画として絶大な人気を持つ『ブレードランナー』はSF映画にとって重要な存在で、その世界はその後のSF作品に大きな影響を与えました。

そこにはリドリー・スコット監督のこだわりが詰まっていて、些細なことにも妥協しなかったことから誕生したのが『ブレードランナー』のサイバーパンク的な近未来だったのです。

参考資料
メイキング・オブ・ブレードランナー
ブレードランナー ファイナル・カット (2枚組) [Blu-ray]