1928年に起きた子供の誘拐事件を描いた映画『チェンジリング』。それは単なる誘拐事件ではなく、当時のロサンゼルス市警の腐敗した姿を描く物語でもあります。さらに母親として息子のために闘う決意をした1人の女性の姿が描かれています。この作品は、権力に屈せず自分の信念を貫き通した1人の女性の物語なのです。
『チェンジリング』作品情報
タイトル | チェンジリング(Changeling) |
監督 | クリント・イーストウッド |
公開 | 2009年2月20日 |
製作国 | アメリカ |
時間 | 2時間21分 |
Rotten Tomatoes
あらすじ
(引用:MIHOシネマ)
権力と差別
1928年ロサンゼルスでコリンズ夫人の息子ウォルターがいなくなってしまいます。
彼女は必死で息子を探しますが、息子が見つかりませんでした。
それから5ヶ月後。
警察からウォルターを見つけたと連絡を受けるコリンズ夫人でしたが、戻ってきたのはウォルターとは全く違う少年でした。
彼女は何度も「息子ではありません」と伝えますが、警察は絶対に彼女の主張を認めようとしません。
それどころか彼女が精神的におかしいと判断してしまったのです。
この当時映画の中で描かれているように、ロサンゼルス警察は腐敗していて汚職による絶対的権力を手にしていました。
それにより「警察は絶対」という考えが出来上がってしまいます。
当時ロサンゼルスは「狙撃班」と呼ばる組織を作り、彼らに機関銃を持たせていました。
彼らの仕事は、歯向かう者を撃ち殺すこと。
彼らは取り調べもせずに、怪しいと感じたら射殺するのです。
さらに警察官に歯向かう女性は次々と精神病院に入れてしまいます。
戻ってきた少年がウォルターではないと言ったコリンズ夫人も、警察に刃向かったことせ精神病院に入れられることになったのです。
しかも精神病院から出ることはほとんど不可能です。
「警察は間違っていない」という書類にサインをするしか、退院する方法はないのです。
さらに1920年には女性に参政権が与えられていましたが、まだまだ女性は虐げられている存在でした。
コリンズ夫人のように働く女性も増えていましたが、責任あるポジションにいる女性はほとんどいませんでした。
ジョーンズ警部はコリンズ夫人を精神病院に送り込んだ理由の1つとして「自分に従わないからだ」と叫びます。
「女性は男性に従う者」「市民は警察に従う者」そんな間違った歪んだ考えが、この時代にはまだまだ蔓延していたのです。
母として女性として
突然息子がいなくなってしまったコリンズ夫人。
彼女は「ウォルターは生きている」という信念を胸に、彼女御前に立ちはだかる権力と闘うことを決めます。
それは彼女にはウォルターにも教えていた「売られた喧嘩にケリをつける」というモットーがあったからです。
彼女はウォルターを探している時、警察に不当な扱いを受けました。
自分の話を信じてもらえず、さらには精神病院に収容されてしまいます。
そんな不当な扱いに対してケリをつけるために、彼女は立ち上がりました。
まず自分と同じように警察の不当な扱いで精神病院にいられている女性を救います。
そして警察に対して裁判を起こしました。
そんな彼女の行動が、いつしかロサンゼルスの市民の心を1つにします。
権力の前に屈することしかできなかった市民を動かしたのです。
コリンズ夫人の行動が汚職まみれで腐敗しきっていた、ロサンゼルス警察を解体することになります。
彼女はその手で市民の安全を取り戻したのです。
ただし、彼女の元にウォルターは戻ってきませんでした。
それでも彼女は母親として諦めずに最後まで息子を探し続けました。
母親として愛する息子を待ち続けたのです。
強い女性であり強い母親だったコリンズ夫人。
彼女は歴史を動かした女性でもあったのです。
まとめ
1928年に実際に起こった事件を基にして描かれた映画『チェンジリング』。
そこには権力に屈せず戦い続ける強い女性の姿が映し出されていました。
しかし同時に母親でもある彼女は、息子に対して深い愛情を抱いていました。
女性の不屈の愛と強さを描いたのが『チェンジリング』だったのです。