映画『ホテル・ルワンダ』で描かれたルワンダで1200人を救った英雄のその後

1994年4月に始まったルワンダでの大量虐殺で、多くのツチ族がフツ族によって殺されました。惨劇の中、ホテルの支配人でフツ族のポール・ルセサバギナ氏は、避難民をホテルにかくまい1200人を救いました。1994年7月には大虐殺は終わりますが、ポール・ルセサバギナ氏の戦いはずっと続いていたのです。

目次

『ホテル・ルワンダ』作品情報


ホテル・ルワンダ [Blu-ray]

タイトル ホテル・ルワンダ(Hotel Rwanda)
監督 テリー・ジョージ
公開 2006年1月14日
製作国 南アフリカ共和国/イギリス/イタリア/アメリカ
時間 2時間1分

映画『ホテル・ルワンダ』の詳しい内容はこちら>>>

あらすじ

(引用:MIHOシネマ

フツ族とツチ族

大昔、先住民が暮らしていたルワンダの土地にやってきたツチ族フツ族

やがて同じ言葉を話すようになり、同じ神を信じるようになり、やはて民族間を超えて結婚もするほど、お互いを認め合いながらが生活を送り始めます。

映画『ホテル・ルワンダ』の中でツチ族とフツ族の女性を「そっくりだ」とジャーナリストが言いますが、ほとんど見た目も変わらない2つの部族でした。

敢えて言うならその違いはツチ族が家畜で生計を立て、フツ族が農業で生計を立てていました。

しかしやがてこれが少しずつツチ族を優位にし、1860年頃にはツチ族が優位な民族となってきます。

さらにその後、ルワンダにやってきたドイツと手を結んだツチ族は、フツ族を支配し続けます。

第一次世界大戦後にはドイツからベルギーの植民地となったルワンダ。

その頃にはツチ族とフツ族は対立するようになってきます。

ベルギーは、『ホテル・ルワンダ』にも出てくるようにルワンダ国民をツチ族とフツ族に分け、IDを配ります。

ベルギー人は彼らを背の高さや鼻の高さでツチ族とフツ族に分けたのです。

さらにベルギー人は、ツチ族にとって優勢な植民地支配を行うようになります。

こうしてツチ族とフツ族の間の溝は広がり続けますが、ルワンダが独立する直前フツ族による暴動がが起こり、ベルギー政府はフツ族側につきます。

こうして今度はフツ族が権力を握り、1962年の独立時にはフツ族の大統領が支配するルワンダ共和国が誕生しました。

新しい政権はツチ族を排除する政策をとるようになり、ルワンダからツチ族を追い出します。

一方で、ルワンダから逃げ難民となったツチ族の人たちは、ルワンダに帰ることを誓うルワンダ愛国戦線(RPF)を結成したのです。

1973年に大統領に就任したジュベナール・ハビャリマナ大統領は、フツ族優勢の政策をとりながらもツチ族との和解を模索し始めます。

そしてジュベナール・ハビャリマナ大統領はツチ族との和平協定を結びました。

この和平協定が結ばれるところから、映画『ホテル・ルワンダ』の物語は始まります。

ルワンダ大虐殺

1994年4月6日ルワンダの大統領ジュベナール・ハビャリマナの乗っていた飛行機が何者かによって撃墜され大統領は亡くなってしまいます。

実はこの事件の犯人は分かっていないのですが、フツ族の過激派はツチ族が大統領を暗殺したというニュースをラジオで流します

これがきっかけとなってフツ族のツチ族に対する虐殺が始まったのでした。

映画『ホテル・ルワンダ』でも描かれるように、フツ族の民兵リーダーはラジオを使ってフツ族の人たちにツチ族を殺すように命じます。

フツ族はツチ族を根絶するために女性や子供関係なく、ツチ族の人を次々と殺していったのです。

『ホテル・ルワンダ』主人公でもあるミル・コリン・ホテルの支配人ポール・ルセサバギナは、フツ族でした。

彼はフツ族という身分と、ホテルの支配人とした気づいてきたコネで、なんとかミル・コリン・ホテルを守ろうとします。

そのホテルには従業員や彼のツチ族の家族だけでなく、逃げてきたツチ族の人々、さらにはツチ族を助け裏切り者とされるフツ族の人たちがたくさんいました。

何度も命の危険を感じながらも彼は最後まで民兵に抵抗し続け、ホテルにいた1268人を助けたのです。

ポール・ルセサバギナ氏

1994年に起きたルワンダ虐殺で、1200人もの人を救ったポール・ルセサバギナ氏。

映画『ホテル・ルワンダ』の終わりでは、「彼は妻とともにベルギーに渡り、子供達や養子にした姪たちと暮らしています。」と字幕がでます。

映画はここで終わりますが、ポール・ルセサバギナ氏の物語はこれで終わりではありませんでした。

ベルギー亡命した後、彼はルワンダのポール・カガメ政権に対して批判を行い始めます。

ポール・カガメ大統領は、ツチ族系でルワンダ虐殺の時にツチ族を救ったルワンダ愛国戦線(RPF)の最高指導者です。

その後彼はルワンダの大統領となり、ジェノサイド後のルワンダを大きく復興させました。

著しい経済成長をとげ、国際的にも重要な国となりつつあります。

しかしそれと同時に、カガメ大統領は国内で独裁色を強め始め、それを知ったポール・ルセサバギナ氏は「独裁者だ」と発言し、反政府の政党を作りました。

そんな反政府の行動をカガメ政権は許すはずもなく、対立は深まるばかりです。

またポール・ルセサバギナ氏が立ち上げた政党は、コンゴで武力的な勢力を持つ政党だったとされ、その政党がルワンダ国内でテロ行為を行なったとして、2020年8月31日にポール・ルセサバギナ氏はテロを主導したとしてルワンダで逮捕されてしまいました。

ルセサバギナ氏はルワンダの隣の国ブルンジに行く予定でしたが、騙されてルワンダに戻され逮捕されたと主張しています。

その後、2021年9月20日ベルギー政府はルセサバギナ氏に、武装組織を創設した罪などで禁錮25年の有罪を言い渡しました。

一方、ルセサバギナ氏は無罪を訴えていますし、家族たちは彼は拉致されたと主張しています。

またルセサバギナ氏の娘は、「カガメ大統領が過去20年間にわたって父親の口を封じようとしていたとし、今回25年にわたって口を封じることに成功した。」と語っています。(CNN)

まとめ

映画『ホテル・ルワンダ』は、ルワンダで起きた虐殺を描いた映画で、1994年ルワンダで何が起きていたのか知ることができる映画です。

さらに惨劇の中多くの人を救った英雄ポール・ルセサバギナ氏。

しかしそれから25年後、ポール・ルセサバギナ氏はなんと逮捕されてしまいました。

ルワンダでの虐殺は終わっても、ポール・ルセサバギナ氏の物語はまだ終わりではないのです。

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