ビデオテープの前で自分の性について語る女性たち。そしてそれを見る1人の男性。人に知られたくないことを語ることで、自分の心の奥底に眠る自分自身に気がついていきます。そんな中たった1人最初から最後まで嘘に飲まれてしまった男性もいました。ありのままを見つけた3人と嘘をつき続けた1人の物語が『セックスと嘘とビデオテープ』です。
『セックスと嘘とビデオテープ』作品情報
タイトル | セックスと嘘とビデオテープ(Sex, Lies, and Videotape) |
監督 | スティーブン・ソダーバーグ |
公開 | 1989年12月9日 |
製作国 | アメリカ |
時間 | 1時間40分 |
Rotten Tomatoes
あらすじ
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ルイジアナ州の小都市。
弁護士のジョンは理想的な家庭を築いているかに見えるが、実は妻の奔放な妹と関係していた。
そんな折、学生時代の友人が訪れ、ビデオカメラで性的対話をしようという。
心優しき変態者の来訪により、それぞれの男女が自己崩壊と自己発見のスリルを味わっていく。
(出典:https://eiga.com/movie/17505/)
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ビデオテープにより解放された姉妹
アン
精神科でセラピーを受けるアン。
自分の力ではどうにもならない絶対的正義の話をしたり、彼女の掃除の仕方を見るとどこか異常性があるのが分かります。
さらに彼女は結婚して専業主婦なりました。
理想を追い求めその中で暮らす彼女。
「人間というものは、、、」「女性というものは、、、」という固定観念が、強迫観念になっているように見えます。
だから性に奔放な妹に対してどこか嫌悪感を抱いています。
でも「姉妹だから」「家族だから」という考えの元、妹と連絡を取り合っていました。
しかしグレアムに出会い、夫の浮気を知り、彼女は少しずつ自分の作った世界から出て行こうとします。
そして最終的に彼女の背中を押したのがビデオテープだったのです。
ビデオの中で自分の心の奥にあるものを語ったアン。
彼女は夫との離婚を決意し、自分の素直な気持ちのまま生きていいのだと悟ったのです。
アンが変わったことは、シンシアの店でアンに絡む男性の扱いを見れば分かります。
最初は嫌そうに怒って店を出て行ったアンでしたが、自分を受け入れた後は彼を交わす余裕があります。
自分を解放し受け入れたことで、彼女は生まれ変わったのです。
シンシア
姉の夫ジョンと浮気していたシンシア。
ただ、彼女はジョンを愛していたわけではなさそうです。
アンからグレアムのことを聞くと、すぐにグレアムに興味を持ちます。
姉のものを奪いたいそんな風に見えるのが妹のシンシアでした。
彼女たちの幼少期は描かれていませんが、お金持ちと結婚した姉と比べると妹のシンシアの暮らしは大きく違います。
また2人の性格も正反対のようです。
だからこそシンシアは姉が羨ましかったのかもしれません。
そんなシンシアもテープの中で自分の性を赤裸々に語ったことで、自分が何をしていたのか、何をしたかったのかに気がつきました。
そしてジョンと分かれます。
別に彼を愛していたわけではないと気がついたから。
映画の終わりにアンが誕生日プレゼントを持ってシンシアの元を訪ねます。
その時のシンシアを嬉しそうでした。
姉に認めてもらいたいと思っていたのかもしれません。
彼女もまた「姉」というものから離れ、自分の人生を歩み出しました。
人との関わりを避けてきたグレアム
昔は病的な嘘つきだったグレアム。
別人になるために、彼はビデオテープを撮り続けました。
彼は「人の人生に影響を与えたくない」と思っています。
だからビデオテープの中にこもっていきました。
もう嘘をつかないという思いと、人に関わらないという思いの中で、ビデオテープの中の真実だけが彼の楽しみでした。
しかしそんなグレアムを心の闇をえぐり出したのがアンでした。
ビデオによってありのままの自分を受け入れたアンが、今度はグレアムをビデオの中から外に引きずりさしたのです。
そしてグレアムもまた、新たな人生を見つけました。
嘘をつかないために人とか変わらなかったグレアムは、アンとともに新しい人生を送り始めました。
嘘に飲み込まれた男
登場人物3人が自分を見つけ、新しい人生を歩み始める中たった1人ジョンだけは嘘に飲み込まれてしまいました。
妻についた嘘
顧客についた嘘
度重なる嘘で、彼はついに全てを失いました。
[box class=”glay_box” title=””]・妻
・愛人
・顧客
・仕事[/box]
1人だけ変われずに、最後まで嘘でみんなを騙そうとしたジョン。
しかもどれも報われなかった嘘。
なんだかジョンがとても惨めみ見えてしまう終わり方でした。
まとめ
みんなが抱える自分との葛藤。
理想や固定観念と自分の心とのギャップに悩み、苦しんでいました。
しかしそれが些細なことで変わり始めます。
本当の自分を受け入れることができた人たちは、笑顔で新しい人生を歩み始めました。
一方本当の自分に嘘をつき続けた人は、最後も苦しみの表情でした。
そんな人間の心理を描いたのが、『セックスと嘘とビデオテープ』でした。