ジム・ジャームッシュ監督の手がけたゾンビ映画『デッド・ドント・ダイ』。それはジョージ・A・ロメロ監督のゾンビ映画にオマージュを捧げながら、現代版のゾンビになっていました。クスッと笑ってしまうジョークも満載で現代版の緩いゾンビ映画になっていますが、現代人の闇がストレートに描かれている作品でもありました。
『デッド・ドント・ダイ』作品情報
タイトル | デッド・ドント・ダイ(The Dead Don’t Die) |
監督 | ジム・ジャームッシュ |
公開 | 2020年6月5日 |
製作国 | アメリカ |
時間 | 1時間44分 |
あらすじ
(引用:MIHOシネマ)
『ナイト・オブ・ザ・リビングデッド』
ゾンビの父と言われるジョージ・A・ロメロ監督。
彼が最初に手がけたゾンビ作品が『ナイト・オブ・ザ・リビングデッド』です。
映画『デッド・ドント・ダイ』には、その『ナイト・オブ・ザ・リビングデッド』へのオマージュシーンがいくつも登場します。
『デッド・ドント・ダイ』の冒頭は墓地のシーンで始まりますが、『ナイト・オブ・ザ・リビングデッド』でも兄と妹がお墓参りをするところから物語は始まりました。
お墓参りをする兄と妹の乗る車は、ポンティアック・ルマン。
このクラッシックカーは、映画『デッド・ドント・ダイ』にも出てきます。
都会からやってきた若者が乗る車がこのポンティアックルマンでした。
さらにこの車を見て雑貨屋のオタクの店主ボビーは「ジョージ・ロメロ的な」と若者に言います。
またそのボビーの経営する雑貨店には、『ナイト・オブ・ザ・リビングデッド』のポスターが貼られていました。
と、ここまでは映像やセリフから『ナイト・オブ・ザ・リビングデッド』を感じることができるものをいくつかあげましたが、『デッド・ドント・ダイ』の物語も『ナイト・オブ・ザ・リビングデッド』へのオマージュになっていました。
ゾンビに溢れかえってしまった町センターヴィル。
その町で何が起きているのかを、ニュース番組を通して知らせてくれますが、『ナイト・オブ・ザ・リビングデッド』の中にも何度もニュースシーンが登場します。
さらに『ナイト・オブ・ザ・リビングデッド』では、死者が蘇るのは「金星に向かった探査衛星が地球に帰還中に爆破されたことが関係している可能性がある」とされていました。
その部分を映画『デッド・ドント・ダイ』では、現代に置き換え「エネルギー企業による極地での水圧破砕による影響」としていました。
ジム・ジャームッシュ監督は1968年の『ナイト・オブ・ザ・リビングデッド』を2020年に置き換え、今の世の中に合わせて『デッド・ドント・ダイ』を作っていました。
映画『ナイト・オブ・ザ・リビングデッド』の詳細はこちら>>>
物質主義の遺物
ゾンビ映画に登場するゾンビは、何かのメタファー(比喩)になっている作品が多いです。
特にジョージ・A・ロメロ監督の一連のゾンビ映画は、その時代に合わたメタファーになっていました。
『デッド・ドント・ダイ』でもゾンビはメタファーになっています。
それは映画のラストで説明される通り、『デッド・ドント・ダイ』に出てくるゾンビは「物質主義の遺物」でした。
物欲に生きる人間をゾンビとして描いていました。
『デッド・ドント・ダイ』に出てくるゾンビは、
[box class=”glay_box” title=””]・コーヒー
・Wi-Fi
・Siri
・Bluetooth
・鎮痛剤
・睡眠薬
・キャンディ・ギター
・ファッション[/box]
など生きている時に取りつれてしまったものを口ずさみながら、町を彷徨います。
セリフに出てくるようにゾンビは右往左往していましたが、それは何かを求め彷徨う現代人の姿でもありました。
また何度もロニーの口にする「まずい結末になる」という言葉。
それはこの映画の結末ではなく、欲に取り憑かれて幽霊のようになってしまった現代社会のことを言っているようにも聞こえました。
『デッド・ドント・ダイ』はそんな現代人の姿を表したゾンビ映画でもあったのです。
ちなみに、森の中で暮らすボブが森の中で見つけたのは小説『白鯨』でした。
『白鯨』に出てくるエイハブ船長もまた「白鯨」に取り憑かれてしまった人物として描かれていました。
まとめ
ゾンビの父が作った『ナイト・オブ・ザ・リビングデッド』を、現代版に置き換えた作品『デッド・ドント・ダイ』。
物語の中で描かれるゾンビはまさしく日々の私たちの姿でした。
ジム・ジャームッシュの独特な雰囲気で作られているいて思わず笑ってしまいますが、冷静になると映画の中には自分と重なるゾンビがいたはずです。
物に執着しすぎている私たちに、「まずい結末になるぞ」と忠告している映画が『デッド・ドント・ダイ』なのかもしれません。
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