自分を偽り自分達を「普通」に見せていた2組の家族。作られた理想や作られた美をいつの間にか追い続けるようになっていました。本当の幸せとは?本当に美しいものとは?と作られた理想を追いかける私たちに、いまの生活を見直す機会を与えてくれたのが『アメリカン・ビューティー』でした。
『アメリカン・ビューティー』作品情報
タイトル | アメリカン・ビューティー( American Beauty) |
監督 | サム・メンデス |
公開 | 2000年4月29日 |
製作国 | アメリカ |
時間 | 2時間2分 |
Rotten Tomatoes
あらすじ
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郊外住宅地で妻と高校生になる娘と平和に暮らすレスター。
ところがある日、勤めていた広告代理店からリストラ宣告を受けてしまう。
これをきっかけに、一見幸せに思えた彼の日常の歯車が少しずつ狂い始め…。
(出典:https://www.allcinema.net/cinema/159869)
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[box class=”red_box” title=”アカデミー賞受賞”]・作品賞
・監督賞
・主演男優賞:ケヴィン・スペイシー
・脚本賞
・撮影賞[/box]
イメージ通りを演じる自分
郊外で暮らすアメリカの理想の家族。
彼らは外から見れば幸せな家族のように見えますが、本当は偽りの姿でした。
レスターは妻とうまくいっていません。
それでも「普通の家族」を装っていました。
妻のキャロリンも仕事がうまくいっていません。
それでも成功者になるために幸せのイメージを保つために、幸せな家族を演じています。
一方隣の家に住むフランク・フィッツ大佐は、軍人として自分の姿を偽り続けます。
本当はフランクはゲイでしたが、それを隠しゲイに嫌悪感を示す人物を演じていました。
それは「軍人は強い男」と言うイメージ通りであり続けようとしたためでした。
またジェーンの友達アンジェラ。
彼女はモテモテで男好きで男性経験豊富だと自分でジェーンや周りの友達に言っていましたが、本当のアンジェラは全く違いました。
モデルになりたい彼女は理想のモデル像を作り出し、それを演じていたのです。
物が溢れた世界で豊かに暮らす私たちは、いつしかイメージの中で暮らすようになっていました。
それは自分が作り上げた勝手な理想です。
他人の目を気にして「普通」を作り、また「作られた美」で自分を着飾っているのが『アメリカン・ビューティー』に登場する人達でした。
彼らは誰もが羨む幸せを、自分を偽りながら演じていたのです。
自分らしくあり続けた2人の若者
家族や友人が偽りの自分を演じる中、自分らしくあり続けたのがジェーンとリッキーでした。
周りからどんな目で見られようと彼らは、本当の自分を探し続け本当の自分であり続けたのです。
ジェーンは友人のアンジェラがリッキーは気持ち悪いと言っても、リッキーといることを選びます。
リッキーは父の絶対的権力に屈しないように、「何も恐れることはないのだ」と言うことを忘れないようにしていました。
2人は他人の目を気にせずに、最後までありのままの自分でいようとしました。
一方、レスターは最後の最後で、本当に美しいものは何かと言うことに気がつきました。
昔の幸せだった頃の家族写真を見たレスター。
そこには偽りのない、本当に幸せそうなレスター・キャロリン・ジェーンの3人が写っていました。
それを見てレスターはこんなにも近くに、美しく本当の幸せがあったことを思い出したのです。
しかしそれは遅すぎました。
死ぬ直前に彼はそれを思い出す事になってしまったのでした。
まとめ
誰もが憧れる理想的な家族のように見えたレスターの家族。
しかしそこにあったのは作られた家族で偽りの自分たちでした。
色んなイメージを知らぬ間に植え付けられてしまっている私たち。
そしてそれを他人に求める私たち。
そんな私達の偽りの生活を皮肉的に描いているのが『アメリカン・ビューティー』でした。