1995年ラグビーワールドカップ。南アフリカ共和国で開催されたこの大会は南アフリカ共和国の優勝で締めくくられました。南アフリカ共和国の人にとってこの大会がどんな意味をなしていたのか。そして「赦し」で国民を導いたネルソン・マンデラ大統領。国民が一体となった瞬間は自然と涙が頬をつたっていました。
『インビクタス/負けざる者たち』作品情報
タイトル | インビクタス/負けざる者たち(Invictus) |
監督 | クリント・イーストウッド |
公開 | 2010年2月5日 |
製作国 | アメリカ/南アフリカ共和国 |
時間 | 2時間14分 |
Rotten Tomatoes
『インビクタス/負けざる者たち』あらすじ
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アパルトヘイトによる27年間もの投獄の後、黒人初の南アフリカ共和国大統領となったネルソン・マンデラは、依然として人種差別や経済格差が残っていることを痛感する。
誰もが親しめるスポーツを通して、人々を団結させられると信じたマンデラは、南アフリカのラグビーチームの立て直し図る。
マンデラの”不屈の精神”はチームを鼓舞し、団結させ、奇跡の快進撃を呼び起こす。
それは、暴力と混沌の時代に初めて黒人と白人が一体となった瞬間だった。
(出典:https://warnerbros.co.jp/home_entertainment/detail.php?title_id=2837/)
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アパルトヘイト
南アフリカ共和国はオランダからの移民やイギリスから移住した人たちによって白人が政権を握っていました。
それがアパルトヘイト政策を生み出し、白人と非白人を隔離されていたのです。
白人はイギリス系とアフリカーナと呼ばれるオランダ系移民です。
映画の中でマット・デイモンが演じていたフランソワ・ピナールはアフリカーナです。
この政策は1948年に定められ1994年まで続きます。
アパルトヘイト政策は人種を白人・カラード・アジア人・黒人の4つに分けています。
中でも南アフリカ共和国の人口の7割を占める黒人への差別はひどく、白人により土地を奪われ居住地を決められています。
黒人の起こすアパルトヘイト撤廃運動は厳しく取り締まられ、多くの黒人が逮捕されました。
ネルソン・マンデラもアパルトヘイト政策に反対したために、捕まり27年間も獄中で生活を送ることになったのです。
1980年代になるとアパルトヘイト政策への反対運動は活発となります。
この動きに対して国外でもアパルトヘイト政策への反発が強まり、南アフリカ共和国への経済制裁も行われるようになりました。
国際的な動きもあり、南アフリカ共和国政府は少しずつアパルト政策の緩和をはかります。
そして1990年ネルソン・マンデラを釈放しました。
『インビクタス/負けざる者たち』はネルソン・マンデラが釈放された日から始まります。
多くの黒人が釈放を喜び、逆に白人は恐怖を感じていたのです。
ネルソン・マンデラ
1990年に釈放されたネルソン・マンデラはアパルトヘイト政策の完全なる撤廃に向けて動き出します。
そして全人種による選挙によって1994年南アフリカ共和国の大統領に就任しました。
それと同時に南アフリカ共和国のアパルトヘイト政策に終止符がうたれたのでした。
しかし長年による暴動などから国内の治安は良くありませんでした。
しかも解放された黒人たちの白人へ対する不満も爆発寸前です。
ネルソン・マンデラは白人に対して憎しみや復讐ではなく「赦し」で接し、多くの黒人にもこれを求めたのでした。
彼は南アフリカ共和国を1つにするために、全人種が1つになることを願ったのでした。
それが映画の中でも登場した「1つのチーム 1つの祖国」でした。
だからこそネルソン・マンデラ大統領にとって、南アフリカ共和国がラグビーW杯で優勝することは絶対に不可欠なことだったのです。
そして奇跡のような出来事が起こり、1995年ラグビーワールドカップで南アフリカ共和国は優勝したのです。
奇跡を生んだ祖国の声
フィクションのようでありながら本当にあった出来事が、1995年ラグビーワールドカップでの南アフリカ共和国の優勝です。
ネルソン・マンデラにとって不可欠だった優勝が起こったのです。
良くて準決勝進出、悪いと初戦のオーストラリア戦で負けるかもと言われていた南アフリカのラグビーチーム「スプリングボクス」。
彼らが苦戦をしいられながらも勝ち続けたのは、「祖国の声」が彼らの士気を高めたからでした。
南アフリカ共和国の国歌「神よ アフリカに祝福を」。
この歌が、国民を1つにまたスプリングボクスにも大きな力を与えたのです。
スプリングボクスのキャプテンであるピナールに、士気の高め方を教えたのがネルソン・マンデラ大統領だったのです。
この試合が南アフリカ共和国にとってどれほど大切なことなのかを、マンデラ大統領もピナールも違う立場で理解しています。
何が何でも優勝するために彼らは、「神よ アフリカに祝福を」で士気を高めていったのです。
そしてピナールはチームの士気を高めるために、チームメートに国歌の歌詞を覚えさせ、試合前には大きな声で歌ったのです。
一人一人の歌声が、チームに奇跡を起こしました。
それは選手だけではなく国民全員の歌声だったのです。
インタビューでピナールが言った「優勝できたのはスタジアム全員の声援ではなく、南アフリカ共和国民4300万人の声援のおかげです」という言葉に全てが語られています。
国民の声によって奇跡が生まれ、優勝したラグビー選手を見てまた国民が1つになったのでした。
この嘘のような実話。
そこには国歌によって生まれた士気があったのです。
まとめ
単なるスポーツ映画を超えた作品『インビクタス/負けざる者たち』。
それは政治的な映画でもなく、持てる以上の力を発揮するための士気の高め方が描かれた作品でした。
国歌によって南アフリカ共和国では1つの奇跡が生まれたのです。
スポーツでなくても困難ことを成し遂げなければいけない時、それは特別なことをするのではなくて、みんなの士気を高め力以上のものを発揮する何かがあればいいのです。
それがネルソン・マンデラやスプリングボクスにとっては国歌「神よ アフリカに祝福を」だったのです。
映画のラストで国民が1つになっていく姿は、美しくとても輝いていて自然と涙が流れてきました。
スポーツの感動だけではなく、違う大きな感動も生む作品が『インビクタス/負けざる者たち』です。