インドのラジャスタン州にある小さな集落で暮らす1人の少女が、スケートボードと出会ったことで解放される物語『スケーターガール』。この映画では今も残るカースト制度による階級の違い、さらにはこの村での女性の役割が描かれます。古い習慣の1番の犠牲者である子供達。彼らの希望となったのがスケートボードでした。
『スケーターガール』作品情報
タイトル | スケーターガール(Skater Girl ) |
監督 | マンジャリ・マキジャーニ |
公開 | 2021年6月11日 |
製作国 | アメリカ/インド |
時間 | 1時間47分 |
Rotten Tomatoes
あらすじ
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インドの片田舎で育った少女がある日、スケートボードの出会う。
その世界に魅せられた彼女が、全国大会出場という夢をかなえるため、逆境に立ち向かっていく。
(出典:Netflix)
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カースト制度
ヒンズー教における身分制度カースト制度。
[box class=”yellow_box” title=””]・バラモン(司祭階級)
・クシャトリア(政治的、軍事的支配階級)
・バイシャ(庶民階級)
・シュードラ(隷属民)[/box]
の4つに分けられます。
(バラモン・クシャトリア・バイシャは上位カーストとされ、シュードラは下位カーストとされています。)
さらにその下にこの制度にも属することができないアウトカースト(不可触民)が存在します。
また職業によっても身分が分かれています。
インドでは現在カースト制度による差別は禁止されていますが、今もなお階級による差別は根強く残っているのが現実です。
特にカースト制度が根強く残っているのが「結婚」です。
違うカースト同士の結婚は、ほとんど認められていないのが現実です。
映画『スケーターガール』の主人公プレルナが暮らす、ラジャスタン州ウダイプルの小さな集落権プールでも、上位カーストと下位カーストが交わることはありません。
お互いがお互いを避けていて、まだまだカースト制度の悪しき習慣が残っていました。
さらに階級制度だけでなく、女性ということもプレルナを縛り付けます。
幼くして会ったこともない男性と結婚する習慣。
女性は勉強や仕事よりも、家事をすること子供を産むことが1番とされています。
プレルナの母親はロンドンをインドの都市の名前だと勘違いしているほどです。
学校に行って色々学びたい、外の世界をもっと知りたい、そんな想いがプレルナにはありましたが、この集落に残る古い習慣が彼女を縛り付け自由にしません。
それは将来の夢を持つことさえ奪ってしまう習慣だったのです。
自由を教えてくれた スケートボード
階級制度と女性という性別に縛られた少女プレルナ。
彼女はスケートボードと出会い始めて自由を感じます。
支配されることもルールもないスケートボード。
それは彼女が初めて感じた自由でした。
彼女はスケートボードに乗っているときにだけ、全てのものから解放され自由を感じることができたのです。
そんな彼女の自由を何度も父親は奪います。
どんなに立ち上がっても、父親はことごとくプレルナの自由を壊していきます。
それでもスケートボードを諦めることができなかったプレルナ。
彼女が初めて感じた自由は、彼女を穏やかな優しい空間で包み込んでくれました。
彼女の心を温もりでいっぱいにしてくれました。
一度解放される喜びを知ったプレルナは、さらなる解放を求めて立ち上がりま飛び立ちました。
そんなプレルナに自由を教えてくれたのは、ロンドンからやってきたジェシカです。
この映画の舞台となったケンプールには、映画のために本当にスケートパークが作られました。
全てボランティアによるものです。
撮影終了後もこの「ドルフィン・スケートパーク」は現地に残され、女性の夢を支援するために無料で使えるようになっています。
地元の子供達がスケートボードに乗って、自由を感じているのです。
ここで遊ぶ子供達にとってこのスケートパークは、プレルナにとってのジェシカのような存在なのかもしれません。
そしてまたそうであって欲しいなと思います。
まとめ
階級制度と性別によって苦しめられる幼い少女の姿を描いた作品『スケーターガール』。
今も残るカースト制度による身分の違いや、虐げられた女性の姿を知ることができます。
昔の人が決めた古い習慣によって、苦しめられ傷ついている子供達。
そんな子供達が最後に見せてくれた、たくさんの笑顔を忘れることができません。
このパークで練習した子供が世界王者になる、いつかそんな日がくることを感じさせる物語でもありました。