それぞれの愛の物語を描いたゴシック・ホラー映画『クリムゾン・ピーク』。物語の中には真紅に染まった各々の愛がいくつも描かれています。純粋な愛だけでなく利己的で独占的な愛もありますが、全てに通じるのはどれも相手を思う一途な愛なのです。そんな世界で主人公のイーディスは、愛に縛られてしまった姉弟に出会ったのです。
『クリムゾン・ピーク』作品情報
タイトル | クリムゾン・ピーク (Crimson Peak) |
監督 | ギレルモ・デル・トロ |
公開 | 2016年1月8日 |
製作国 | アメリカ/カナダ |
時間 | 1時間59分 |
Rotten Tomatoes
あらすじ
(引用:MIHOシネマ)
さまざまな愛の形
タイトルの『クリムゾン・ピーク』とは真紅の丘という意味です。
地下の赤粘土によって赤く染まる雪一面。
そんなクリムゾン・ピークの丘に建つシャープ家のお屋敷の中では、いくつもの愛が誕生していました。
それを象徴するかのように、シャープ家に伝わる指輪は真っ赤な指輪です。
弟に対する異常なまでに愛を持つ姉ルシール。
姉の愛に応えながらも、アメリカで出会ったイーディスに本当の愛を見出してしまっトーマス。
自分の本を褒めてくれ、父親が亡くなったあと献身的に支えてくれたトーマスを愛するイーディス。
そしてそんなイーディスを心配して、イギリスまで彼を追いかけたアラン。
さらにはトーマスに騙され、愛の形を怨念に変えたエレノア。
この家の中にはさまざまな形の愛があったのです。
その中には間違った愛・自分勝手な愛・相手を傷つける愛・復讐の愛など、美しい愛だけではありません。
しかしどんな愛でも相手のことを一途に想う愛なのです。
イーディスの父親がトーマスとの交際を反対したのも娘への愛。
イーディスの母親が娘を守るために幽霊となって現れたのも、全て愛からです。
いくつもの重なるさまざまな愛。
その愛の中心にいたのが、主人公イーディスだったのです。
そしてイーディスはアラデール・ホールで、色んな愛の形を知ることになるのです。
愛を知った女性の成長物語
10歳の頃に母親を亡くしたイーディスは、幽霊を信じながら大人になります。
そして彼女はそんな幽霊の思いを小説にしました。
しかし時代がら彼女は「恋愛小説を書け」と言われてしまいます。
そんな時に出会ったのはトーマス・シャープ。
自分の小説を褒めてくれる優しい男性。
イーディスはそんなトーマスに惹かれてしまいます。
何不自由することなく暮らしてきたイーディスにとって、トーマスは理想の男性に思えたのです。
そんなイーディスは愛とは美しいものだと思っています。
ルシールやトーマスの考える歪んだ愛の形など想像もしていませんでした。
しかし父を失い家を出てイギリスに渡ったイーディスは、故郷から離れた場所で様々な愛を経験します。
それはイーディスの想像とは違い、苦しく醜い愛でもありました。
それでもイーディスは自分の道を自分で選択します。
自分が小説の中で書く主人公のように、自分の未来を自分自身の決断で作り上げたのです。
彼女は苦しみ傷つきますが、最後まで諦めずに戦いました。
そして生きることを勝ち取ったのです。
それと同時に、痛みの中にある愛も知りました。
自分のために命を差し出したトーマス。
自分のために血を流したアラン。
どれも深い痛みが伴う愛でした。
そしてイーディス自身もボロボロに傷つきながらも、愛を知ることで大人へとまた1つ成長していたのです。
まとめ
美しいだけではない愛の世界を描いた物語『クリムゾン・ピーク』。
それぞれの愛がゴシック朝の世界と重なることで、より深く重いものになっていました。
汚れを知らない純粋な女性が、真紅の愛を知ることで大人の女性へと変わります。
美しく儚い蝶は、醜くも生命力の強い蛾と戦ったことで強く逞しくなったのです。