郊外の町サバービーコン。1947年に設立されたこの町は12年の間に大きく成長していました。憧れの町となったサバービーコンには、さまざまな都市から住宅を求めてたくさんの人がやってきます。たくさんの住宅が立ち並び町の安全も守られ、この町では多くの住人が幸せに暮らしていました。しかしこの町では1つだけ暗黙のルールが敷かれていたのです。
『サバービコン 仮面を被った街』作品情報
タイトル | サバービコン 仮面を被った街(Suburbicon) |
監督 | ジョージ・クルーニー |
公開 | 2018年5月4日 |
製作国 | アメリカ |
時間 | 1時間45分 |
Rotten Tomatoes
あらすじ
(引用:MIHOシネマ)
1950年代の住宅事情
1947年に設立された町サバービーコン。
最初は数軒の住宅しかありませんでしたが、12年経った1959年にはたくさんの人たちが暮らす郊外の町に様変わりしていました。
実際1950年代には郊外にたくさんの住宅が建てられ、マイホームを持つことが1つのステータスになっていました。
車は普及したことで郊外で暮らせるようになったのです。
さらに物語の中でローズが「ボルチモアは黒人で溢れたからこの町にやってきた」と言っていますが、実際にこの時代南部の田舎からたくさんの黒人が大都市に移動しました。
それを嫌がった白人達は都市を離れて郊外で暮らすようになったのです。
このような郊外に建てられる家は同じタイプの家です。
なのでこの町に暮らす人は皆同じような家に住んでいました。
さらにかよう美容院も買い物をすするショッピングモールもみんな同じです。
気がつけば街は同じような髪型をした人たちで溢れ、皆同じものを買っていました。
しかし彼らはそれを好んでいます。
同じものを所有することで団結意識が高まっていったのです。
そんな彼らの中にある暗黙のルール。
それは白人だけが住む街ということだったのです。
もちろんそれは明確に掲げてはいません。
公民権運動も盛んなこの時代、白人しか住めないと言えば明らかに人種差別になります。
しかしこの町に住む人は誰もが黒人お断りだったのです。
そんな町に引っ越してきたマイヤーズ一家。
彼らは町の人たちから嫌がらせを受けるようになってしまったのです。
心の中に潜む人種差別
まだまだ人種差別が普通だった1950年代。
特に南部ではジム・クロウ法があり白人と有色人種は色んな場所で分けられていました。
そんな南部が嫌になり、黒人達は仕事を求めて差別のない北部に向かいました。
北部では確かに白人と有色人種を分ける差別はありませんでしたが、心の奥で黒人に対して差別を行なっていた人はたくさんいました。
それがこのサバービーコンに住み人たちです。
当時彼らの黒人に対するイメージは暴力的で犯罪者というイメージです。
もちろんこれは植え付けられたイメージでしたが、多くの人がその情報を信じていたのです。
サバービーコンに住み人たちも「マイヤーズ一家は脅威だ」という理由で彼らを追い出そうとします。
「人種融合に異存はない」と言いながらも、「黒人は向上心がない」と勝手に決めつけていました。
彼らは表向きは差別してないように見せていましたが、心の中では人種差別していたのです。
実際に郊外の住宅地では黒人に住宅を販売すると、白人が家を購入しなくなるという理由で黒人への住宅販売を拒んでいました。
販売側は差別ではなく顧客のニーズに合わせているだけだと説明していましたが、明らかにどう見てもそれは差別でした。
差別のないはずの北部でもこのような人種差別が行われていたのです。
まとめ
1950年代のアメリカの郊外の住宅事情を描いた映画『サバービコン 仮面を被った街』。
物語自体はロッジ一家の保険金殺人事件の話になっていますが、彼らの家の裏に住んでいた黒人一家に起こった出来事が当時を象徴しているのです。
サバービーコンという町はフィクションの町ですが、同じような郊外の住宅は当時本当に実在しました。
そして映画と同じような差別が行われていたのです。