『シンデレラ』と言えばディズニーアニメ作品としても有名な物語ですが、ディズニー作品よりも前に日本でも「シンデレラ」を元にした物語が作られていました。
それはディズニー作品と同じようにミュージカル仕立てになっている映画『歌ふ狸御殿』で、日本の昔話も設定に取り入れられています。
ここではそんな『歌ふ狸御殿』をディズニー版『シンデレラ』と比べながら見ていきたいと思います。
『歌ふ狸御殿』作品情報
タイトル | 歌ふ狸御殿 |
監督 | 木村恵吾 |
公開 | 1942年11月5日 |
製作国 | 日本 |
時間 | 1時間25分 |
\\Amazonプライムで視聴する//
[btn class=”big rich_pink”]『歌ふ狸御殿』を見る[/btn]
歌と踊りとセリフを組み合わせた「オペレッタ映画」と呼ばれる『狸御殿』シリーズは、第1作品目が昭和14年に公開されると、その後何本もの作品が作られるほど人気シリーズとなっていきます。
『歌ふ狸御殿』はそんな『狸御殿』シリーズの第2作品目となる作品です。
『シンデレラ』ストーリー
狸が人間に化けた世界というのがシリーズの特徴ですが、『歌ふ狸御殿』の物語は「シンデレラ」が元になっています。
継母と義理の姉
・主人公のお黒は父親の泥右衛門が亡くなった後、意地悪な継母と義理の姉と一緒に暮らしている
・継母と義理の姉はお黒に雑用ばかりやらせ、彼女のことを下女のように扱っている
・心優しいお黒は母と姉のいじめに耐えながら、亡くなった父親のことを思い続けている
・優しいお黒は義理姉が切ろうとした白木蓮の木を救う
狸御殿
・狸御殿で狸のお祭りが開かれる(シンデレラでいうところの舞踏会)
・白木蓮の妖精が魔法をかけお黒はさぎり姫に変身
・暁の鐘が7つなると魔法は解けてしまう
・さぎり姫は狸御殿で狸吉郎に会い2人は恋に落ちるが、姫は鐘が鳴ると狸吉郎の元から去っていく
エンディング
・義理の姉はさぎり姫に化けて狸吉郎の前に姿を表すが、真実の鏡によって嘘がバレてしまう
・お黒は本当は自分が貧しいことを告げるが、狸吉郎は心優しいお黒に惹かれ2人は結ばれる
狸の物語
『歌ふ狸御殿』のベースは「シンデレラ」ですが、狸の設定は日本の昔話が元になっています。
かちかち山
お黒や継母達はかちかち山一家の狸で、お黒の父親泥右衛門は「かちかち山の狸」として狸の世界では名の売れた狸でした。
その泥右衛門はかちかち山でウサギのせいで火傷をおい、それが原因で亡くなってしまったようです。
泥右衛門の事件については狸界では有名な話のようで、森の音楽界に出かけた義理の姉きぬたは、別の狸一家に「私たちはウサギに騙されて背中に火傷なんかしませんよ」と馬鹿にされていました。
どうやら泥右衛門はかちかち山の悪狸として有名だったようです。
この泥右衛門の設定は、もちろん昔話「かちかち山」が元ネタです。
昔話に出てくる「かちかち山」の狸はおばあさんを殺してしまうひどい狸でしたが、その悪い狸という設定も泥右衛門の元にしています。
ただし娘のお黒は「悪い狸でも私にとってはお父さん」と父親のことを慕っていました。
ぶんぶく茶釜
【フルカラー】「日本の昔ばなし」 ぶんぶく茶釜 (eEHON コミックス)
森の音楽会できぬたを馬鹿にした別の狸一家とは、茂林寺一家でした。
馬鹿にされたきぬたは「お前の家だってぶんぶく茶釜の見せ物よ」「ぶんぶく茶釜の綱渡りの芸人だから教養がないのよ」と言い返していました。
この茂林寺一家とはもちろん昔話「ぶんぶく茶釜」が元ネタで、「ぶんぶく茶釜」に出てくるお寺は茂林寺でした。
『歌ふ狸御殿』の中では「かちかち山の狸」と「ぶんぶく茶釜の狸」は仲が悪いということになっていました。
まとめ
童話「シンデレラ」のお話をベースに、日本の昔話に出てくる狸をプラスした映画『歌ふ狸御殿』。
昭和17年に公開された作品ですが、知っているお話がたくさん出てきて、今見ても充分に楽しめる内容です。
また狸が人間に化ける様子や音を奏でる階段など、歌や踊りだけでない演出も見応えがあります。
お話の最後に出てくる「女らしさ」だけは今の時代にマッチしませんが、戦前の作品なのでそこだけは目をつぶってください。
それ以外は本当に面白く思わず笑ってしまう展開も用意されている映画です。