1971年に公開された『ベニスに死す』で世界で一番美しい少年として有名になったビョルン・アンドレセンでしたが、その後彼の姿を映画で見かけることは少なくなっていきます。
しかし2019年に公開された『ミッドサマー』に出演したことで、久しぶりにその名前がメディアで取り上げられることになりました。
『ベニスに死す』以降、一体彼に何があったのか?
その答えを知ることができる、2021年に公開されたドキュメンタリー映画『世界で一番美しい少年』を紹介します。
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『世界で一番美しい少年』作品情報
タイトル | 世界で一番美しい少年(Varldens vackraste pojke) |
監督 | クリスティーナ・リンドストロム/クリスティアン・ペトリ |
公開 | 2021年12月17日 |
製作国 | スウェーデン |
時間 | 1時間33分 |
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1971年に公開されたルキノ・ヴィスコンティ監督の『ベニスに死す』に15歳で出演したビョルン・アンドレセン。
監督から「世界で一番美しい少年」と言われたビョルンは、映画公開後には世界中で有名になり彼の人生は瞬く間に変わってしまいました。
どこに行っても「美しい少年」と呼ばれマスコミに追われ、さらにはその美しさから性的な目で見られることも多かった15歳の少年は、孤独から傷つき心を閉ざすようになります。
そんなビョルンの人生を追ったドキュメンタリー作品が『世界で一番美しい少年』です。
人生を変えた映画『ベニスに死す』
タイトル | ベニスに死す(Morte a Venezia ) |
監督 | ルキノ・ヴィスコンティ |
公開 | 1971年10月23日 |
製作国 | イタリア/フランス/アメリカ |
時間 | 2時間10分 |
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「純粋な美」を求める芸術家があるとき美しい少年と出会い彼の美しさに惹かれていく物語『ベニスに死す』で、ルキノ・ヴィスコンティ監督は「純粋な愛」を描こうとしました。
そのため監督自身が物語に出てくる芸術家のように、美しい少年を求め色んな国でオーデイションを行います。
そんなヴィスコンティに「世界で一番美しい少年」と言わせたのが、15歳の少年ビョルン・アンドレセンで彼は『ベニスに死す』でタジオを演じることになります。
しかしこれがビョルンにとっては人生の転換期となっていきます。
オーディションに時に監督に「上半身裸になって」と言われ、戸惑いながらも洋服を脱ぐビョルンは不安な顔をしています。
ゲイであることを公表していたヴィスコンティ監督は映画の撮影中はある意味ビョルンを守っていましたが、映画が公開されると彼の環境は変わっていきました。
プレミア上映の夜、彼が連れて行かれたのはゲイクラブでそこで彼は大人たちから性的な眼差しで注目を浴びることになります。
それは15歳の少年にとっては恐ろしく忘れることのできない経験でした。
また映画のヒットにより世界中で「世界で一番美しい少年」と呼ばれるようになり、マスコミに追われ嵐に巻き込まれたような生活を送ることになってしまいました。
幼い頃に母が家を出ていきビョルンは祖母に育てられますが、祖母は彼を商売道具として徹底的に働かせました。
ちなみにビョルンは映画公開時に日本にも来ていて、映画の宣伝だけでなくCM撮影やレコードデビューなど多忙な日々を過ごしています。
わずが10代半ばで大人によって徹底的に搾取されたビョルンは、その後も性的象徴としてマスコットのように連れ回されることになります。
元々繊細だった少年は孤独を感じ傷つき、やがて心を閉ざすようになってしまいました。
そして表舞台から姿を消したのです。
『ミッドサマー』までの道のり
ビョルンには子供の頃母親が失踪しその後遺体となって発見されたという経験があり、また彼は自分の父親を知りません。
過酷な幼少期を過ごしたビョルンはさらに『ベニスに死す』で大人たちに搾取され、楽しい子供時代も失います。
彼の環境は信頼できる大人がいない状態で、孤独で深く傷ついた少年は表舞台から姿を消しました。
その後はテレビドラマに出演したりしながら生活し、結婚し2人の子供にも恵まれています。
心の傷は完全に癒やされていませんでしたが、父親となったことで新しい人生を歩み始めようとしていました。
しかしそこにさらなる不幸がビョルンを襲います。
酔っ払って泥酔していた彼の横で生後8ヶ月の息子が亡くなってしまったのです。
医者は乳幼児の突発死と診断しましたが、ビョルン自身は横にいながらもお酒のせいで息子の異変に気づけなかった自分を責めました。
そしてますますお酒に溺れ鬱状態になっていったのです。
あまりにも多くのものを失った彼は「人生には期待しない」と言います。
そんなビョルンが2019年アリ・アスター監督の『ミッドサマー』に出演し、久々に世界中の人の前に姿を見せてくれました。
彼はスウェーデンのコミュニティの中で、自分の命を全うし自らの命を与える老人を演じています。
ただでさえ衝撃的なシーンですが、ビョルンが歩んできた人生をこの老人に重ねると重く深みのあるシーンになり、色んなことを考えさせれられてしまいます。
世界で一番美しかった少年が背負わされたすべてのもの、それが『ミッドサマー』に出てくるあの老人の顔に刻まれた皺や表情1つ1つに出ているようなそんな思いを抱きました。
まとめ
ドキュメンタリー『世界で一番美しい少年』を見ると、『ベニスに死す』と『ミッドサマー』が今までとは違う作品に見えてくるはずです。
どちらの作品もある意味世界に衝撃を与えた作品ですが、ビョルン・アンドレセンが演じている役に彼の人生が重なります。
ぜひこの機会に、今回取り上げた3本の映画でビョルン・アンドレセンの人生に触れてみてください。