世界に影響を与えたフランスで起こったヌーヴェルヴァーグ。これは1950年代後半に起こった映画の革命のことですが、映画『ドリーマーズ』ではヌーヴェルヴァーグ作品のように、大人達や政府に反抗する3人の若者の姿を描いています。ここでは映画の中に登場する数々の映画を紹介したいと思います。
『ドリーマーズ』作品情報
タイトル | ドリーマーズ(The Dreamers) |
監督 | ベルナルド・ベルトルッチ |
公開 | 2004年7月31日 |
製作国 | イギリス/フランス/イタリア |
時間 | 1時間55分 |
Rotten Tomatoes
あらすじ
(引用:MIHOシネマ)
ランログワ事件
アメリカからパリに留学してきた主人公のマシュー。
彼はこの地で映画の魅力に取り憑かれてしまいます。
そんなマシューが映画を見ていたのが、シネマテーク・フランセーズです。
映画の保存や修復や配給を目的とした建てられたこの施設では、新旧の映画を問わず色んなジャンルの映画が公開されました。
映画の中で語られているように、ここはのちにヌーヴェルヴァーグと呼ばれる作品を撮り続ける監督達が、たくさんの映画を見て勉強した場所でもありました。
この施設を創設したのは、アンリ・ラグロワでした。
彼は古い映画のフィルムを集めていましたが、多くの人に古い映画を知ってもらおうとしてこの施設を創立しました。
しかし1968年2月、シネマテーク・フランセーズに財政援助していた政府は、ラグロワを追放してしまいます。
これが映画の中で描かれているラグロワ事件です。
このことにより多くの人たちが政府への抵抗運動を始めます。
それは映画付きだけではなく、世界の映画監督や俳優もラグロワの追放に声を上げました。
その声が届き4月にはラグロワはシネマテーク・フランセーズに復帰します。
これでラグロワ事件は終わりを迎えますが、この頃世界中で若者達の反乱が起きていました。
大人や政府への抵抗を示す運動、その流れはパリでも起こりつつありました。
この後、1968年5月には5月革命と呼ばれる運動が起きます。
これは映画のラストで主人公達が参加した運動です。
政府への抵抗を示し自由を求める若者達。
映画の中でも語られているようにベトナム戦争への反対など、今までの枠組みから脱出しようと多くの若者達が立ち上がった時代でもありました。
映画『ドリーマーズ』に登場する3人の若者もそんな時代を生きた人物なのです。
1930年代の映画
シネマテーク・フランセーズで上映されていた1930年代の映画。
この頃の映画をヌーヴェルヴァーグの監督達はたくさん見ていましたが、『ドリーマーズ』に登場する3人も同じです。
イザベルがマシューの前で見せた映画ワンシーン。
それは『クリスチナ女王』(1933年)。
マシューとテオがキートンとチャップリンについて熱く討論するシーンでは、『キートンのカメラマン』(1928年)と『街の灯』(1931年)が映ります。
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さらにタップダンスで人をイラつかせる映画では『トップ・ハット』(1935年)。
イザベルとテオがマシューを自分たちの仲間として認めた時に映ったのは『フリークス』(1932年)。
イザベルがテオの前で真似した映画は『ブロンド・ヴィナス』(1932年)。
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テオがマシューやイザベルの前で真似した映画は『暗黒街の顔役』(1932年)。
これらの映画はこの時代の若者達に多大な影響を与えたのです。
のちに映画界におけるニューウェーブを起こすヌーヴェルヴァーグの監督達は、このような映画をたくさん見て勉強していました。
また同じように映画好きのマシュー達もこれらの作品にたくさんの影響を受けていたのです。
そしてそれがやがて若者達の心を突き動かすことにつながっていくのです。
若者に影響を与えた映画
映画好きのマシュー達は、ヌーヴェルヴァーグの作品にもたくさん影響を受けています。
それは若者文化の始まりで、1950年代〜1960年代の映画です。
パリにやってきたマシューがシネマテーク・フランセーズで見て、映画にはまるきっかけとなったのは『ショック集団』(1963年)。
初めてマシューがイザベルとテオに会った帰り道、イザベルは『勝手にしやがれ』(1960年)の台詞を真似します。
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また3人は『はなればなれに』(1964年)を真似してルーブル美術館の中を映画よりも速く駆け抜けました。
マシューとイザベルがデートで見た映画は『女はそれを我慢できない』(1956年)。
そしてラストの方で両親に自分たちの関係が見つかり、自ら命を絶とうとしたイザベルの行動には映画『少女ムシェット』(1967年)のシーンが重なります。
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彼らは今でも語り継がれる名作の影響をたくさん受けていたのです。
そしてそれは自分の世界に閉じこもっていたイザベル達を外の世界に連れ出すことににもなります。
大人達や政府へ反抗心はあるが、行動には起こせずにいたイザベルとテオ。
彼らは若者文化を描いた作品をたくさん見ながらも、自分達の世界を作り上げその閉鎖的な空間で生活していました。
しかし5月革命によって外に出ることになったイザベル達。
彼らこの時影響を受けた映画のように、自分たちの世界から飛び出て自分の思いをぶつけたのです。
一方、マシューは戦争から逃げ暴力に反対する若者でした。
彼もまたイザベル達と社会から遮断された世界で生活しますが、外に出た時2人とは違う道を選びます。
彼は暴力ではない道で、大人へ抵抗することを選んだのでした。
まとめ
カウンターカルチャー時代に若者に影響を与えた数々の名作。
映画『ドリーマーズ』にはそんな映画がたくさん登場します。
若者達は抵抗し始めた1960年代。
映画『ドリーマーズ』を見るとそんな若者達に影響を与えた映画を知ることができると同時に、彼らがどんな時代を生きたかを知ることができます。