暗い画面に降りしきる雨、そして私立探偵。まさしくハードボイルドな探偵映画、それが『誘拐の掟』です。心に傷を抱えその傷と向き合いながら事件を解決していく探偵スカダー。自分の感情を表に出さないスカダーでしたが、そんなスカダーの心に入り込んだ相棒TJ。彼もまた傷を負った少年でした。
『誘拐の掟』作品情報
タイトル | 誘拐の掟(A Walk Among the Tombstones) |
監督 | スコット・フランク |
公開 | 2015年5月30日 |
製作国 | アメリカ |
時間 | 1時間54分 |
Rotten Tomatoes
あらすじ
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ニューヨーク市警の元刑事である無免許の私立探偵マット・スカダーのもとに、不吉な依頼が舞い込んできた。
裕福なドラッグ・ディーラーの美しき妻が何者かに誘拐され、40万ドルの身代金を奪われたうえに、惨たらしい手口で惨殺されたのだ。
スカダーの丹念な調査の結果、正体不明の二人組の犯人は警察に通報できない麻薬関係者の身内ばかりを狙い、血も涙もない凶行を繰り返していることが明らかになる。
やがて快楽殺人鬼でもある犯人たちは、新たな獲物として愛くるしい14歳の美少女の拉致を実行。その交渉役を任されたスカダーは、刑事時代に犯した過ちの赦しを求めるかのように、常軌を逸した誘拐魔たちに敢然と立ち向かっていくのだった……。
(出典:http://yukai-movie.com/#story)
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ハードボイルド
ハードボイルドとは、感情に流されず非情でタフな精神力を持った主人公が登場する小説のジャンルです。
ハードボイルド作品には推理小説や私立探偵小説がたくさんあります。
今回の映画『誘拐の掟』はそんなハードボイルドな世界を描いた物語でした。
笑うことのない主人公のスカダー、暗い場面の連続そして雨。
これは映画のジャンルであるフィルム・ノワールでもあります。
主人公の周囲に女性が登場しない点が、フィルム・ノワールとは違いますが描かれる雰囲気はノワールそのものでした。
しかも映画の中でスカダーの相棒になりたいと願う少年TJ。
彼は「サム・スペード」や「フィリップ・マーロウ」という言葉を口にします。
どちらもハードボイルド探偵小説に登場する私立探偵の名前です。
この時点で『誘拐の掟』の描かれる世界観が示されていました。
そしてその通りにスカダーは淡々と事件解決に向けて動き出すのです。
彼は依頼主にも犯人に対しても自分の感情は見せません。
ただ事件解決、人質救出にだけを考えて突き進みます。
そんなスカダーの人間らしい一面を見ることができるのは、少年TJに対する想いです。
心に深い傷を負うスカダー。
病気を抱えるTJ。
スカダーはそんなTJをほっておくことができなかったのでした。
12のステップ
[box class=”pink_box” title=””]1.自分は無力で人生が辛いと認めること
2.自分を超えた力が健康な心に戻してくれる
3.自分の意志と生き方を自分なりの神に委ねることと
4.自分自身を恐れずに見つめること
5.自分の過ちの本質を神・自分・第三者に対して認めること
6.性格上の欠点を神に取り除いてもらうこと
7.短所を正してくださいと神の求めること
8.傷つけた人の一覧を作り埋め合わせをすること
9.直接埋め合わせすること
10. 自分自身を見つめ続け間違った時はすぐ認めること
11.祈りと黙想を通じ自分なりの神との触れ合いを深め神の意志を知り実践する力を求めること
12.これらのステップを経て霊的に目覚めメッセージを伝え原理を実行すべく努める[/box]
これはアルコール依存症の会で述べられるスピーチ。
実際にアルコール依存症の会で使われている回復のためにステップです。
この言葉を思い出しながら犯人の元に向かったスカダー。
彼は8年前に起こした罪と向き合うべく、この12ステップを行なっていました。
自分の犯してしまった罪を認め、それと向き合い、そしてそれを埋め合わせるために彼は犯人の元に向かいました。
心に負ってしまったトラウマを克服できずにいたスカダー。
彼は事件を解決しながらその傷と向き合うことができたのです。
そしてそれはTJの純粋さがあったおかげかもしれません。
まとめ
ハードボイルドな探偵映画『誘拐の掟』。
主人公の私立探偵スカダーの心の傷の深さが、画面の暗さや雨によって描かれていました。
そんな主人公の心の傷を癒す存在が、難病を抱える少年TJだったのかもしれません。