トマス・ハリスの有名小説『レッド・ドラゴン』を映画にした『刑事グラハム/凍りついた欲望』(『レッド・ドラゴン/レクター博士の沈黙』)。一度FBIをやめたウィルが、再び連続殺人犯を追いかけることになります。事件を捜査するうちに、犯人のように凶暴になっていくウィル。彼の捜査は命懸けの捜査でもあったのです。
『刑事グラハム/凍りついた欲望』作品情報
タイトル | 刑事グラハム/凍りついた欲望(レッド・ドラゴン/レクター博士の沈黙)(Manhunter) |
監督 | マイケル・マン |
公開 | 1988年10月15日 |
製作国 | アメリカ |
時間 | 2時間 |
Rotten Tomatoes
あらすじ
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サイコキラーの心理に、自らのそれをシンクロさせて事件を解決するFBI捜査官ウイル・グラハム。
その捜査方法は、自己を崩壊させかねない危険なものだった。
家族とマイアミで静かに暮らす彼に、FBIから出動要請が。
普通の捜査官の手に負えないシリアルキラーが現れたのだ。
(出典:https://www.allcinema.net/cinema/6802)
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FBI捜査官ウィル・グレアム
精神科医で連続殺人事件の犯人だったハンニバル・レクターを捕まえたウィル。
彼はその時に肉体だけでなく、精神的にも傷を追ってしまいFBI捜査官を辞めました。
ハンニバルと対峙したことで、ウィルはハンニバルの邪悪な考えに取り憑かれてしまったのです。
そしたやがて家族とも話さなくなり、自分のからに閉じこもるようになります。
そんなウィルを心配した友人の博士が彼を精神病院に入れたことで、ウィルはなんとか正気を取り戻すことができたのです。
しかしそれと同時にFBI捜査官を辞めました。
そして家族と楽しく暮らしていたウィルでしたが、彼は再び現場に戻ることに。
妻をはじめ彼を病院に入れた博士もウィルを心配しますが、やがてウィルは犯人のように凶暴さを見せるようになっていきます。
ウィルがおかしくなるきっかけとなったハンニバルは、ウィルに「君は私と同類だ」と言います。
その言葉を聞いてウィルは慌てて逃げ出します。
ハンニバルの言う同類とは、人を殺した時に快感を覚えるということです。
ウィルは以前殺人犯を殺しています。
その時ウィルは快感を感じたことを、ハンニバルは知っていたのです。
そしてそれは連続殺人犯であるハンニバルも同じだったのです。
そのことを指摘され怖くなってしまったウィル。
彼は新たな事件の犯人を追いかけるうちに、再び邪悪な考えに取り憑かれそうになってしまいます。
しかし彼は犯人を撃ち殺すことで、自分の中に邪悪さを消し去りました。
そして彼を待つ家族のもとに戻っていったのでした。
原作『レッド・ドラゴン』との違い
映画『刑事グラハム/凍りついた欲望』の原作は、1981年にトマス・ハリスによって出版された小説『レッド・ドラゴン』です。
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原作小説通りの物語ですが、映画の主人公はあくまでウィル・グレアムでです。
彼が殺人犯ダラハイドを追いかける物語になっています。
なので日本語タイトルは『刑事グラハム/凍りついた欲望』となっています。
(ちなみのこちらの邦題は、DVDとして発売される時にタイトルを『レッド・ドラゴン/レクター博士の沈黙』と変えていますが、物語的には映画公開時のタイトルの方があっているような気がします。)
原題も『Manhunter』でレッド・ドラゴンではないことが示すように、映画の中であまりレッド・ドラゴンは重要視されていません。
あくまでウィルが犯人を逮捕するまでの物語です。
その中で、原作と映画の1番大きな違いはラストです。
この違いが原作と映画の違いを大きく物語っています。
原作はレッド・ドラゴンに取り憑かれる犯人とそれを追いかけるウィルの物語で、さらにハンニバルがそこに加わり犯人を利用してウィルを追い詰めます。
一方映画はウィルが殺人犯を追いかける物語、そこまで深くハンニバルは関係してきません。
映画版のラストは、きっちり事件が解決して物語が終わるようになっています。
原作のラストは、赤き竜になり偉大な力を手に入れたい犯人が、ハンニバルに認めてもらうためにウィルに近づきます。
不思議な力でハンニバルと犯人は結びつき、ウィルに襲いかかるのです。
結末に大きな違いのある原作と映画『刑事グラハム/凍りついた欲望』。
その違いが二つの作品にジャンルの違いを表しているのです。
まとめ
ハンニバル・レクターではなく彼を捕まえたウィル・グレアムに焦点を当てた『刑事グラハム/凍りついた欲望』。
犯人に共感し邪悪な考えに取り憑かれそうになる、ウィルの葛藤が描かれてもいました。
苦しみながら捜査を進めたウィルは最後は自分の力で犯人を倒し邪悪な考え、自分自身の中にある闇も消し去ったのです。