映画『名もなき生涯』第二次世界大戦中のオーストリア 信念を貫き最後まで抵抗した真実


1938年ドイツ軍によるウィーンへの侵攻によりドイツと合併したオーストリア。その時代にオーストリアのザンクト・ラデグントで農夫として生活していたのが『名もなき生涯』の主人公フランツです。信仰を信じ最後までドイツ軍に屈することなく抵抗し続けたフランツ。ここでは良心的兵役拒否者フランツの人生を振り返ってみたいと思います。

『名もなき生涯』作品情報

タイトル 名もなき生涯(A Hidden Life)
監督 テレンス・マリック
公開 2020年2月21日
製作国 アメリカ/ドイツ
時間 2時間54分

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あらすじ

第2次世界大戦下のオーストリア。

山と谷に囲まれた美しい村で、妻フランチスカと3人の娘と暮らしていたフランツは、激化する戦争へと狩り出されるが、ヒトラーへの忠誠を拒んだことで収監される。

裁判を待つフランツをフランチスカは手紙で励ますが、彼女自身もまた、裏切り者の妻として村人たちから酷い仕打ちを受けていた。

(出典:https://eiga.com/movie/91140/)

ドイツのオーストリア合併

1938年3月ドイツ軍はウィーンに侵攻し、オーストリアを合併しました。
オーストリア出身のヒトラーにとってオーストリアには複雑な思いがあったようで、ウィーンに侵攻を進めました。

当時のオーストリアの首相シュシュニックはウィーンが進行される前、ドイツとの合併には反対していました。
そのためドイツ軍はウィーンへ軍を送ることになったのです。

その頃オーストリアの人の中にはドイツとの合併に賛成だった人もたくさんいたようです。
『名もなき生涯』の中でもその様子は描かれていました。

しかし徴兵されドイツ軍の実態を見てきたフランツはどうしてもドイツが行っていることに賛成できなかったのです。
その行為は自分の信仰とは真逆の行いだったからです。

実際にフランツのいたザンクト・ラデグントでもドイツとの合併に対する投票が行われています。
この時フランツ以外は合併に賛成だったと言われています。

これが映画の中でも描かれているように、フランツ家族への激しい差別へと繋がったのです。
それでも自分の信仰を信じ家族を守りながら暮らしていたフランツでしたが、ついに1943年3月に徴兵されることになったのでした。

第二次世界大戦中のカトリック教会

『名もなき生涯』の主人公フランツは、敬虔なカトリック教徒でした。
映画の中でも少しだけ描かれていましたが、元々はやんちゃだったフランツ。
しかし彼は妻と出会ったことで人生を改めました。

その妻の影響で聖書を読み教会に通うようになって熱心な信者となって行ったのです。
そして神の教えとドイツの行いは相反するものだと感じ、彼は忠誠を誓わずに抵抗を続けました。

しかし当時のカトリック教会はナチスと政教条約を結び、ドイツの行動を承認しました。
もともとドイツはプロテスタントの国だったため、ヒトラーはドイツ国内のカトリック教徒の自由をかなり制限していました。

フランツを説得しようとする司教が言うようにオーストリアのカトリック教会はドイツを「神に任命された組織」と考えました。
そして祖国のためにも忠誠を誓うようフランツ言いました。

バチカンはドイツの行動を承認し、オーストリアのカトリック教会もドイツの体制を重んじていましたが実際はヒトラーはカトリックをかなり嫌っていたようです。
映画の中で「反キリスト」という言葉が何度も出てきますが、実際は反カトリックだったようです。

それでもフランツは神を信じ、最後まで信仰を捨てませんでした。
それは妻のファニも同じでした。

『名もなき生涯』は実話です。
フランツとファニの手紙が元になって映画化されたのです。

そしてこの手紙によってフランツは2007年カトリック教会に殉教者として認められることにもなったのでした。

まとめ

最後まで信仰を捨てずに神を信じた男フランツ。
彼の人生を描いた『名もなき生涯』では、彼の信仰の強さがまっすぐに伝わってきます。

どんな時も神を信じ続けたフランツ。
この時代そのために命を落とした人は大勢いたのでしょう。

宗教という自由さえ奪ってしまったナチス。
それはフランツ達にとっては神が与えた苦しい教えだったのかもしれませんが、それでも最後までフランツは屈することなく人生を終えました。

『名もなき生涯』という映画に出会えたことで、フランツのように生きた人のことを知ることができました。