映画『アパートの鍵貸します』で見る1959年のニューヨークの社会


1959年のニューヨークを舞台にした『アパートの鍵貸します』。人口が増え大企業の高層ビルが立ち並ぶ中で生活する人たちを描いた物語になっていました。当時人気だったエンターテイメントや当時の政治情勢を交えながら、急激に成長するニューヨークを描いたのが『アパートの鍵貸します』です。

『アパートの鍵貸します』作品情報


アパートの鍵貸します [Blu-ray]

タイトル アパートの鍵貸します(The Apartment)
監督 ビリー・ワイルダー
公開 1960年10月8日
製作国 アメリカ
時間 2時間5分

Rotten Tomatoes

あらすじ

出世の足掛かりにと、上役の情事のためにせっせと自分のアパートを貸している会社員バド。

だが、人事部長のシェルドレイクが連れ込んで来たエレベーターガールのフランは、バドの意中の人だった……。

(出典:https://www.allcinema.net/cinema/1045)

アカデミー賞受賞
・作品賞
・監督賞:ビリー・ワイルダー
・脚本賞
・美術賞
・編集賞

1950年代のニューヨーク

戦後急激に発展した都市ニューヨーク。
第二次世界大戦によって世界で多くの大都市が傷を受ける中、ニューヨークは戦争の痛手を受けることがありませんでした。

都市開発が進み経済や文化の中心となっていくニューヨークには、戦後多くの人が集まりました。
高層ビルの建設ラッシュも進みどんどんニューヨークは大きな都市となっていきます。

そんな1959年のニューヨークを舞台にした『アパートの鍵貸します』。
映画は「1959年11月1日現在、ニューヨークの人口は804万2783人です」という説明から始まります。

主人公のバクスターが務める保険会社は従業員が31,259人もいる大企業です。
エレベーターが混み合うことを避けるためにフロアーごとに出勤時間が違うほどです。

広いオフィッスの中にはたくさんのデスクが並び、多くの人が行き交っています。
その中で黙々と働く従業員の様子は、当時のニューヨクの会社員たちの現状が描かれていました。

時間に管理されてそんなかでただ黙々と仕事に打ち込む従業員。
彼らの働きがニューヨークの経済を発展させたのですが、その姿はどこか寂しく見えてしまいます。

映画の中でフランが言った「利用される人は、嫌でも断れない」という言葉は、バクスターやフランの事を指していますが、それ以外にもオフィッスの中で働く社員のことも刺しているように感じます。

そして彼らを利用するのが部長のシェルドレイクです。
彼はビルの27階に部屋があり、明らかに19階で仕事をするバクスターとの違いを感じさせます。

オフィッスビルの階数を明らかにしていたのは、回数による格差を伝えるためだと思いました。
そして上に行けば行くほど下の階の社員を利用する人になるのです。

目覚ましい発展を遂げるニューヨークの中の、現実を見せていたのが『アパートの鍵貸します』の中のオフィッスシーンでした。

1959年の文化

『アパートの鍵貸します』の中では当時のエンターテイメントをいくつも紹介していました。

バックスがテレビで見ようとしていた映画は『グランド・ホテル』で、なかなか始まらない番組にイラつきながらチャンネルを変えると『駅馬車』やドラマの『拳銃無宿』が放送されていました。

また保険会社で働く女性は「『アンタッチャブル』の日」と言っています。
これは1959年から放送が開始されたドラマのことで、40%という視聴率をマークした大人気番組でした。

さらにバクスターがフランを誘った舞台は『ザ・ミュージック・マン』で、1957年にブロードウェイで初公演し、トニー賞で5部門受賞した作品です。
バクスター達が見たくても見れない人気のミュージカルのチケットでしたが、それを部長は持っていてバクスターの家の鍵と交換したのでした。

利用される人と利用する人という差はありながらも、当時のエンターテイメントを通して発展を続けるニューヨークの中で娯楽を楽しむ人たちの様子が描き出されていました。

まとめ

1959年のニューヨークが舞台の『アパートの鍵貸します』。
映画の中では経済発展を遂げるニューヨクの中で働く人たちの様子が映し出されています。

みんな幸せそうに生活を送っていますが「利用される人と利用する人」に分かれている社会を、ビリー・ワイルダー監督はコメディとして描いていました。

それと同時にこの映画の中に登場する人たちは、当時のエンターテイメントを楽しむことができる余裕のある人だった事が分かる作品にもなっています。