『アトミック・ブロンド』の舞台は1989年。冷戦終結間際のベルリンを舞台に各国のスパイの壮絶な戦いが描かれていました。『アトミック・ブロンド』ではベルリンの壁が壊される時代を見ながら当時の流行を感じる事ができます。そしてラストには驚きの展開が待っていました。
『アトミック・ブロンド』作品情報
アトミック・ブロンド スペシャル・プライス [Blu-ray]
タイトル | アトミック・ブロンド(Atomic Blonde) |
監督 | デヴィッド・リーチ |
公開 | 2017年10月20日 |
製作国 | アメリカ |
時間 | 1時間55分 |
Rotten Tomatoes
あらすじ
[aside type=”normal”]
冷戦末期の1989年。
英国秘密情報部“MI6”の凄腕エージェント、ローレン・ブロートンは、何者かに奪われた極秘リストの奪還と、二重スパイ“サッチェル”の正体を突き止めよという密命を帯びベルリンに降り立つ。
早速現地で活動するスパイ、デヴィッド・パーシヴァルと合流するが、彼女の行動は敵側に筒抜けとなっていた。
誰が敵か味方かまるで分からない状況の中、次々と襲いかかる殺し屋たちを、強靱な肉体と圧倒的戦闘スキルでなぎ倒していくローレンだったが…。
(出典:https://www.allcinema.net/cinema/361036)
[/aside]
ベルリンの壁崩壊
『アトミック・ブロンド』の舞台は1989年の11月。
冒頭の字幕で説明されるように、1989年11月にベルリンの壁は崩壊し東西の冷戦は終わりました。
そんなベルリンの壁の崩壊間近のベルリンを舞台に各国のスパイがスパイ情報を巡って激しい戦いを繰り広げるのです。
戦後東西に分断されたドイツ。
東側はのドイツ民主共和国はソ連の援助を受けて社会主義国となっていきます。
一方で西側はアメリカをはじめとする西側諸国の援助により資本主義となります。そして1961年にベルリンの壁が建設され、ドイツの東西を自由に行き交うことができなくなってしまいました。
しかし東ドイツでは経済はなかなか発展せず、国民は苦しい生活を余儀無くされてしまいます。
しかし壁の向こう西ドイツは経済大国として発展を続けています。
西ドイツの優雅な暮らしを見た東ドイツ国民は次第に不満がたまり始めます。
自由のない自分たちと違い自由に暮らしている壁の向こうの西ドイツ国民達。
次第に東ドイツ国民は民主化を求めてデモを行うようになりました。
そのデモの様子は『アトミック・ブロンド』の中でも何度も描かれています。
市民のデモに対して警察は力でデモを抑えようとします。
これがさらに東ドイツ国民の怒りをかってしまいました。
映画の中のニュースでもあるように東ドイツからチェコなどに逃げ出した難民も大勢いました。
オーストリアやハンガリーなど西ドイツ大使館に東ドイツからの難民が西ドイツのパスポートを求めて溢れかえる状況が続いていました。
もはやベルリンの壁の意味がなくなりつつあることを知った東ドイツ側は1989年11月9日に「旅行許可の規制緩和」を発表します。
すると東側からも西側からも壁の検問所に多くの市民が集まり始めその数は数万にも及びます。
集まった大勢の人により混乱した検問所はゲートを解放します。
これがベルリンの壁崩壊の始まりでした。
喜ぶベルリン市民達。
ハンマーなどを持ってきた市民達は壁を壊し始めたのです。
そしてそれは冷戦の終わりを意味するものでもありました。
各国のスパイ
『アトミック・ブロンド』には4つの国のスパイが登場します。
まず主人公のロレーン・ブロートンはイギリスのMI6の諜報員です。
1番最初に殺されてしまったガスコイやベルリンにいたパーシヴァルもMI6の諜報員です。
それに対してソ連側がKGBになります。
スパイの情報が載っているリストを盗んだのはKGBの一員でしたが、ソ連側にはリストを渡していませんでした。
パーシヴァルがロレーン・ブロートンを殺そうとして情報を流したの相手はKGBです。
ロレーン・ブロートンがベルリンで起きたことを上司に報告するときに一緒にいたのはアメリカのCIAの人間でした。
さらにロレーン・ブロートンに接触してきたのがフランスのDGSEの女性でした。
MI6やKGBやCIAは映画などでよく耳にしますが、フランスの情報機関の名前を始めて聞いた人もいたかもしれません。
リストには全世界で活動するスパイの情報は載っています。
どこの国も欲しい情報ですし、西側諸国はどうしてもソ連に渡したくない情報でもありました。
核爆弾に匹敵するほどの情報を巡って各国の諜報員達は命をかけた激しい戦いを繰り広げるのでした。
ここからネタバレ:二重スパイの正体
ロレーン・ブロートンの仕事はリストの回収とともに、MI6にいる二重スパイを見つけ出すことでした。
しかしそれはロレーン・ブロートンだけでなく、パーシヴァルも同じミッションを行っています。
果たして誰が二重スパイなのか?
パーシヴァルなのかローレンなのか?
先にリストを手に入れたパーシヴァルは、誰が二重スパイなのかに気がつきました。
二重スパイはロレーン・ブロートンだったのです。
彼女はMI6とKGBのスパイでした。
パーシヴァルははそれに気がつきますが、ロレーンにより処分されてしまいパーシヴァルが二重スパイということにされてしまいます。
MI6の上の人間は二重スパイが誰なのか知らないので、ロレーンの話を信じるしかないようです。
物語はパーシヴァルが怪しいように描かれていましたが、一箇所だけローレンが怪しいシーンがありました。
それはローレンが東側に入ったときです。
彼女を追いかけてやってきたKGBのメンバー。
彼女と映画館の中で激しい戦いを繰り広げますが、KGBの男性は「正気か?話すだけなのに」とローレンに向かって言ってました。
ローレンのことをKGBの一員だとしていたから話をしようとしていたのかもしれません。
ちなみにこのとき映画館で上映されていたのはタルコフスキー監督の『ストーカー』でした。
二重スパイの正体がわかりこれで物語は終わりかと思いましたが、ラストの驚きの展開が待っていました。
ロレーンは二重ではなく三重のスパイだったのです。
彼女はCIAのメンバーだったのです。
結局スパイの情報が載ったリストはCIAが手にすることになりました。
そしてローレンは故郷に帰っていったのでした。
きっとこの展開には多くの人が驚いたはずです。
まさかCIAのメンバーだったとは思いませんでした。
まとめ
歴史的な出来事となったベルリンの壁を舞台に起きたスパイの戦い。
『アトミック・ブロンド』では激しいスパイの戦いの中に、当時の東ドイツの状況が描かれていて東ドイツの経済の停滞と市民の不満を知ることができました。
さらに冷戦時代だったからこそ1つの情報を巡って4つの国の諜報員たちが動くことになった緊迫感も伝わってきました。
ローレンを演じたシャーリーズ・セロンの激しいアクションとともに、冷戦終結の様子を見ることができるのが『アトミック・ブロンド』です。