1930年代のジョージアを舞台にして映画『タバコ・ロード』。西部劇の神様ジョン・フォードの作品です。西部劇以外も多くの作品を手がけていた彼が描いた大恐慌時代のまじしい農民の暮らし。その悲惨さは喜劇で描くことしかできないくらい辛く悲しい生活だったのです。
『タバコ・ロード』作品情報
タイトル | タバコ・ロード(Tobacco Road) |
監督 | ジョン・フォード |
公開 | 1941年2月20日(日本:1988年2月27日) |
製作国 | アメリカ |
時間 | 1時間24分 |
Rotten Tomatoes
あらすじ
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1930年初めのジョージア州、タバコ・ロードと呼ばれる一帯に老農ジーター一家が住んでいた。
飢えのあまり、立ち寄った末娘の夫ベンジーの持っていたかぶらを奪いあう始末。
金めあてに息子のトゥードを金持女と結婚させようとするが、あてがはずれて彼女の車を売ろうとし、あわや刑務所行きに。
(出典:http://www.kinenote.com/main/public/cinema/detail.aspx?cinema_id=5521)
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南部の綿花とタバコ
『タバコ・ロード』の舞台は1930年前半。
物語の冒頭で100年前は綿とタバコの農園が広がっていたと説明されます。
イギリスからの入植者達は、農業開拓に適している土地としてジョージアなどの南部で農業を拡大していきました。
この辺りの土地は川沿いで湿地帯ということもあり農業に適していました。
その地で栽培されたのが綿花やタバコだったのです。
1800年代には需要が高まり大規模農園と呼ばれるプランテーション制度によって、南部での綿花栽培やタバコ栽培は重要な役割を果たすようになっていったのでした。
次第に農園の拡大のために奴隷を使い始めます。
これが南部の奴隷制度につながりやがて大きな問題となっていったのでした。
『タバコ・ロード』の冒頭で説明される100年前とはちょうどこの頃です。
見渡す限り綿花やタバコで埋め尽くされた農園だったのです。
そしてこの頃に、川から丘までタバコを運んでできた道を「タバコ・ロード」と呼ぶようになったのです。
その頃から100年経ち時代は1930年代になります。
世界全体で大恐慌が起こり、南部の農家は大打撃を受けてしまいます。
そんな貧しい一家の物語はこの『タバコ・ロード』なのです。
南部とキリスト教
『タバコ・ロード』の特徴の1つに信仰深いキリスト教信者のベッシーが登場します。
彼女の存在も当時の南部の特徴の1つです。
イギリスからの入植者達は敬虔なキリスト教徒でした。
のちに彼らはWASPと呼ばれるようになります。
それはホワイト・アングロ・サクソン・プロテスタントを意味します。
この映画の中でベッシーは特に信心深い女性でしたが、それ以外の人たちも信仰を持っていたことが描かれています。
主人公のジーターはどうしようもないダメ人間でしたが、そんな彼ですら神に祈り罪を犯したことを恐れているのです。
そんな敬虔なキリスト教徒の登場人物達ですが、彼らは貧しさのあまり罪を犯し続けます。
そしてその様子を監督のジョン・フォードはコメディとして描きました。
『タバコ・ロード』に登場するほとんどの人たちの生活を面白おかしく表現しています。
そして登場人物もみんなおかしな人達です。
それは本当に貧しく明日のことも考えられない状態だと、人間はおかしくなってしまうという事実を監督はこの映画を通して伝えようとしているんだと感じました。
どこか狂気的でおかしな登場人物。
これは当時の貧しい人達の現実だったのです。
人間追い詰められると狂いそうになり、また限界に達すると笑うしかなくなってしまいます。
そこまで追い詰められてしまった人達が、タバコ・ロードの貧しい農民達だったのです。
まとめ
大恐慌時代の貧しい農民の生活を描いた『タバコ・ロード』。
映画はコメディですが、痛烈に貧しさを感じてしまいます。
追い詰められてしまいおかしくなってしまった人達。
当時はそんな人たちがたくさんいたのかもしれません。
また『タバコ・ロード』を見ていると南部の歴史が詰まっているようにも感じました。