映画『ゾンビ』ゾンビよりも欲に負けた人間達の物語


死人が蘇り人間を襲ってしまう世界。生き残った4人の男女はショピングモールに逃げ込みます。休憩するために立ち寄ったショッピングモールでしたが、そこは人間の心を惑わすものがたくさんある場所でした。ショッピングモールで生活を送るようになった4人ですが、やがて彼らはゾンビの世界を忘れてしまうほど欲にまみれてしまうのです。

『ゾンビ』作品情報


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タイトル ゾンビ(Dawn of the Dead)
監督 ジョージ・A・ロメロ
公開 1979年3月10日
製作国 イタリア/アメリカ
時間 2時間19分

Rotten Tomatoes

あらすじ

ゾンビが増え続ける中、都市からの脱出を試みるSWAT隊員たちとその仲間。

ようやくたどり着いた郊外の巨大なショッピングセンターで得た束の間の平和も、乱入して来た暴走族によって終りを告げる……。

(出典:https://www.allcinema.net/cinema/13346)

ゾンビの父ロメロのゾンビ

ゾンビの父と呼ばれているのが、『ゾンビ』の監督のジョージ・A・ロメロです。
彼はこの作品の前にもゾンビ作品を手がけますが、この『ゾンビ』で世界中に名前が知れ渡ることになりました。

この作品の中で彼はゾンビの定番と言われるルールをいくつか作ります。

・ゾンビは動きが遅い
・ゾンビは脳を攻撃すると死ぬ
・ゾンビに噛まれるとソンビになってしまう
・ゾンビは音に反応する

という基本的なルールがこの『ゾンビ』の中で見られます。

ただし映画の中には「ゾンビ」という言葉は登場しません。
この世界には「ゾンビ」という言葉がない世界です。

最初にニュース映像では「襲われて死んだ人」と呼んでいます。
さらにこの中でいくつかゾンビの習性が伝えられていました。

・そのまま放置すると蘇って人を殺すようになる
・死人は人間を食べるために襲いそれは永遠に続く

さらに後半では科学者が登場し、

・「死人」が食べるのは温かい人間の肉
・知能や思考力はほとんどない
・生きていた時の記憶で簡単な動作はできる
・単純動作で道具を使うこともできる

とも述べています。
この世界に蔓延る蘇った死人は、本能にしたがって生きているのでした。

最近の「ソンビ」映画では、これらの基本ルールから外れた作品もたくさんありますが、多くの作品のゾンビがこのルールにのっとって作られているのです。

本能のままに生きるゾンビと人間

『ソンビ』の中で蘇った死人は本能にしたがっているとされています。
そんな中ショッピングモールに集まるゾンビを見たスティーブンは、「本能のままに集まってる」と言います。
ショッピングモールに集まる「蘇った死人」にとってここは、生活に欠かせない場所だったのです。

そんなゾンビが次々と集まってくるショッピングモールによった主人公達は、最初は一休みするはずだけでしたがショッピングモールを拠点にすることを考えます。

なぜならここにはなんでもあるからです。
食糧以外にも洋服や高価な時計やお金などなんでもあるのです。
ここにいれば豊かな暮らしができると考えた4人は、ショッピングモールで生活を始めるのです。

高価な時計や宝石さらにはお金などゾンビだらけの世界には全く無意味なのに、彼らはショッピングモールにあるものを自分のものだと勘違いするようになっていったのです。

そこには物欲にまみれてしまう人間の欲望が描かれていました。

さらにロジャーはやがてゾンビを殺すことに快感を優越感を覚え始めます
もはや彼にはゾンビが怖いものではなくなり心に余裕が生まれてしまいました。
しかしその余裕がやがて命取りになるのです。

そして最後にはショッピングモールに強盗団が現れます。
彼らもまた欲望に駆られた人たちです。
ショッピングモールの中の物を盗むだけでなく、ゾンビがつけている宝石なども奪うほど欲望だらけの人間でした。

そんな彼らに対してスティーブンは「ショッピングモールの物は自分たちのものだ」という感情を持ってしまいます。
そして彼もまたその欲望から命を落とすことになってしまったのでした。

ただし彼らの欲はゾンビの世界になったから生まれたわけではありません。
彼らはもともと自分勝手な人間でした。

知り合いの警察官がタバコをくれと言っても、彼らは持っていないと言ってタバコをあげません。
しかし本当は彼らはみんなタバコを持っていました。
また最初から生きるためには強盗や略奪は当たり前だと考えてもいます。

最初から自分のことだけ考えていた主人公達。
神父は「殺し合いをやめなければ人間は滅ぶ」と言いますが、彼らはいつまで殺し合いを続けるのでしょうか?

ゾンビに襲われることよりも人間の心の奥に潜む恐怖を感じてしまいます。

まとめ

映画史に残るゾンビ作品で金字塔でもある『ゾンビ』。
ゾンビの父が作った作品は、強烈な印象を残す映画となっていました。

過激な描写や残虐的なシーンが心に残りますが、それよりも強く心に残るのは映画の中で描かれる人間の心の奥に眠る強暴性でした。

ゾンビに関係なく自分勝手に欲望にまみれてしまった人間達。

この映画を観終わった時、私たちは「本当に恐ろしいもの」を知ることになるでしょう。