時代を超えて世界中で愛される名作の1つ『ローマの休日』。愛くるしいオードリー・ヘップバーンに魅了されてしまう物語ですが、その裏には脚本家や監督が作品に込めた秘かな想いがありました。ここでは『ローマの休日』に隠された「希望」「友情」「信頼」についてみていきたいと思います。
『ローマの休日』作品情報
タイトル | ローマの休日(Roman Holiday) |
監督 | ウィリアム・ワイラー |
公開 | 1954年4月27日 |
製作国 | アメリカ |
時間 | 1時間58分 |
[box class=”red_box” title=”アカデミー賞受賞”]・主演女優賞:オードリー・ヘプバーン
・衣裳デザイン賞
・原案賞[/box]
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脚本家:ダルトン・トランボ
アカデミー賞で原案賞を獲得した映画『ローマの休日』。
当時オスカーを手にしたのは脚本家のイアン・マクレラン・ハンターでした。
しかし本当は、映画『ローマの休日』の脚本を書いたのは脚本家ダルトン・トランボで、彼がイアン・マクレラン・ハンターに名前を借りて書いた物語でした。
ダルトン・トランボが『ローマの休日』の執筆にあたっている頃、彼は「赤狩り」に直面していてハリウッドで仕事がなくなっている状態でした。
「赤狩り」とは冷戦時代のアメリカで共産主義者を見つけ出し排除するといもので、1943年に共産党に入党していたトランボの「赤狩り」の対象になってしまいました。
「赤狩り」を行う非米活動委員会を恐れたハリウッドのスタジオが、トランボのような「赤狩り」の対象となった人物を解雇したことで、トランボはハリウッドで仕事ができなくなってしまいました。
それでも家族を養うために仕事をしなくてはいけないトランボは、友人であるイアン・マクレラン・ハンターの名前を借りて『ローマの休日』を書いたのです。
結果『ローマの休日』はアカデミー賞で原案賞を獲得しますが、トランボはオスカー像を手にすることはなく、1976年に亡くなってしまいます。
しかし1992年にはそれまで『ローマの休日』の載っていなかったトランボの名前がクレジットされることになります。
そして1993年にはトランボの妻が、オスカー像を手にしたのです。
この『ローマの休日』にまつわる一連の出来事は、映画『トランボ ハリウッドに最も嫌われた男』のなかで詳しく描かれています。
『ローマの休日』に込められた「信頼」
『ローマの休日』の脚本家がダルトン・トランボだということは、伏せられたままローマで撮影が開始されます。
ウィリアム・ワイラー監督が『ローマの休日』をダルトン・トランボが書いたかことを知っていたかどうかは分かっていませんが、監督自身はハリウッドで行われている「赤狩り」に反対していました。
なので、ウィリアム・ワイラー監督とダルトン・トランボは同じ気持ちで『ローマの休日』を作り上げたのです。
『ローマの休日』はアン王女と新聞記者ジョーの秘かな恋を描いたラブストーリーであると同時に、2人の「友情」や「信頼」について描かれている作品でもあります。
お互いに秘密を抱えたまま1日を過ごしたアン王女とジョーは、それぞれの立場を伝えないまま別れることになります。
そして2人は翌日の記者会見で再会することになりました。
そこで初めてジョーが新聞記者だと知って驚くアン王女ですが、王家間の親善関係について聞かれた彼女は「永続を信じます」と答えたあと「人と人の間の友情を信じるように」と続けます。
アン王女の言葉を聞いたジョンは「王女の信念が裏切られぬ事を信じます」と返し、ローマで過ごした1日は2人だけの秘密だと伝えました。
このアン女王とジョンのやりとりには、当時のトランボの気持ちが強く反映されているとも考えられます。
「赤狩り」が行われるハリウッドでは、共産党員だった仲間の名前を挙げることでハリウッドでの立場が守られようとしていました。
それは仲間を裏切ることで、自分は助かることができるということです。
当時、最後まで仲間の名前を明かさずハリウッドでの仕事を失った人もいれば、仲間を売ったことで仕事を続けられた人もいました。
そんな疑心暗鬼のハリウッドの中で、『ローマの休日』はトランボが仲間や観客に送ったメッセージだったのかも知れません。
『ローマの休日』の前半でアン王女の「青春時代の希望を取り戻したい」という言葉は、トランボが強く願ったことでもあったのです。
\\「赤狩り」を描いたコミック//
赤狩り THE RED RAT IN HOLLYWOOD(1)
まとめ
世界中で愛され続けている映画『ローマの休日』は、製作者達の色んな思いが込められた作られた作品であり、物語の裏にはハリウッドの暗い歴史が隠されている映画でもありました。
当時の状況を知ったうえで『ローマの休日』を見ると、今までとは違う角度で物語を味わうことができます。
名作『ローマの休日』が伝えたかった本当の意味を感じることができるはずです。