映画『グランド・ブダペスト・ホテル』シュテファン・ツヴァイクにインスパイアされた物語

『グランド・ブダペスト・ホテル』の最後には「シュテファン・ツヴァイクにインスパイアされました」という字幕が登場します。可愛いい雰囲気の中で進むほのぼのしたミステリー作品ですが、その裏には戦争に翻弄された1人の作家の想いが込められていました。

目次

『グランド・ブダペスト・ホテル』作品情報


グランド・ブダペスト・ホテル [Blu-ray]

タイトル グランド・ブダペスト・ホテル(The Grand Budapest Hotel)
監督 ウェス・アンダーソン
公開 2014年6月6日
製作国 ドイツ/アメリカ
時間 1時間39分

あらすじ

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1932年。

グランド・ブダペスト・ホテルは、“伝説のコンシェルジュ”と呼ばれるグスタヴ・Hの完璧なおもてなしが評判で、彼目当てのエレガントな客で溢れかえるヨーロッパ随一の超高級ホテル。

そこでベルボーイ見習いとして働くことになったのが移民の少年ゼロ・ムスタファ。

グスタヴの指示を忠実にこなし、少しずつ信頼を獲得していく。

そんなある日、グスタヴと懇意の間柄だった富豪の常連客マダムDが殺害され、遺言で名画“少年と林檎”がグスタヴに贈られることに。

しかしグスタヴには殺人の嫌疑がかけられ、おまけに絵を取り戻そうとマダムDの息子ドミトリーの刺客も迫ってくる。

そんな中、グスタヴとゼロはコンシェルジュ仲間やゼロの婚約者アガサの力を借りて逃亡を続けつつ、事件の謎を解明すべくヨーロッパ中を駆け巡るのだったが…。

(出典:https://www.allcinema.net/cinema/348087)

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[box class=”red_box” title=”アカデミー賞受賞”]・美術賞
・衣裳デザイン賞
・メイキャップ&ヘアスタイリング賞
・作曲賞[/box]

シュテファン・ツヴァイク

『グランド・ブダペスト・ホテル』の物語が終わると、1つの文章が現れます。

それは「シュテファン・ツヴァイクにインスパイアされました」とい内容です。

シュテファン・ツヴァイクとはオーストリアの小説家です。
彼は1881年に当時のオーストリア=ハンガリー帝国に生まれました。

お金持ちのユダヤ人の家に生まれた彼は、ウイーン大学で文学を学びました。

ウィーンの美しく伝統的に文化を愛し多くの作品を世に送り出していましたが、彼の人生は戦争によって狂ってしまいました。

第一次世界大戦で祖国に疑問を持ち始めるようになり、反戦・平和への思いを強くするようになりました。

しかしその後ドイツ帝国にはヒトラーが誕生してしまいます。

そんな歴史の流れに対して、ツヴァイクは平和主義を貫き平和を唱える作品を作り続けました。

『グランド・ブダペスト・ホテル』はそんなツヴァイクから刺激を受けて作られた作品です。

絵本のような世界で綺麗で美しい色使い『グランド・ブダペスト・ホテル』。
さらにほのぼのとする物語の中に、実はツヴァイクの訴える平和が込められていたのです。

裏に隠された反戦

『グランド・ブダペスト・ホテル』の舞台は1932年。

架空のズブロフカという国の物語ですが、戦争が間近に迫っていました。

「国境に戦車が現れる」という記事が新聞に載っていましたが、グランド・ブダペスト・ホテルの中は全くそんな感じはしません。

しかし一歩外に出ると、戦争は迫っていたのです。
列車の乗ると検問を受けてしまいます。

その時難民で国籍のないゼロは捕まりそうになってしまいます。
ゼロは戦争により家族を亡くし、村を焼かれていました。
生き残るためには逃げるしかなかったのです。

そんなゼロに対してホテルのコンシェルジュのグスタヴは、優しく接してくれました。
彼の身分などグスタヴには関係なかったのです。
師匠として友人としてゼロを受け入れてくれました。

しかし2回目の検問ではゼロはつかまってしまいます。
すでに戦争が初まっていました。

戦争とは程遠かったグランド・ブダペスト・ホテルにもたくさんの軍人が泊まるようになっていました。

連行されるゼロを助けようとしたグスタヴは、撃たれて亡くなってしまいました。

グスタヴは最後まで独裁的・抑圧的な世界と戦ったのです。

平和を望み差別を嫌ったグスタヴの人生には作家ツヴァイクが重ねられているのです。

まとめ

ウェス・アンダーソン監督の独特な世界を感じることができる作品『グランド・ブダペスト・ホテル』。

ちょっとおかしくて色とりどりな可愛い世界。

一見そんな風に見える作品の裏には、違うテーマが隠されていました。

そしてそれは平和を望み続けたシュテファン・ツヴァイクの影響を受けて作られていました。


シュテファン・ツヴァイク ヨーロッパ統一幻想を生きた伝記作家 (中公新書)

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