2018年4月に亡くなった高畑勲監督。高畑監督が遺した数々の作品で伝えようとしてことは?そして最後まで新たなアニメーション技術を探求し続けた高畑監督の想いとは?高畑監督の作品共にその想いを紹介しています。
「アニメーション映画の開拓者・高畑勲」
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「アルプスの少女ハイジ」「火垂るの墓」「平成狸合戦ぽんぽこ」。
高畑勲監督は背景や人物表現のひとつひとつに、臨場感や説得力を追求した。
遺作「かぐや姫の物語」は構想から50年を経て制作へ。
アニメーションの常識を覆す表現が生まれた。高畑の助手を務めたこともある「この世界の片隅に」の片渕須直監督と、かぐや姫の声優として、高畑の演技指導を受けた女優・朝倉あきが、高畑が現代に残したメッセージをよみとく。
(出典:https://www4.nhk.or.jp/nichibi/x/2019-09-15/31/26457/1902814/)
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アルプスの少女ハイジ
高畑監督は「アルプスの少女ハイジ」を製作するかどうか3ヶ月悩んだと言われています。
アニメーションに求められるファンタジーの要素が少ないこの作品で、一体何を子供達に伝えれば良いのかが分からなかったのです。
日本人に伝わるメッセージを考えていた高畑監督。
当時の日本は公害や自然破壊やオイルショックで社会が閉塞感を持っていました。
そんな社会の中で育つ子供達の心を解放したいと考えました。
そして高畑監督は「アルプスの少女ハイジ」の製作を決めました。
この作品を製作するにあたって高畑監督は、スタッフを連れてスイスにロケハンに向かいます。
アニメーション製作でロケハンをすることは初めてのことでした。
この作品で現地の人々の生活に説得力を持たせ、リアリティのある日常を作り出すために現地の人々の生活に触れたのです。
「アルプスの少女ハイジ」と言えば、おじいさんの作る美味しそうなチーズが忘れられません。
このチーズもロケハンで現地の人々の生活を体験したことで、造られた描写でした。
リアルな生活を描きながら、美しい自然に触れることでハイジの心が解放される様子をこの作品で子供達に伝えようとしていたのです。
スタジオジブリでの作品
1985年高畑監督は宮崎駿監督らとスタジオジブリを作ります。
高畑監督はスタジオジブリでは、「火垂るの墓」「おもひでぽろぽろ」「平成狸合戦ぽんぽこ」など日本を舞台にした長編アニメーションを手がけました。
今度は私たちにアニメを通して日本の生活や過去を伝えようとしていました。
特に「火垂るの墓」では、戦時中の生活をリアルに伝えています。
高畑監督自身も9歳の時に、岡山で空襲を経験しています。
その経験があったから、「火垂るの墓」を作ろうと思ったとも語っている高畑監督。
戦争という大きなテーマにおいてもリアリティを追求した高畑監督は、当時の人の感情などもセリフや背景などで表しています。
そして戦争ということだけでなく、清太の視点を通して節子に対しての思い入れも伝えようとしています。
自分から他者への一方的な思い入れ。
戦時中のことを描いているけど、現代の私たちにも通じることを描き、問いかけていたのです。
次の作品の「おもひでぽろぽろ」では、後継者不足に悩む農村の問題や女性の社会進出を描きます。
そして「平成狸合戦ぽんぽこ」では、姿を消していく里山で住処を失われる狸をドキュメンタリータッチで描くことで、見ている側に現実社会のあり方を問いかけました。
かぐや姫
高畑監督の遺作となった「かぐや姫」。
8年かけて作った作品でした。
この「かぐや姫」でも高畑監督はリアルを追求するために、新しい試み挑戦しています。
今までのアニメーションの常識を打ち破って、全てを手書きの線で描くとことに挑戦しました。
時間がかかる手書きの線での製作にこだわった高畑監督。
それは手書きの線の背後にある本物を表現することでした。
本物を描いてないけど「本物を感じること」、高畑監督はそれを大切にしたのです。
高畑監督は手書きの線で作られた「かぐや姫」について満足しているとおっしゃています。
この作品にはみんなの記憶の中にあるものを引き出す力がこの表現にはあると語っていました。
日本のアニメーションの先駆者でありながら、最後まで新しいものを求めていた高畑監督。
その想いが詰まっているのが、「かぐや姫」なのです。
高畑勲展
2019年7月26日〜10月6日まで東京国立近代美術館で開かれている「高畑勲展」。
ここでは、高畑監督の残した貴重な資料を見ることができます。
監督がどんな思いで作品を作ろうとしたのか。
そして作品を作るにあたって、どんな準備をしたのか。
1本1本の作品に、高畑監督の熱意を感じることができます。
作品の製作過程や1つ1つのシーンに込められた監督の想いを知ってからもう一度高畑監督の作品を見直すと新たな発見や、新たな感情が芽生えてくるかもしれません。
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