シェイクスピアの「マクベス」を時代劇に置き換えた黒澤明監督の作品『蜘蛛巣城』。ラストの矢のシーンが有名ですが、マクベス夫人に当たる鷲津浅茅を演じた山田五十鈴の怪演が光っている作品でもあります。
『蜘蛛巣城』作品情報
タイトル | 蜘蛛巣城 |
監督 | 黒澤明 |
公開 | 1957年1月15日 |
製作国 | 日本 |
時間 | 1時間50分 |
Rotten Tomatoes
『蜘蛛巣城』あらすじ
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謀叛を起こした敵を討ち城主の危機を救った鷲津武時は、帰城途中に出会った老婆から不思議な予言を聞く。
その予言通りに大将に任ぜられると、今度は妻にそそのかされて主を殺害、自ら城主の地位に着く。
(出典:https://eiga.com/movie/10265/)
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シェイクスピア「マクベス」
『蜘蛛巣城』はシェイクスピアの戯曲「マクベス」を黒澤明監督が戦国時代に置き換えた作品です。
マクベスを演じたのは三船敏郎ですが、『蜘蛛巣城』で強烈な印象を残しているのがマクベス夫人を演じた山田五十鈴です。
夫からもののけの話を聞き、夫をそそのかして行く妻。
大殿や友人である三木を信じようとしている武時は、次第に妻にそそのかされてしまいます。
感情のないような言い回しの妻浅茅。
なんとも言えない不気味な雰囲気にゾッとします。
そしてラストで見せた狂ってしまった浅茅の怖さ。
彼女の顔を見ているだけで恐怖を感じてしまいますし、この先武時によからぬ事が起こることを想像させてしまいます。
黒澤監督が『蜘蛛巣城』の演出に使った能の仮面のような顔を、山田五十鈴が見事に演じきっています。
この映画の中で1番印象に残ったのが彼女演じるマクベス夫人です。
矢に射られるラストシーン
『蜘蛛巣城』で1番有名なシーンはラストで三船敏郎演じる鷲津武時が、味方の兵から何本もの矢を射られるというシーンだと思います。
そしてその矢が武時の喉を射る。
怖くもあり迫力のある圧巻のシーンとなって射ます。
映画のタイトルが「Throne of Blood」となっているのも分かります。
あの矢の演出は有名で、本物の矢を三船敏郎に向かって何本も射ったのでさすがの三船敏郎も恐怖を感じたと言われています。
さらに撮影が終わると監督に向かって「俺を殺す気か」と怒鳴り散らしたとも言われているくらい、本気のシーンだったようです。
鷲津武時の体に数々の矢が刺さる方法は、『七人の侍』を撮影した時と同じ方法がとられています。
体に見えない糸を貼り、その糸をたどって矢が刺さる仕掛けになっています。
矢自身が空洞になっていて糸を中に入れられるようになっているわけです。
それでも遠くから次々と矢を射られれば怖いですし、自分に刺さってない矢でもあれだけの本数の矢が飛んでくればやはり恐怖を感じてしまいます。
鬼の黒澤明と呼ばれるだけある演出方法です。
まとめ
ラストシーンや山田五十鈴の怪演が光る『蜘蛛巣城』。
日本版「マクベス」を堪能する事ができます。
夫をそそのかし自分の意のままに操る鷲津浅茅の恐怖は忘れる事が出来ません。
人間が欲望のままに闇に落ちて行く様子を日本文化である能を使って表現した『蜘蛛巣城』は、人間の悲しいさがを感じてしまいます。
おどろおどろしい雰囲気と物語の悲しさが見事に噛み合った物語となっています。