村上春樹の短編小説「納屋を焼く」を映画化にしたのが『バーニング劇場版』です。短い短編小説を韓国の現代社会に置き換えて描かれた物語はミステリーな展開になっていましたが、現代の若者が抱える闇を描いた作品でもありました。
『バーニング劇場版』作品情報
タイトル | バーニング 劇場版(버닝|) |
監督 | イ・チャンドン |
公開 | 2019年2月1日 |
製作国 | 韓国 |
時間 | 2時間28分 |
Rotten Tomatoes
『バーニング劇場版』あらすじ
【上映速報】
スクリーン①3/2~3/15『バーニング 劇場版』
村上春樹『納屋を焼く』を映画化した、巨匠イ・チャンドン監督の8年ぶりの新作。小説家を目指すジョンスは、幼馴染のヘミからアフリカで出会ったという謎の男ベンを紹介される…。
幻想的な映像と衝撃のラスト!是非ご覧ください。 pic.twitter.com/DQCuJnsnGU— キネマ旬報シアター (@kinejun_theater) February 16, 2019
韓国の現代社会
韓国の若者3人が登場する『バーニング劇場版』。
この3人は現代の韓国の若者を象徴している3人です。
唯一女性のヘミは整形して今時の女子らしい生活を送っています。
しかしお金には困っていてクレジットカードで作った借金地獄に陥っていました。
大学を卒業して小説家を目指すジョンス。
就職はせずにアリバイとで生計を立てていますが、貧しい生活を送っていました。
実家で流れるテレビでは韓国の若者の就職難のニュースが流れています。
お金持ちの青年ベン。
若くして成功し派手な暮らしをしています。
ジョンスが「仕事は何をしているんですか?」と聞くと「遊んでいます」と答えるほどです。
生活の状況が違う3人ですが、3人とも現在の韓国の状況を映し出しています。
今韓国が抱える問題でもあるのです。
その現代の問題を村上春樹の「納屋を焼く」のミステリー的な要素にい付け加えで出来上がったのが、イ・チャンドン監督の『バーニング劇場版』なのです。
見えるものと見えないもの
『バーニング劇場版』のキーワードは見えるものと見えないもの。
実在するものと実在しないものです。
ヘミと久々に再会したジョンスは彼女と食事に行きます。
そこでヘミはパントマイムを披露します。
みかんを食べるまね。
この時ヘミは「みかんがあると思うのではなくて、みかんが無いということを消し去ること」だと言います。
「実在しないということを消すこと」それがこの映画のテーマになっていました。
猫・井戸・無言電話と実在するのか実在しないのか分からないことが、映画の中で立て続けに出てきます。
実在しないと思っていた猫は実在しました。
井戸は無かったという人と井戸はあったというヘミとジョンスの母親。
なんどもかかってくる無言電話。それは母親からの電話でした
見えるものと見ないものの間で続くストーリー。
そのミステリアスなストーリーはヘミさえ消し去ってしまったのです。
見えるものと見えないものの間で、3人の若者または韓国の若者はもがいているのです。
そしてそれは観客もまた同じなのです。
見える現実と先の見えない未来。
苦しい現実と不安な未来。
ラストのシーンは厳しい現実を見せつけられているジョンスが、ベンへ挑んだ戦いだったと思います。
そしてジョンスはベンを倒した後、全てを燃やし裸になって新たに生まれ変わったのではないでしょうか。
まとめ
文学小説をミステリーとして作り上げた『バーニング劇場版』。
若者の抱える悩みと苦しみをリアルとサスペンスで表現している作品でした。
きっとこの映画の謎が解けた時、どう生きるのかがわかってくるような気がします。