1987年イギリスのルートンで暮らすパキスタン移民のジャベドは、保守的な社会や父親を長とする家族関係に嫌気を感じていましたが、何もできず悶々とする日々を過ごしていました。そんな時彼はブルース・スプリングスティーンの音楽に出会い、自分の夢に向かって動き始めたのです。
『カセットテープ・ダイアリーズ』作品情報
タイトル | カセットテープ・ダイアリーズ(Blinded by the Light) |
監督 | グリンダ・チャーダ |
公開 | 2020年7月3日 |
製作国 | イギリス/アメリカ/フランス |
時間 | 1時間58分 |
ブルース・スプリングスティーン
アメリカのロックを代表するブルース・スプリングスティーンは、映画『カセットテープ・ダイアリーズ』の中でも描かれているように、ファンから「Boss」呼ばれ世界中で愛されるロックスターでした。
若者や労働者の気持ちを歌詞にして歌い、1970年代〜1980年代に大活躍します。
ただ『カセットテープ・ダイアリーズ』で描かれる1987年には、イギリスではペット・ショップ・ボーイズなどが活躍していて、10代の若者たちにとってはブルース・スプリングスティーンは時代遅れとなりつつありました。
ですが、ジャベドの父親世代にとってはスターであることに変わりはありません。
その証拠にジャベドの親友マットの父親はノリノリで「Thunder Road」をジャベドと一緒に歌っていました。
自分の気持ちとブルース・スプリングスティーンの歌詞が見事に重なったジャベドは、ブルースの音楽に夢中になり少しずつ自分の殻を破り始めます。
ブルースの歌詞がジャベドの背中を押し彼は走り始めたのでした。
ちなみに劇中でジャベドの彼女がブルース・スプリングスティーンのことを「レーガン大統領が聞いている人よ」と言いますが、実際にレーガンは大統領選でブルースの曲を使っています。
彼の「Born in the U.S.A」はアメリカを愛する愛国心の歌だとと言われますが、実際は劇中でジャベドが説明するように「ベトナム退役兵の苦悩」を歌った曲だったのです。
サッチャー政権
1987年のイギリスの首相はマーガレット・サッチャーの3期目にあたります。
1979年から首相になった彼女は「鉄の女」と呼ばれ、保守的な政策を次々と行います。
イギリスの経済が低迷する中、規制緩和を行い公共事業を次々と民営化していきました。
サッチャー政権は国の役割を減らすことで、財政の支出を抑えようとしていたのです。
また社会保障を削減したことで所得の低い人たちは、さらに厳しい生活を余儀なくされてしまいます。
公共の仕事がなくなだったことで多くの人が仕事を失い、さらに社会保障も受けることができません。
当時イギリスは失業者が増え続け『カセットテープ・ダイアリーズ』の中でも、新聞の見出しには「失業者300万人超」と書かれていました。
またカッレジの先生も「サッチャーのおかげで大学を出ても就職は怪しい」と生徒の前で言います。
それぐらい当時のイギリスの経済は低迷していたのでした。
さらにジャベドはもう1つ人種差別という問題と直面していました。
当時イギリス国民戦線という政党が力をつけていて彼らは白人至上主義を掲げ、人種差別的な発言を繰り返していました。
さらに彼らに賛同する人たちが人種差別的なデモを行なっていたのです。
父親の解雇や人種差別という時代の波にジャベドも飲まれてた1人でした。
それに加え彼にはパキスタン人の風習や文化が重荷となっていました。
そんな時に彼はブルース・スプリングスティーンに出会い、自分の心の声と向き合ったのでした。
まとめ
音楽と出会ったことで成長していく主人公絵を描いた映画『カセットテープ・ダイアリーズ』。
主人公ジャベドがブルース・スプリングスティーンと共に少しずつ変わっていく姿が描かれていますが、それと同時に1987年当時のイギリスの状況を知ることができる作品にもなっていました。
ブルース・スプリングスティーンの歌はジャベドの背中を押すことになりましたが、それと同時に当時の労働者たちの心を代弁する歌でもあったのです。
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