『ジョゼと虎と魚たち』短編小説と映画とアニメを比べてみた

田辺聖子の短編小説「ジョゼと虎と魚たち」を元にして作られた映画『ジョゼと虎と魚たち』とアニメ映画『ジョゼと虎と魚たち』。どちらの作品も原作のストーリーを元にしながらも、独自の世界を築き上げた作品となっています。実写映画でしかできなかったこと、アニメでしか描けなかったこと。ここではそんな2つの作品を比べてみたいと思います。

目次

小説『ジョゼと虎と魚たち』


ジョゼと虎と魚たち (角川文庫)

1985年に出版された田辺聖子の短編小説集『ジョゼと虎と魚たち』。

短編集の中には9つの短編が収められていて、その中の7番目の短編が本のタイトルにもなっている『ジョゼと虎と魚たち』です。

大学生の恒夫と足の悪いジョゼのラブストーリーですが、ジョゼの強さや彼女の考える「幸福」について書かれています。

この短編を原作にしたのが、2003年に公開された映画『ジョゼと虎と魚たち』と2020年に公開されたアニメ映画『ジョゼと虎と魚たち』で、どちらもジョゼと恒夫の基本的な設定は同じですが、それぞれ原作の世界を大きく広げて独自の物語を作り上げています。

映画『ジョゼと虎と魚たち』


ジョゼと虎と魚たち

タイトル ジョゼと虎と魚たち
監督 犬童一心
公開 2003年12月13日
製作国 日本
時間 1時間56分

2003年に公開された『ジョゼと虎と魚たち』のなかで原作と1番違う点は、原作ではジョゼは「車椅子」に乗っていますが、これが「乳母車」になっていたことです。

この「乳母車」の変化が、ジョゼと恒夫の関係性や彼女自身の強さを示すものになっていました。

そして原作では描かれていない原作小説後の2人の関係は、原作の中の甘酸っぱさを超えてリアルな痛みを感じる世界になっていました。

ただ、原作同様に映画の中で描かれるジョゼは強く、物語の後半は彼女の覚悟さえ感じます。

映画『ジョゼと虎と魚たち』は「強い女性と弱くてダメな男性」を描いた作品とも言えますが、その中でも女性の強さと怖さを感じさせるのは、ジョゼと映画オリジナルのキャラクターの香苗のシーンです。

犬童一心監督は「椿三十郎」の決闘シーンのようだと言っていましたが、まさに女性の戦いを映し出していました。

この戦いの後、ジョゼと香苗は色んなことを経験しながら強くなっていきます。

映画『ジョゼと虎と魚たち』はラブストーリでありながらも、登場人物たちが少しずつ大人になっていく物語でもありました。

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アニメ『ジョゼと虎と魚たち』


ジョゼと虎と魚たち

タイトル ジョゼと虎と魚たち
監督 タムラコータロー
公開 2020年12月25日
製作国 日本
時間 1時間39分

2020年に公開されたアニメ映画『ジョゼと虎と魚たち』。

2003年に公開された実写映画よりも原作に近い物語になっていましたが、ジョゼと恒夫の出会いなどアニメーションでしか描けない世界が広がっています。

またこの作品は劇中にも出てくる「人魚姫」のお話と重ねられていて、人魚姫のジョゼと王子様の恒夫の物語でもあります。

だからこそ、原作や実写映画よりも「海」や「魚」が重要になっていて、それはジョゼだけでなく恒夫にとっても大切なものでした。

アニメ映画『ジョゼと虎と魚たち』も実写映画のように後半はオリジナルの展開を見せ、ジョゼと恒雄の挑戦が描かれています。

それぞれが色んな意味で傷を負い一度は海の底に落ちてしまうけど、そこからもう一度這い上がり夢を手にするまでの物語がアニメ版の『ジョゼと虎と魚たち』です。

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まとめ

田辺聖子の短編小説を元に作られた実写映画とアニメ映画の『ジョゼと虎と魚たち』。

どちらの作品もオリジナルの独特の世界を残しながらも、後半は原作とは違う展開になっていきます。

一方は「痛みと成長」を描きリアルな現実に近い物語で、もう一方は「人魚姫」と重ね合わせた挑戦の物語になっていました。

同じ原作でありながらも、2つの作品を見終わった後に抱く気持ちは全く違う感情かもしれません。

『ジョゼと虎と魚たち』は原作・実写映画・アニメ映画でそれぞれ全く異なる世界を楽しむことができるので、どれもお勧めです。

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