映画の中で語られる映画『國民の創生』がもたらした影響


アメリカで最初の長編映画とされる映画『國民の創生』は歴史的な映画の1つとされていますが、別の意味でもこの映画は歴史に名を残す映画でもあります。人種差別を助長するとされる『國民の創生』は、のちに批判されるようになります。ここでは他の作品を通して映画『國民の創生』で描かれる差別を見ていきます。

『國民の創生』作品情報


國民の創生 [DVD]

タイトル國民の創生(The Birth of a Nation)
監督D・W・グリフィス
公開1915年2月8日(アメリカ) 1924年4月25日(日本)
製作国アメリカ
時間3時間15分

あらすじ

物語は南北戦争直前からその後の時代を背景に、南部と北部の二つの家の人々がそれまで親しくしていたにもかかわらず敵対して戦い、やがて戦後の混乱から起こる人種闘争は、両家の男女の恋をも引き裂いてゆく。

(出典:https://www.allcinema.net/cinema/7799)


人種差別の助長

アメリカで初の長編映画であり、さらにその映画製作技術は当時画期的だったこともあり、映画『國民の創生』は大ヒット映画となります。

しかしそれと同時に、南部の白人視点で描かれたこの作品は、人種差別色の強い作品でもあります。

映画の中では、白人至上主義の団体であるクー・クラックス・クラン(KKK)の誕生の瞬間が描写され、さらに暴徒化した黒人達から白人達を守るヒーロー的な存在としてKKKが描かれていました。

その差別的な物語から公開にあたり抗議運動も起こりますが、公開されると大ヒット映画となりました。

しかし現在では、『國民の創生』は映画史の汚点とされている映画です。

そこで『國民の創生』を、他の映画を通して見ていきたいと思います。

ボウリング・フォー・コロンバイン

マイケル・ムーア監督のドキュメンタリー作品『ボウリング・フォー・コロンバイン』。

アメリカの銃問題を扱ったこの作品の中に、途中『國民の創生』のワンシーンが、差し込まれています。

メディアが「恐怖」を煽り、特に黒人による流血事件ばかりをトップニュースに持ってくることが、黒人社会のイメージにつながっているという説明のシーンで、『國民の創生』の中で黒人男性が白人女性を追いかけるシーンが映し出されます。

実際に、映画『國民の創生』は、映画公開後多くの人に黒人男性の間違ったイメージを植え付けることになりました。

『ボウリング・フォー・コロンバイン』では誤ったイメージ像の植え付けとして、映画『國民の創生』のシーンが使われていました。

『13th -憲法修正第13条-』

ドキュメンタリー映画『13th -憲法修正第13条-』の中で、映画『國民の創生』は、初の大作映画で芸術性と政治的内容から評価されたと説明されます。

『國民の創生』は多くの白人の願望通り南北戦争の敗戦を苦難として描いていて、さらに黒人のイメージを「野蛮」と植え付けました。

この映画の影響でクー・クラックス・クラン(KKK)は人気となり復活します。

さらに映画の中でクー・クラックス・クラン(KKK)が十字架を燃やすシーンがありますが、それは映画の演出の1つでしたが、復活したクー・クラックス・クラン(KKK)は映画を真似するようになりました。

『國民の創生』でクー・クラックス・クラン(KKK)が神秘的で英雄的に描かれたことで、現実社会で黒人への暴力が後押しされることになってしまったのです。

『トランスジェンダーとハリウッド:過去、現在、そして』

トランスジェンダーが映画やドラマでどのように描かれてきたかを描いたドキュメンタリー『トランスジェンダーとハリウッド:過去、現在、そして』。

この作品の中にも映画『國民の創生』出てきます。

しかも『トランスジェンダーとハリウッド:過去、現在、そして』に登場する人たちは、はっきりと映画『國民の創生』を作ったD・W・グリフィスは、差別主義者だと語っています。

D・W・グリフィスの過去の作品『ベッスリアの女王』と合わせて、彼がマイノリティーの人達を意図的にネタにしたと。
(『國民の創生』では白人の女性を追いかける男性はブラックフェイスで、白人の男性が黒塗りして黒人を演じています。)

そして、それが悪しきステレオタイプを生んだと言っていました。

それと同時に、映画『國民の創生』は技術的な面では評価されている作品で、D・W・グリフィスはさまざまな手法を生み出しました。

そのため映画学校では、教材として映画『國民の創生』は使用されています。

映画学校で人種差別については語らずに、『國民の創生』を見させられる黒人の辛さも『トランスジェンダーとハリウッド:過去、現在、そして』の中では語られています。

『ブラック・クランズマン』

黒人警察官とユダヤ人の警察官が白人になりすまして、クー・クラックス・クラン(KKK)に潜入捜査するという映画『ブラック・クランズマン』。

この映画の冒頭で映画『國民の創生』の映像が使われています。

白人至上主義の博士の演説の後ろで流れている映像は映画『國民の創生』でした。

さらに物語の途中で、黒人男性が1916年に実際に起きたジェシー・ワシントン事件について語るシーンがあります。

この時男性は、ジェシー・ワシントンがリンチされる事件が起きた原因の1つが映画『國民の創生』だと語っています。

「事件の1年前に公開され、強い影響力のある映画でクー・クラックス・クラン(KKK)を再生させた」と。

一方、クー・クラックス・クラン(KKK)の入会式では、メンバー達は映画『國民の創生』を見ていて、クー・クラックス・クラン(KKK)が活躍するシーンでは大盛り上がりしていました。

『フォレスト・ガンプ/一期一会』

映画『フォレスト・ガンプ/一期一会』の主人公フォレスト・ガンプの名前は、ネイサン・フォレストの名前から付けられています。

ネイサン・フォレストは南北戦争の時に南軍の騎兵隊の指揮官として活躍し、さらにクー・クラックス・クラン(KKK)の創設者でもあります。

『フォレスト・ガンプ/一期一会』の中では、フォレストの名前の由来を「人間はバカな事をする」と戒めるためにつけたと言います。

その時に使われている映像は、『國民の創生』の中のクー・クラックス・クラン(KKK)が馬に乗り駆け抜けていくシーンでした。

まとめ

歴史的に色んな意味を持つ映画『國民の創生』。

映画史的にはこの映画のおかげで様々な技法が誕生しましたが、社会的には人種差別をもたらしクー・クラックス・クランを復活させてしまった映画でもあります。

そんな映画『國民の創生』がもたらした影響を、他の映画作品を通してまとめてみました。

これらの映画を見ると『國民の創生』が、当時の社会に大きな影響を与えた映画だったのかということが分かると思います。