ブラックパンサー党の若きリーダーだったフレッド・ハンプトン。革命家として生きた彼の人生を描いた映画が『ユダ&ブラック・メシア 裏切りの代償』です。ここでは、革命家フレッド・ハンプトンの行動と、FBIが恐れた彼のカリスマ性を見ていきたいと思います。
『ユダ&ブラック・メシア 裏切りの代償』作品情報
タイトル | ユダ&ブラック・メシア 裏切りの代償 (Judas and the Black Messiah) |
監督 | シャカ・キング |
公開 | 2121年2月12日(アメリカ) |
製作国 | アメリカ |
時間 | 2時間6分 |
[box class=”red_box” title=”アカデミー賞受賞”]・助演男優賞:ダニエル・カルーヤ
・歌曲賞:H.E.R.「Fight for You」[/box]
あらすじ
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元窃盗犯からFBIの情報提供者に転じたウィリアム・オニールは、ブラックパンサー党のイリノイ支部に潜入し、カリスマ的指導者フレッド・ハンプトンに近づく。
その政治手腕で頭角を現しつつあったハンプトンは、J・エドガー・フーバー率いる捜査当局ににらまれていた。
オニールはブラックパンサーとFBIの間を巧みに立ち回るが、やがてその心に葛藤が生まれる。自身の良心に従うか、FBIからの命令に従うか、思い悩むオニールだったが……。
(出典:https://eiga.com/movie/94734/)
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フレッド・ハンプトン
15歳の頃から人種差別と戦うために行動してきたフレッド・ハンプトンは、ブラックパンサー党に入るとメキメキと頭角を表していきます。
黒人を守るための自警団としてヒューイ・P・ニュートンとボビー・シールによって結成されたブラックパンサー党。
「革命」を訴えるブラックパンサー党は、人種差別をなくすために時には暴力的手段に出ることもありましたが、映画の中で描かれているように子供たちに無料で食事を提供する活動も行っていました。
フレッド・ハンプトンはそのカリスマ性から、若くしてイリノイ州シカゴの副議長を務めるようになりました。
彼はその雄弁さと人格から人々を魅了し、リーダーとなっていきます。
その彼にリーダー力はFBIを恐れさせるほどでした。
過激な組織とも言われていたブラックパンサー党ですが、フレッド・ハンプトンは自分たちに与えられた武器は「民衆」だと言います。
「民衆は力」というのを実践したのがフレッド・ハンプトンです。
彼は団結力で差別と戦おうとしていたのです。
黒人だけでなく、貧しい白人層(ヤングパトリオット)とプエルトリコ(ヤングローズ)のグループに一緒に闘おうと声をかけます。
1つのコミュニティで闘うのではなく、彼は虐げられているさまざまなコミュニティを1つ(虹の連合)にまとめ、みんなで闘おうとしました。
バラバラな組織を1つにまとめることができるほど、フレッド・ハンプトンは人格者だったのです。
この時フレッド・ハンプトンは若干21歳です。
フレッド・ハンプトンのカリスマ性に恐怖を感じたFBIは、彼の力を止めるためには彼を排除するしかなかったのです。
そして悲劇は1969年12月4日に起こります。
警察に寝込みを襲われたフレッド・ハンプトンは、21歳という若さで亡くなってしまいました。
それは多くの人に衝撃を与える事件となりました。
しかし彼は「革命家は殺せても革命は殺せない!」と彼は言いました。
その言葉とおり彼の意志は今もなお多くの人の心に受け継がれています。
彼が亡くなった後25日後に生まれた息子フレッドJr.は父の意思を受け継ぎ、人種差別と闘い続けています。
フレッド・ハンプトンが起こした革命は、今もなお続いているのです。
でも、それは50年前と何も変わっていないことを意味することでもあるのです。
FBIが恐れるフレッド・ハンプトン
フレッド・ハンプトンがどれほど人格者だったかは、映画『ユダ&ブラック・メシア 裏切りの代償』を見れば知ることができますが、当時FBIが彼らのことを恐れていたことを知ることができる作品がります。
それは『13th -憲法修正第13条-』というドキュメンタリー作品です。
この作品は人種差別による大量投獄の実態を描いたドキュメンタリー作品ですが、この作品の中に当時のブラックパンサー党のこと、フレッド・ハンプトンの事件が出てきます。
当時の大統領ニクソン大統領はブラックパンサー党などの活動を敵視していました。
そして、政府はFBIを使って彼らを排除する動きに出たのです。
FBIのフーバー長官は「ブラックパンサー党は国内最大の脅威だ」と発言しました。
この様子は映画『ユダ&ブラック・メシア 裏切りの代償』に中でも描かれています。
さらに、「ブラックパンサー党は国内最大の脅威だ」というセリフは、映画『ブラック・クランズマン』の中にも出てきます。
主人公の黒人警察官ロンが、ブラックパンサー党の元最高幹部の演説会を潜入捜査するように指示された時、上司はロンに「ブラックパンサーは国の治安の一大脅威だとFBIのフーバー長官も言っている」と言っていました。
このようにFBIからターゲットにされていたブラックパンサー党の運動は犯罪行為とされ、最終的にFBIは彼らを弾圧することに決めました。
その標的になったのが、若きリーダーのフレッド・ハンプトンだったのです。
『13th -憲法修正第13条-』の中で、フレッド・ハンプトンの死は黒人社会にとって痛手だったと語られています。
ドキュメンタリーの中には黒人や白人そしてプエルトルコ人、さらにはネイティブアメリカンを1つにまとめるフレッド・ハンプトンの姿を見ることができます。
「革命を封じ込めることはできない」と民衆の前で語る姿が映っていました。
さらに、フレッド・ハンプトンが襲撃された家の様子が映し出されます。
銃で撃たれ穴だらけになった家やなど生々しい映像です。
それを見るとどれだけ悲惨な出来事だったが分かります。
『13th -憲法修正第13条-』を見ると、1969年12月4日フレッド・ハンプトンの家で起きた実態を知ることができます。
ブラックパンサー党とフレッド・ハンプトン
映画『シカゴ7裁判』では、1968年シカゴで開催された第35回民主党全国大会で暴動を扇動したとして起訴された7人の裁判が描かれます。
この映画の中にもフレッド・ハンプトンが登場しています。
7人のリーダー達が逮捕されますが、その時一緒にブラックパンサー党の委員長ボビー・シールも逮捕されていました。
シカゴに人が集まるということで、ボビー・シールはフレッド・ハンプトンに頼まれてシカゴで演説を行なっていました。
この時、ボビー・シールは7人と一緒に逮捕されてしまうのですが、さらに彼には警官殺しの容疑がかけられてしまいます。
これはのちに冤罪だったと分かるのですが、ボビー・シールは逮捕され刑務所に収監されてしまいます。
しかも裁判中ボビー・シールはその態度から拘束されてしまいます。
その姿を見たFBI長官のフーバーの様子は『ユダ&ブラック・メシア 裏切りの代償』でも出てきます。
拘束着を着せられたボビ・シールの絵を見ながら「服を着込んでいる」と馬鹿にしていて、さらに「シールが裁判で無罪になっても問題ない。証人がいる」と、明らかにボビ・シールをはめようとしている様子が描かれていました。
また『シカゴ7裁判』の中で、裁判所にいるボビー・シールに後ろからアドバイスを送っていたのが、フレッド・ハンプトンです。
物語の中には、フレッド・ハンプトンが亡くなった事件も出てきますが、使われている写真は全て実際の写真でした。
劇中でフレッド・ハンプトンの死を知ったボビー・シールは「彼は処刑された」と言います。
その言葉からもどれだけこの事件が不当な出来事だったかを知ることができると同時に、この作品を見ていると当時の政府のがそれだけ公民権運動や反戦運動の活動家たちを敵視していたかを感じることができます。
まとめ
フレッド・ハンプトンの人生を描いた伝記映画『ユダ&ブラック・メシア 裏切りの代償』。
フレッド・ハンプトンは若くして亡くなったことからその死ばかりが取り上げられますが、この映画で彼を演じたダニエル・カルーヤは「彼の功績を重視したい」と言っていました。
『ユダ&ブラック・メシア 裏切りの代償』はフレッド・ハンプトンの行なったことや彼の信念を知ることができます。
また『13th -憲法修正第13条-』と『シカゴ7裁判』を見ることで、当時の様子も分かります。
『ブラック・クランズマン』も同時期のことを映画いた作品です。
これらの作品を合わせて見ることで、よりフレッド・ハンプトンという人物について理解することができると思います。