映画『クロノス』高貴で美しいものを作る「錬金術」にこだわって作られた物語


ギレルモ・デル・トロ監督の長編映画第1作品目となる映画『クロノス』。そこには彼が幼い頃から愛し続けてきた「吸血鬼」や「錬金術」という怪奇的なものが詰まっている作品でした。ここでは特殊効果も自らが手がけたデル・トロ監督が、映画にこめた「錬金術」について紹介したいと思います。

映画『クロノス』作品情報


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タイトルクロノス (La invención de Cronos)
監督ギレルモ・デル・トロ
公開1993年12月3日(メキシコ)
製作国メキシコ
時間1時間34分

あらすじ

16世紀、ひとりの錬金術師によって作り出された金色の奇妙なスカラベ。

「クロノス」と呼ばれるそれは永遠の命をもたらす謎の精密機械だった。

時は流れて現代、骨董屋を営む老人ヘススは売り物の天使像の中からクロノスを発見。

だが手に乗せたクロノスは突然動きだし、ヘススの手に食い込むと長い針を刺し液体を注入した。

一方、不死を得ようと長年クロノスを探していた病床の大富豪デ・ラ・グァルディアは、甥のアンヘルからついにクロノス発見の報せを受ける。

孫娘アウロラの不安をよそにクロノスの虜となっていくヘススは次第に若返っていくが、同時に血への渇望も沸き起こっていた……。

(出典:https://www.allcinema.net/cinema/83782)

錬金術

所有者に永遠の命を与える鍵となる「クロノス」を作った錬金術師。

それは昆虫のような形をしたものでした。

人間の古来から続く「不老不死」という欲望を、錬金術師は美しい金のクロノスの中に詰めました。

そしてそれは人間を魅了するものへとなっていったのです。

ギレルモ・デル・トロ監督は「ほとんどのアートは錬金術だ」と言い、「錬金術師が銅などを貴重な金へと変えることができるように、芸術家も低俗な事柄から純粋で美しいものを作り出す」と言っていました。

錬金術師が黄金のクロノスを作ったように、デル・トロ監督は自分の頭の中にあったものを映画『クロノス』とし誕生させたのです。

そんな映画『クロノス』は、錬金術法にならって作られています

「黒」「白」「赤」「金」という錬金術で重要な材料の色を、映画『クロノス』の中で積極的に使っています。

特に映画の最初の方では、女の子の着ている「赤い洋服」に目を奪われます。

また吸血鬼を象徴する血の赤い色も特徴的でした。

さらに「クロノス」は美しい金色をしていました。

また映画の中には「火」や「水」も登場します。

これもまた錬金術には必要なものです。

錬金術師が「クロノス」を作り出したように、錬金術のプロセスに必要なものを「色」や「小道具」として演出しながら、ギレルモ・デル・トロ監督は映画『クロノス』を創造したのです。

高貴で美しいもの

「クロノス」の存在を知った死が近いデ・ラ・グァルディアは、永遠の命を求めて「クロノス」を探し回ります。

一方、クロノスの力を得てしまった主人公のヘススは、若返る自分に自信を持ち始めます。

そんなクロノスに取り憑かれてしまった2人の人物。

しかし彼らはクロノスに魅せられてしまったことで、破滅の人生を歩むことになってしまいます。

ヘススは魅力的なクロノスに惹かれてしまいましたが、実は誰よりも美しく純粋なヘススの孫のアウロラが彼の近くにいたのです。

アウロラはクロノスに取り憑かれたおじいちゃんを心配し、またおじいちゃんの姿が変わってしまっても彼を受け入れ守ろうとしてくれます。

さらにおじいちゃんの最終対決にも付き添い、彼を助けてくれました。

そんな心優しい孫のアウロラ。

血が欲しいヘススはアウロラの血も求めようとしますが、彼女の純粋で高貴な心がヘススを本来の彼に戻しました。

金という美しいものを作る錬金術師。

ギレルモ・デル・トロ監督は、映画『クロノス』で美しく純粋な少女を描いたのです。

まとめ

ギレルモ・デル・トロ監督の初の長編映画『クロノス』。

彼が長年魅了されてきた怪奇現象や怪物などを描いた作品でした。

そして錬金術師が美しい金を作り出すように、ギレルモ・デル・トロ監督は映画監督としてファンを夢中にさせた映画『クロノス』を生み出したのです。