映画『ブラッド・ブレイド』ゾンビで描く「血」がもたらす 繋がりと差別

1981年のレッド・クロー先住民居留地を舞台に描くゾンビ映画『ブラッド・ブレイド』。この地に住む白人は社会の構造とは違い、彼らがマイノリティです。そんな中ゾンビが蔓延し保留地に住む住民を次々と襲います。しかしゾンビ に噛まれた先住民の署長とその息子はなぜか生き延びます。なんと彼らには免疫があったのです。

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『ブラッド・ブレイド』作品情報


ブラッド・ブレイド(字幕版)

タイトル ブラッド・ブレイド(Blood Quantum)
監督 ジェフ・バーナビー
公開 2020年12月11日
製作国 カナダ
時間 1時間38分

Rotten Tomatoes

あらすじ

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感染者が生ける屍となり人間に襲いかかる謎のウイルスが大流行し、滅亡の危機にある世界。

奇跡的に免疫を持つ一部の人々だけが生き延び、リーダーのトレイラーを中心に「レッド・クロー」と呼ばれる居留地で暮していた。

ある日、そこに3人の生存者が助けを求めてやってくる。

トレイラーは受け入れに反対する息子ライソールの意見を無視し、彼らを迎え入れるが、この決断が集落を地獄に変え、生き残りをかけた壮絶な戦いの幕開けとなる。

(出典:https://eiga.com/movie/93945/)

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血の量

『ブラッド・ブレイド』の原題は『Blood Quantum』。
「Quantum」には「量」という意味があり、これがこの映画のテーマそのものです。

カナダの先住民居留地で死体が蘇る出来事が起こり、蘇った人々つまりゾンビは人間に襲いかかります。

居留地の中で何が起こっているのか知らない保安官は、ゾンビ に襲われ噛まれてしまいます。
また別の場所で保安官の息子も噛まれてしまいました。

ここで普通のゾンビ映画ならば、ゾンビ に噛まれた人はゾンビになってしまいます。
しかしこの保安官もその息子もゾンビにならなかったのです。

なぜなら彼らは先住民で免疫があったから。

この『ブラッド・ブレイド』の世界では先住民にはゾンビに対する免疫があるのです。
だからゾンビに噛まれても死にません。

しかし、白人たちはゾンビに襲われると死んでしまい、ゾンビとして蘇ります。

つまり、先住民での血がゾンビに対する免疫となっているのです。
先住民の血が多ければ多いほど、免疫力が高いのです。

この居住地には先住民だけではありません。
白人の人もいますし、白人と先住民の間に生まれた子供います。
それぞれ先住民の血の量が違うのです。
先住民の血の量によって感染する人しない人と別れてしまう世界なのです。

ソンビが蔓延してしまったこの居留地の中では、白人の方が「よそ者」です。
実はゾンビが蔓延する前から居留地ないに住む白人は差別されてしました。
白人と結婚した先住民は、コミュニティから除外されてしまっていたのです。

そんな中で起こったゾンビの蔓延。
「よそ者」を作ってしまう根本にある「血」というものが、より差別を生んでしまうのです。

「純血」「混血」という人間の差別の根源を、この『ブラッド・ブレイド』では具体的に分かりやすく描いているのです。

父と息子

『ブラッド・ブレイド』のテーマである「血」。
「純血」や「混血」だという血筋だけでなく、家族の血の繋がりも描かれていました。

トレイラーにはライソールとジョセフという2人の息子がいます。
しかし2人の母親は違います。

トレイラーは現在どちらの母親とも別れていますが、兄のライソールは父親に捨てられ弟のジョセフばかりが可愛がられていると思っていました。
ジョセフの母親もトレーラーと別れているので、ジョセフもまた父親と離れているのですが、ライソールは自分は捨てられたという思いから抜け出せません。

トレイラーの中ではきっと、ライソールもジョセフも同じように扱っていたのでしょうがそれはライソールには伝わっていませんでした。

彼の中には常に自分が「よそ者」という思いを感じていました。

そしてその思いを胸に秘めていたライソールは、ソンビの世界でその思いをぶちまけます。
彼は「純血」でない人々を「よそ者」とし排除しようとしたのです。

「よそ者」として自分が排除されてきたと思っているライソールは、同じように「よそ者」を排除してしてしまいました。

そして最終的にその矛先を父親に向けます。
自分を捨てたのに「よそ者」を助ける父親に対して、復讐しようと計画したのでした。

「よそ者」という思いを捨てられなかったライソールは、みんなの想いに気づかず結局最後まで「よそ者」でした。
彼は最後まで家族にはなれなかったのです。

一方、トレイラーの血はもう1人の息子ジョセフによって、引き継がれていくのです。

まとめ

軽いゾンビ映画とは違い、「差別」「親子」をテーマにしたソンビ映画『ブラッド・ブレイド』。

「血」という深く重いものをテーマに、「血」によって起こる差別と「血」の繋がりという真逆のものを同時に描いている作品です。

見終わった後にズッシリとのしかかってくるそんなゾンビ映画になっていました。

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