映画『キャロル』で描かれる1952年のNYと虐げられた愛


1952年のクリスマスが近いニューヨクから始まる映画『キャロル』。1950年代の街並みが見事に再現されていて、画面から美しさが伝わってきます。そんな美しい映像とは裏腹に虐げられた愛の中で葛藤する2人の女性の物語は、この時代に同性愛の人がどれほど生きづらかったかを感じることができます。秘めた愛の中で生きるキャロルとテレーズを通して当時の様子を見ていきたいと思います。

『キャロル』作品情報


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タイトル キャロル(Carol)
監督 トッド・ヘインズ
公開 2016年2月11日
製作国 アメリカ/イギリス
時間 1時間58分

Rotten Tomatoes

あらすじ

1952年、クリスマス目前の活気あふれるニューヨーク。

高級百貨店のおもちゃ売り場でアルバイトをしているテレーズ。

フォトグラファーという夢を持ち、恋人のリチャードからは結婚を迫られるなど、一見充実しているかに思えて、どこか満たされない日々を送っていた。

そんなある日、ゴージャスな毛皮のコートを着た女性キャロルが、娘のクリスマスプレゼントを探しに彼女の売り場へやって来る。

その美しく優雅な佇まいに一瞬で目を奪われ、強い憧れを抱くテレーズ。

後日、ふとした成り行きからキャロルにランチに誘われ、彼女が夫ハージとの愛のない結婚生活に苦しんできたこと、そしてついに離婚を決意したことを知るが…。

(出典:https://www.allcinema.net/cinema/354600)

1952年のニューヨーク

『キャロル』の舞台は1952年のニューヨクだということは、「アイゼンハワー大統領に就任を祝い」というセリフで分かります。

戦後間もない中で急激に発展を遂げたニューヨーク。
高層ビルなどの建設ラッシュにわき、街自体が活気に満ち溢れていました

クリスマス前にデパートの買物に来る人たちを見ると、ニューヨークがどれだけ好景気だったか分かります。
終戦から7年しか経っていないのに、この街は経済でも文化でも芸術でも世界の中心となっていました。

しかしそれと同時に1950年代のアメリカは保守的な時代でもありました。
テレーズが恋人やその友達と『サンセット大通り』を見た帰りのシーンでは「非米活動委員会」というセリフも聞こえてきます。

これは当時行われたいた共産主義を取り締まっていた委員会のことで、「赤狩り」と呼ばれ多くの共産主義者や共産主義を支持する人達が仕事などを奪われてました。

ちなみに『サンセット大通り』は1950年にアメリカで公開された映画で、アカデミー賞で3部門受賞した作品です。


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ハリウッドの光と陰を描いた『サンセット大通り』を見ながら、テレーズは女性に引かれる自分の光と陰を感じていたのかもしれません。
またキャロルの光と陰を思っていたのかもしれません。

保守的なこの時代はもちろん同性愛は禁止されていました。
法律的にも宗教的思想からも禁止されていた同性愛。
そんな時代の中でキャロルとテレーズは惹かれあってしまったのです。

1950年代の虐げられた愛

キリスト教の教えが強かった1950年代のアメリカ。
キリスト教は同性愛を禁じていたため、この時代同性愛の人たちにとってはとても生きづらい世の中でした。

さらにこの時代のアメリカではソドミー法により同性愛は禁止されていました
同性愛は軽犯罪として扱われていたのです。
「自然の反する性行動」を禁した法律で同性愛はこれに当てはまったのです。
キャロルがテレーズとの一夜を録音されて動揺したのは、そんな背景があったからでした。

そしてちょうど『キャロル』の1952年には、アメリカで同性愛は精神障害と発表されました。
子供のために家に戻ったキャロルは、その後治療を受けていました。
同性愛は精神障害の一種で病気だとされていたのです。
そのため治療すれば治るということで、キャロルは心理療法士のもとで治療を受けていたのです。

そんな中自分の生き方を貫いたのはキャロルとテレーズだったのです。
世間に負けそうになりながらも最終的に2人は自分の存在意義のために自分らしく生きることを選んだのでした。

まとめ

1952年のニューヨークが舞台の『キャロル』。
経済成長で発展するニューヨークの様子を見ることができると同時に、その中で敷いたげられた愛があったことを知ることができます。

保守的な時代の中でなんとか自分らしく生きようとする女性の物語で、それは同時に光り輝くニューヨクの中で隠された陰の物語でもありました。

当時の美しい映像とともに2人の美しい愛を感じることができます。


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