実在した銀行強盗ジョン・デリンジャー。大恐慌の時代にギャングとして名を馳せた彼の人生が映画『デリンジャー』で描かれています。英雄的存在であったデリンジャーの人生を通して1930年代の大恐慌の時代を見ていきたいと思います。
『デリンジャー』作品情報
タイトル | デリンジャー(Dillinger) |
監督 | ジョン・ミリアス |
公開 | 1974年10月12日 |
製作国 | アメリカ/ドイツ |
時間 | 1時間47分 |
Rotten Tomatoes
あらすじ
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1933年、全米が大恐慌に見舞われる中、デリンジャーとその一味は各地で数々の銀行強盗に及んでいた。
一方、一味を追跡するFBI捜査官パービスは、いち早くデリンジャーを仕留めるべく執念を燃やす。
そんなある日、仲間の一人で恋人のビリーと戯れていたデリンジャーは警察の急襲を受け、投獄されるハメに。
だが間もなく脱獄に成功、新たな仲間たちを従え、懲りずに銀行を荒らしていく。
こうして仲間を失っては新しい手下を率いて犯行を続けるデリンジャーだったが、いつしか消息不明に。
しかし、パービスの粘り強い捜査によって居場所を突き止められるのだが…。
(出典:https://www.allcinema.net/cinema/15479)
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ジョン・デリンジャー
1930年代前半に実在した銀行強盗ジョン・デリンジャー。
大恐慌時代に次々と銀行を襲い、お金を盗み出していました。
FBIの長官フーバーは、デリンジャーを敵視して何としても彼を捕まえるように命じました。
デリンジャー一味のリーダーとして仲間と全米中の銀行を襲っていたデリンジャーでしたが、当時のアメリカは大恐慌で国民はみんな貧しい状態でした。
倒産してしまった銀行もあってその様子は『デリンジャー』でも描かれています。
銀行を襲うと街まで行ったデリンジャー一味でしたが、狙っていた銀行が破産して閉じられていました。
事実当時不景気を心配した国民んが銀行に殺到し、預金をおろしたことで倒産した銀行もたくさんありました。
銀行強盗を行ったり事件にまきっこまれた人を殺してしまったデリンジャーでしたが、当時の国民からは英雄的扱いを受けていました。
お金を預けた銀行が倒産し銀行に家を抑えられてしまった国民たちは、銀行に対して怒りをおぼえていました。
その銀行を襲うデリンジャーはある意味国民にとってはヒーロでもあったのです。
これはデリンジャーだけでなく、同じ時期に同じように銀行強盗を行っていたボニー&クライドも同じでした。
彼らもまたデリンジャーと同じようにヒーローだったのです。
ボニー&クライドのことは『デリンジャー』の中でも少しだけ描かれています。
ボニー&クライドが銃殺された記事が新聞に掲載されていました。
彼らの死は新聞の2面に乗っていて、1面はデリンジャーが捕まった記事でした。
それだけデリンジャーはアメリカで注目されている存在だったのです。
メルヴィン・パーヴィス
デリンジャー逮捕に任命されたのが、FBIのメルヴィン・パーヴィスです。
彼は大恐慌時代に犯罪を犯していたギャング達を次々と逮捕していきます。
映画『デリンジャー』に登場する犯罪者達は、実際に当時実在した犯罪者です。
ウィルバー・アンダーヒル
マシンガン・ケリー
ジャック・クルータス
と次々とパーヴィスはギャングを逮捕していきます。
しかし事実ではこのギャング達を逮捕したのはパーヴィスではありません。
FBIの捜査官が逮捕したのは事実ですが、パーヴィスではないのです。
ただし、マシンガン・ケリーが逮捕される時「撃たないでくれGメン」と言ったのは事実だと言われています。
この言葉がきっかっけでFBIの捜査官は「Gメン」と呼ばれるようになったのです。
(別の説ではジョン・デリンジャーが「Gメン」と言ったとも言われています)
『デリンジャー』のクライマックスも史実と違います。
赤いドレスを着たアンナ・セイジともに映画館に行ったのは事実ですが、デリンジャーを撃ったのはパーヴィスではないのです。
『デリンジャー』の中ではデリンジャーを追いかけるパーヴィスは銃の腕前に自信を持地、犯罪者たちには脅威として描かれているのです。
ギャングと市民の感情
銀行強盗をしながら逃げ続けるデリンジャー一味。
彼らは国民から応援されていた存在でもありました。
デリンジャーが実家に帰った時は、デリンジャーの父親は「犯罪は悪いことだ」としながらも英雄扱いされているなら歓迎しようと彼を家に向かい入れます。
またデリンジャーの一味だったプリティボーイ・フロイド。
彼は逃げている時、田舎の老夫婦の家で匿ってもらいました。
老夫婦もまた快く彼を家に迎え入れ、食事を与えてあげています。
この描写を見ただけでもデリンジャー一味は、市民の中に受け入れられていたことを感じることができます。
彼らは人を殺していた凶悪犯でもありながらなぜ市民が彼らを英雄視したのか?
それはそれだけ当時のアメリカが荒廃していたからだと考えられます。
『デリンジャー』を見ていても田舎の町の寂しさや、当時の暮らしの貧しさが分かります。
さびれた寂しい田舎町で貧しく暮らす彼らにとっては、デリンジャー一味などの銀行強盗を行う犯罪者達は、彼らの心を代弁してくれる存在だったのかもしれません。
学びのポイント
実在した銀行強盗のギャングを描いた『デリンジャー』。
この映画は1930年代の大恐慌時代のアメリカの様子を描いています。
ギャングの行なった犯罪や、彼を追いかけたFBIのメルヴィン・パーヴィスの様子がメインで描かれているのですが、その後ろで描かれる田舎町の様子に当時のアメリカの貧しさと寂しさを感じることができます。
凶悪犯でありながらも、アメリカのヒーローでもあったデリンジャー。
彼の行動を見ながら、当時の市民の感情や思いを知ることができる映画でありました。