映画『博士の異常な愛情 』の背景にあるアメリカとソ連の冷戦と陰謀説


1964年に公開された『博士の異常な愛情 』。ソ連に対する誤った攻撃を映画いたブラックコメディですが、アメリカとソ連の冷戦を舞台にした作品でもあります。共産主義に対する陰謀論なども含めながら、『博士の異常な愛情 』を通して冷戦を見ていきたいと思います。

『博士の異常な愛情 』作品情報


博士の異常な愛情 [Blu-ray]

タイトル

博士の異常な愛情 または私は如何にして心配するのを止めて水爆を愛するようになったか(Dr. Strangelove or: How I Learned to Stop Worrying and Love the Bomb)

監督 スタンリー・キューブリック
公開 1964年10月6日
製作国 イギリス/アメリカ
時間 1時間35分

Rotten Tomatoes

あらすじ

アメリカ軍基地の司令官が、ソ連の核基地の爆撃指令を発した。

司令官の狂気を知った副官は、司令官を止めようとするが逆に監禁されてしまう。

大統領は、ソ連と連絡を取って事態の収拾を図る。

しかし、迎撃機によって無線を破壊された1機が、ついに目標に到達してしまう……。

(出典:https://www.allcinema.net/cinema/17858)

フッ素添加物陰謀論

精神的におかしくなって勝手にソ連に対しての爆撃を許可してしまったリッパー将軍。
彼は反共産主義であったがために、共産主義の陰謀論にのみ込まれて頭がおかしくなってしまいました。

リッパー将軍がマンドレイク大佐に「水にフッ素が含まれているのは、共産主義者が考え出した最も悪質な陰謀だ」と話します。
リッパー将軍は体がおかしくなったのは、フッ素のせいだと考えています。
だから彼はいつも水は飲まず、蒸留水か雨水しか飲みません。

このリッパー将軍のような陰謀論を信じている人は現実にいますし、それは今だにアメリカ国内で続いている論争でもあ流のです。

実際にアメリカの水道水の多くにはフッ素添加物が含まれています
しかしこれは陰謀でもなんでもなく、虫歯予防のためなのです。
しかもアメリカだけでなくWHO「水道水のフッ化物添加は虫歯予防に利益がある」と示していて、水道水フッ素が含まれている国は他にもあります。

さすがに現在では共産主義の陰謀説はありませんが、1950年代には陰謀だと思っている人も多くいました。
しかし体内への影響など、今だにフッ素の問題が議論となっているのは事実です。
その議論の中に様々な時代に合わせての陰謀説が生まれていくのです。

アメリカとソ連の冷戦

『博士の異常な愛情 』が公開されたのは1964年。
当時はまだまだアメリカはソ連との冷戦の真っ只中です。
しかも1962年には「キューバ危機」があり、核戦争の一歩手前まで行ったのも事実でした。

そんな緊迫した両国の関係を元にキューブリックは『博士の異常な愛情 』を製作し、それをあえてコメディとしたのです。

映画の冒頭に「実在する人物に少しも関係しない」と字幕が出ますが、登場人物にはモデルとなった人たちがいます。

キューバ危機の時にキューバに攻撃するように主張したカーチス・ルメイは、ソ連に爆撃を許可したリッパー将軍のモデルでもあり、また報復される前に先生攻撃すべきだと行ったタージドソン将軍の考え方の元でもあります。

また、ストレンジ博士もドイツから帰化したアメリカ人という描写は実在したヴェルナー・フォン・ブラウンと同じです。
さらに「水爆の父」と言われるエドワード・テラーもモデルの1人です。

『博士の異常な愛情 』はコメディとして描かれていますが、実際に映画に登場するような考え方を持った人物は存在したことは事実で、それがこの作品の面白さでもありまた恐怖でもあるのです。

冷戦状態の中いつ戦争が起きてもおかしくない状況で作られたのが『博士の異常な愛情 』なのです。

学びポイント

『博士の異常な愛情 』は冷戦の時代に作られた冷戦を舞台にした作品なので、よりコメディでありながらもどこかリアリティを感じる作品でもあります。

だからこそ冒頭の「この映画で描かれているような事故は絶対に起きないと合衆国は保証する」という文字がより恐怖に感じてしまいます。

当時ソ連に対する攻撃的な考え方を持っていた人がいたのも事実ですし、リッパー将軍のように共産主義の陰謀論を信じている人もいました。

実際のことが散りばめられているので、当時のアメリカの状態を感じることもできるのです。


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