アメリカン・コミックから誕生した『ウォッチメン』。彼らは政府と手を組んでアメリカの歴史に大きく関与していました。今回はそのウォッチメンが関わったアメリカの歴史を本当の事実を照らし合わせながら振り返ってみたいと思います。
『ウォッチメン』作品情報
タイトル | ウォッチメン(Watchmen) |
監督 | ザック・スナイダー |
公開 | 2009年3月28日 |
製作国 | アメリカ |
時間 | 2時間42分 |
Rotten Tomatoes
あらすじ
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かつて、“ウォッチメン”と呼ばれる者たちがいた。
彼らは<監視者>となって世界の重大事件に関わり、人々を見守り続けてきた。
だが1977年、政府の施行したキーン条例によりその活動を禁止され、ある者は一線を退き、ある者は密かに活動を続けていくことに。
1985年、未だニクソン大統領が権力を振るい、ソ連との核戦争に陥りかねない緊張状態にあるアメリカ。
10月、ニューヨークの高層マンションからエドワード・ブレイクという名の男が突き落とされ、無惨に殺された。
そして、そのそばには血の付いたスマイルバッジが。スマイルバッジは、かつてブレイクがスーパーヒーロー“コメディアン”として活躍していたときのトレードマークだった。
現場に現われた“顔のない男”ロールシャッハは、事件の背後に陰謀の臭いを嗅ぎとり、すぐさま“ウォッチメン”と呼ばれたかつての仲間たちの周辺を独自に調べ始めるのだったが…。
(出典:http://www.allcinema.net/prog/show_c.php?num_c=332598)
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ウォッチメンが変えたアメリカの歴史
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1940年に「ミニッツメン」としてマスクをかぶり、アメリカの正義として市民を守りヒーローとなった人達がいました。
彼らはギャング達と戦うためにマスクを被ったのです。
やがて彼らは「ウォッチメン」となり、アメリカ市民を監視します。
しかし彼らの行動に反発し始めた市民達。
やがてニクソン大統領のキーン条例によってヒーローの活動は禁止されてしまいました。
ヒーローを引退するウォッチメンのメンバー達でしたが、政府と手を組み新しい活動を続ける者、またウォッチメンとして警察に追われながらも活動を続ける者もいました。
1960年〜1980年後半に起こった出来事。
その多くにウォッチメンが関わっていたのでした。
ケネディ大統領暗殺事件
1961年に大統領となったケネディですが、彼は大統領選で対立候補のニクソンと接戦でした。
歴史的な接戦に勝利してケネディはアメリカの第35代大統領に就任します。
しかし彼は1963年11月22日パレード中に暗殺されてしまいます。
『ウォッチメン』の中では、暗殺の実行犯はコメディアンとなっていました。
この後コメディアンはニクソンとベッタリの関係になっていきます。
彼の部屋にはニクソン 大統領と握手する写真が飾られているほどでした。
月面着陸
1969年7月20日、人類史上初の月面着陸にアメリカは成功します。
この成功にはDr.マンハッタンの力があったことに映画の中ではなっています。
月面着陸を果たしたニール・アームストロング船長。
彼のヘルメットには月にいるDr.マンハッタンの姿が映っていました。
ベトナム戦争
ケネディ暗殺後に大統領となったリンドン・ジョンソンによってベトナムへの本格的な攻撃が始まった1964年。
その後1965年には大量のアメリカ兵がベトナムに向かいます。
アメリカでは反戦運動が強まりますが、ニクソン政権に変わってもベトナムへの攻撃は続いていました。
歴史的事実ではベトナム戦争でアメリカは負けてしまいます。
しかし『ウォッチメン』の中では、コメディアンとDr.マンハッタンがベトナム戦争に参加し、彼らのおかげでアメリカはベトナム戦争に勝利してしまいました。
これにより、なんとニクソン大統領は3期目の大統領当選を果たします。
2期目までしか大統領に就任できませんが、ニクソンはそれを変えてしまい『ウォッチメン』の中ではニクソン政権が続く世界になってしまっていました。
1985年の世界も大統領はニクソン です。
彼は4期目を迎えていることになるのです。
ウォーターゲート事件
『ウォッチメン』の中で映像としては映りませんが、コメディアンが「アメリカで働くのはウォターゲート以来だ」といいます。
ニクソンと繋がっていたコメディアン。
彼がウォーターゲート事件に絡んでいたことを匂わせているシーンです。
ウォーターゲート事件とはニクソンが2期目の大統領選を前にして、民主党の本部のあるウォーターゲートビルに盗聴器を仕掛けた事件です。
この事件にニクソン大統領が関係していたことがわかり、結局ニクソン大統領は辞任に追い込まれてしまいました。
しかし映画ではニクソンは大統領のままでいます。
ということはきっとウォターゲートは事件にはならず、盗聴が成功したということになります。
その成功の裏にはコメディアンの力があったからということなのです。
冷戦時代
過去に「ウォッチメン」達がアメリカの歴史に関わってきたことは、オープニングで描かれています。
そしてその後、映画の舞台はアメリカとソ連の冷戦時代になっています。
カストロ政権のキューバを支持したソ連。
ソ連はキューバにミサイルを配置したことで、アメリカとソ連の溝は深まります。
そしてソ連はアフガニスタンに侵攻しようとします。
これに対してアメリカは反対し、ソ連とアメリカは核戦争に一歩手前の状態になっています。
この1985年、本当であればアメリカの大統領はレーガンですが、映画ではそのままニクソン政権が続いていることになっています。
しかしこの冷戦を救ったのもウォッチメンでした。
ただしそれはオジマンディアスによる裏切りでしたが、Dr.マンハッタンが全ての罪を被り冷戦を終わらせることができたのです。
映画のラストでは平和になった世界で新聞に載せる記事を編集長が探しています。
それに対して「1988年の大統領選にレーガンが出馬とか?」と部下が答えますが、編集長は「西部劇俳優が大統領になるわけない」と言いました。
本当ならば1981年にレーガンは大統領になっていますが、ニクソン政権が続いているのでまだ大統領ではなく、俳優のままでいることになっています。
きっと『ウォッチメン』の世界では事実よりも8年遅れた1988年にレーガンは大統領になるのでしょう。
学びのポイント
『ウォッチメン』ではケネディ大統領時代〜ニクソン大統領時代、さらにはその後のアメリカの政治状況を知ることができます。
この映画をより深く理解するためには、1960年代〜1980年代のアメリカを巡る世界情勢を知っていたほうが楽しめますが、映画を見た後に歴史を調べ直してもう一度映画を見直すというのも楽しむ方法の1つです。
アメリカン・コミックですが政治との繋がりが深い物語なので、この映画を見ることでよりアメリカと世界の状況を学べます。