映画『海よりもまだ深く』内容と感想 誰もがなりたかった大人になれるわけじゃない


ダメ男の良多。夫としても父親としてもダメ男で、妻と別れてしまいます。失ってから気がついた家族への思い。「こんな大人になるはずじゃなかったのに・・・」どこかで狂ってしまった人生。それでも人生は続いていくのです。

『海よりもまだ深く』作品情報

タイトル 海よりもまだ深く
監督 是枝裕和
公開 2016年5月21日
製作国 日本
時間 1時間58分

Rotten Tomatoes

『海よりもまだ深く』あらすじ


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こんなはずじゃなかった

夫としても父親としてもダメ男で、妻に離婚されてまった良多。
離婚後もダメな生活は続き小説を書きながら、探偵事務所で働いています。

1ヶ月に1度だけ息子と会えるのですが、養育費を滞納中で元妻に怒られてしまいます。
しかも滞納しているのは、養育費だけでなく家賃や公共料金なども滞納し、後輩にお金を借りています。

それでもお金が入るとギャンブルに使ってしまい、息子に渡すプレゼントを買うお金もありません。

仕方なく、仕事で知った高校生を脅しお金をとったりと最低な生活の連続でした。

こんなはずじゃなかったのに」どこで人生を間違えてしまったのか。
良多は自分を情けなく思いながらも、今の生活から抜け出せないのです。

良多の周りはみんな「こんなはずじゃなかった」と思いながらの生活です。
元妻の響子は離婚する未来を思い描いていませんでしたし、良多の母もこれまたダメ男の亡くなった元夫との生活や、ダメ息子の生活を想像もしていませんでした。

でも誰もが「こんなはずじゃ」と思いながらも、それでも自分の人生を生きています。
毎日楽しく生きています。
「こんなはずじゃなかった」からこそ楽しく生きれるのかもしれません。

ダメなところはあるけど、それを自分できちんと受け止めれば楽しく生きていけるのです。

こんなはずじゃなかったけど、響子は新しい人生をスタートさせようとしています。
良多の母は、人生の楽しみ方を知っています。
良多だけが、思い通りにいかない人生に向き合えていなかったのです。

人生は単純

自分の人生と向き合えない良多に母は「人生なんて単純」と言います。
楽しく生きていくことは単純なのです。

でも良多はその楽しみ方を知らないのです。
それは自分の父親との関係からきているのかもしれません。

喧嘩し疎遠になっていた父親。
自分と同じようにお金にだらしなかった父親。
自分が父と同じ人生を歩んでいることも、許せなかったのかもしれません。

しかし立ち寄った質屋で父親が自分の小説を近所に配っていた事を知ります。
父親にとって自慢の息子だった事を知ったのです
良多にはそれだけで充分でした。
母の言うように人生は単純でした。
父親の想いを知っただけで、良多は人生の楽しみ方が分かったのです。

さらに母からのもう1つのアドバイス「幸せは何かを諦めないと手にできない」。
いつまでも過去にこだわり失くしたものを追い続けていた良多は、幸せになるために今を生きようと思い始めたのでした。

感想

なりたかった大人、夢みた職業になれなかった人たちの物語の『海よりもまだ深く』。

誰もが思い通りの人生を生きているわけではなく、思い通りに生きられなかった人達の人生が描かれていました。

「こんなはずじゃなかった」と思ったことがある人なら、ダメ男の良多に共感できる部分もあるかもしれません。

でも思い通りじゃないからこそ、人生は楽しいと母は教えてくれます。

そしてその言葉は良多の母を演じた樹木希林さんからのメッセージのようにも感じました。

幸せになるためには過去でも未来でもなく今をしっかり生きなければと、思わせてくれる映画でした。

そして自分のダメなところを時代のせいするのではなく、きちんと自分自身で受け止めようとも思いました。

思い描いた大人にはなってなくても大丈夫と、どこか背中を押してくれる映画だなと感じたのが『海よりもまだ深く』でした。