舞台は1800年代半ばのニューヨーク。移民を受け入れて混沌とする中、南北戦争も始まりさらに街は混迷していきます。移民・黒人・アジア人と世界からニューヨークに集まってくる人達。しかしそこは決して平和な世界ではなかったのです。
『ギャング・オブ・ニューヨーク』作品情報
タイトル | ギャング・オブ・ニューヨーク(Gangs of New York) |
監督 | マーティン・スコセッシ |
公開 | 2002年12月21日 |
製作国 | アメリカ/イタリア |
時間 | 2時間47分 |
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『ギャング・オブ・ニューヨーク』あらすじ
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1846年、ニューヨークのファイブ・ポインツでは、アメリカ生まれの住人たちの組織“ネイティブズ”とアイルランド移民たちの組織“デッド・ラビッツ”が対立している。
幼少のアムステルダムは、神父でデッド・ラビッツのボスである父親を敵のボス、ビリーに殺された。
アムステルダムは投獄され、復讐を誓いながら15年の歳月が過ぎる。
アムステルダムが帰ってきたファイブ・ポインツは、ネイティブズに仕切られ腐敗していた。
デッド・ラビッツは既に壊滅している。
それでもアムステルダムは復讐のため素性を隠しビリーの組織に潜り込んだ。
やがてジェニーという女に出会い、次第に惹かれていくのだが…。
(出典:http://www.allcinema.net/prog/show_c.php?num_c=235234)
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アイルランド系移民
1840年代アイルランドは財政難に陥ります。
生活できなくなったアイルランド人はニューヨークを目指しました。
この頃大量なアイルランド人がニューヨークになってきます。
さらにアイルランドでは飢饉が起こり、ニューユークに渡る人達は増える一方でした。
カトリック系のアイルランド人達がこの時期、ニューユーク市の1/4をしめるほどになっていました。
さらにドイツや中国からの移民もニューヨークに渡ってきていて、ニューヨークの街は多くの人種が住む街でした。
主人公アムステルダムの父であるヴァロン神父もアイルランドからやってきたカトリックの神父でした。
同じ頃にプロテスタントによるネイティブ・アメリカン党が発足し、プロテスタントとカトリックの間で抗争が起き始めます。
ヴァロン親子と戦ったブッチャーは米国ネイティブズ連盟のリーダーで、移民を憎みカトリックを憎んでいたのです。
ギャングが集まっていたファイブ・ポインツを収めようとしていた政治家のトゥイードがいたタマニー党はアメリカ民主党の派閥の1つです。
1960年代頃まで存在しました。
トゥイードは、米国ネイティブズ連盟とアイルランド系移民の両方をうまく利用して、この地で自分の派閥に票を集めようとしていました。
ブッチャーの恩恵に預かっていた1人P・T・バーナム。
ボクシングの時や催し物などで司会などをやっていた人物です。
彼は『グレイテスト・ショーマン』の主人公のバーナムです。
この時代にニューヨークで暮らしていた人物でした。
1863年の暴動で「バーナムのアメリカ博物館」は火事になってしまいますが、彼はこのあとサーカス「地上最大のショウ」を設立することになります。
南北戦争時代のニューヨーク
この時代のニューヨークは移民以外にも混沌としていました。
それはリンカーンが大統領に当選し、奴隷解放を求めた南北戦争が始まったからです。
ニューヨークは北軍に属していますが、街の中では黒人に対する差別は横行していました。
1860年代のニューヨークは移民・黒人などの人種により街が混迷していた時代だったのです。
ニューヨークは北軍の拠点となる都市でもありました。
毎日のように船が到着し移民がやってくるので、彼らを兵士にしようとする動きも起こります。
これは映画の中でも描かれています。
船から降りるとその足で兵士となと戦地に向かったアイルランド人もたくさんいました。
・移民を受け入れ反対の人
・奴隷解放に反対の人
・アイルランド移民
・徴兵制度に不満を持つ人
多くの人がこの時代のニューヨークに不満を持っていたのです。
そしてその不満が1963年のニューヨーク徴兵暴動に繋がってしまったのでした。
映画の中でお金持ちが「騒ぎを起こしたい人達がローソクを窓に立てる」と言ってしましたが、ほとんどの家の人が窓にローソクを立てていました。
それだけ多くの人が不満を持ちながら生活を送っていたのです。
ラストシーンのニューヨーク
映画の最後にブッチャーの眠る場所から変わりゆくニューヨークの町並みが描かれます。
そして最後に移ったのが、世界貿易センターのツインタワーでした。
『ギャング・オブ・ニューヨーク』は2002年の公開でしたが、本来は2001年の公開される予定でした。
しかし2001年に起こったアメリカ同時多発テロ事件により、延期され2002年に公開されました。
ラストショットであった世界貿易センターは2002年の公開時にはもうなくなってしまった建物です。
だからこ余計にこのラストシーンの意味するものがとても深く心に刻まれる終わり方となっています。
今もなお変わりゆくニューヨーク。
いろんな人種が住む街ニューヨーク。
ブッチャーはあの場所からニューヨクの変遷を眺めながら何を思うのでしょうか?
まとめ
世界最先端の街ニューヨーク。
誰もあが憧れる街ニューヨーク。
そんな街の歴史は多くの人たちの血が流れた場所でもありました。
昔からたくさんの人種が集まる場所であったニューヨークですが、1860年代にこの街で起こっていたことは現代にも起きていることのように感じました。
何も変わっていない自分たちを痛感する映画でもあります。