映画『言の葉の庭』で学ぶ万葉集と柿本人麻呂

『言の葉の庭』に登場する万葉集の和歌。飛鳥時代の歌人とされる柿本人麻呂が詠んだその歌に、主人公のタカオとユキノの気持ちが描かれていたのかもしれません。そんな二人の心情を描いた柿本人麻呂の短歌について調べてみます。

目次

『言の葉の庭』作品情報


言の葉の庭 Blu-ray サービスプライス版

タイトル 言の葉の庭
監督 新海誠
公開 2013年5月31日
製作国 日本
時間 46分

Rotten Tomatoes

あらすじ

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靴職人を目指す高校生タカオは、雨が降ると学校をさぼり、公園の日本庭園で靴のスケッチを描いていた。

そんなある日、タカオは謎めいた年上の女性ユキノと出会い、2人は雨の日だけの逢瀬を重ねて心を通わせていく。

居場所を見失ってしまったというユキノのために、タカオはもっと歩きたくなるような靴を作ろうとするが……。

(出典:https://eiga.com/movie/77989/)

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万葉集


万葉集 ビギナーズ・クラシックス 日本の古典 (角川ソフィア文庫―ビギナーズ・クラシックス)

『言の葉の庭』の冒頭、新宿御苑で出会ったタカオとユキノ。
「どこかで会ったことが」と言うタカオに対して、ユキノが残した言葉。
それは万葉集の中に書かれた柿本人麻呂の和歌でした。

日本に存在する最古の歌集と言われている「万葉集」
奈良時代末期に作られたとされています。

100年以上の間に詠まれた和歌を集めたもので、天皇や貴族から名前の分からない人が詠んだ和歌まで4536首が納められていて、全巻20巻にもなります。

万葉集は「雑歌」「相聞歌」「挽歌」の3つのジャンルに分かれています。
ユキノがタカオに残した和歌は「相聞歌」にあたり、男女の恋愛を歌った歌でした。

柿本人麻呂

ユキノがタカオに残した和歌は柿本人麻呂の和歌でした。

鳴る神の 少し響みて さし曇り 雨も降らぬか 君を留めむ
雷が鳴って雲が広がり雨が降ってくれたら帰ろうとしているあなたをきっと引き止められるのにという歌です。

これを詠んだ柿本人麻呂は、飛鳥時代の歌人です。
「歌聖」と呼ばれただけあって、万葉集に中に長歌19首・短歌75首が載っています。

ユキノが残した短歌は万葉集の中の相聞歌に載っている和歌です。
柿本人麻呂は、恋しているけど恋に奥手な女性の心情をこの和歌で表現しています。

この歌には返しがあります。
それがラストの方でタカオがユキノに返した和歌です。

鳴る神の 少し響みて 降らずとも 我は留まらむ 妹し留めば
雷が鳴らなくても雨が降らなくても君が引き止めてくれたなら僕はここにいるよという意味になります。

「一緒にいたい」と言えない女性に対して、同じように女性に恋している男性が「ここにいるよ」優しく返した歌でした。

学校での出来事に傷つき心を病んでしまったユキノは、その心を癒してくれるタカオに対して「雨が降れば会えるのに」という思いを伝えたかったのかもしれません。

「古典の教師だと気がつくかなと思って」とユキノは言っていましたが、靴作りに没頭し自分の世界を生きているタカオに安心したのでしょう。
だからで会ったばかりのタカオに対してこの歌をユキノは伝えたのかもしれません。

そしてこの和歌の世界がユキノとタカオの関係の表現していました。

学びのポイント

『言の葉の庭』で描かれた世界は、万葉集の中に書かれた柿本人麻呂の和歌による歌で表現されていました。

男女の恋愛を歌った相聞歌。
柿本人麻呂が詠んだ和歌は、美しく純粋で綺麗な男女の想いでもありました。

その世界の美しさがそのままユキノとタカオの関係に繋がってもいます。

『言の葉の庭』を見ると、そんな美しい和歌の世界を感じることができます。

普段の生活でなかなか触れることのない、平安時代や奈良時代の男女の想いに触れることができ、またその想いはいつの時代も同じなんだと感じることができます。


小説 言の葉の庭 (角川文庫)

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